2022年11月10日木曜日

愛媛県南部に古くから伝わる「宇和島麦みそ」を巡り、製造業者に「原材料に大豆を含まないと、みそとは名乗れない」と突き付けた県の指導が議論を呼んでいる。大豆を使わずに麦と塩だけで造るのが地元伝統の製法。

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宇和島麦みその危機を訴える井伊友博さんのツイート(ツイッターより)

 愛媛県南部に古くから伝わる「宇和島麦みそ」を巡り、製造業者に「原材料に大豆を含まないと、みそとは名乗れない」と突き付けた県の指導が議論を呼んでいる。大豆を使わずに麦と塩だけで造るのが地元伝統の製法で、突然の指摘に困惑した業者側がツイッターで窮状を訴えると瞬く間に拡散。思わぬ反響の広がりを受け、県は指摘を一部撤回した。

 1958年創業の井伊商店(同県宇和島市)で3代目店主を務める井伊友博さん(41)は8月、長年販売してきた麦みそについて、県から食品表示法と景品表示法に抵触する可能性があると指摘を受けた。「創業から製法は変わっていない。納得できず憤りを覚えた」。10月には、商品名を変えるなど改善報告書の提出を求められた。

 食品表示法の表示基準では麦みそを「大豆を蒸煮したもの」などと規定しており、県はこれに抵触すると主張。袋に「麦みそ」や「みそ」と表示するのは「景品表示法の優良誤認に当たる可能性がある」としていた。

 納得できなかった井伊さんは、ほかの地元業者と連名で、再考を求める要望書を県に郵送。ツイッターに要望書の写真を付けて「当店の麦みそが『みそ』と名乗れなくなりそうです」と投稿すると、数時間で1万を超えるリツイートがあった。

 その後、「法令に基づいており裁量の余地はない」(県担当局)との回答が届き、いったんは諦めかけた。ところが、2日後に副知事から「安心してください」と電話があり、今月4日には県の担当者が店を訪れ、景品表示法に関する指摘を取り消して謝罪した。

 井伊さんによると、反響の大きさを受けて県庁内で議論があったという。取材に対し、県は「地元では大豆を使用しないみそが広く認知されており、消費者が誤認する可能性は低いことを踏まえた」と説明。食品表示基準に沿った表示については今後、井伊さんらと協議するとしている。

 最悪の事態を免れて、「今までと変わらずみそを名乗れる」と胸をなで下ろす井伊さん。今回の問題をきっかけに、大豆アレルギーでも食べられるみそとして関心を集めたといい、「これからもできることをやっていきたい」と話している。 

麦みそを造る井伊友博さん=2日午後、愛媛県宇和島市
麦みそを造る井伊友博さん=2日午後、愛媛県宇和島市



麦と塩で造られた「宇和島麦みそ」=2日午後、愛媛県宇和島市
麦と塩で造られた「宇和島麦みそ」=2日午後、愛媛県宇和島市

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