2024年2月18日日曜日

連載:第56回 経営危機からの復活 あとがないんだろ!学んで、実践しなきゃダメだよ!恩人の言葉で目覚めた。リーダーとして失くしていたもの BizHint 編集部 2024年2月9日(金)掲載

https://bizhint.jp/report/905260?trcd=feature1

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社員の不正や想像を超える風評被害、育ててきた事業の売却…会社が倒産寸前に追い込まれる中、復活の転機となったのは学生時代からの先輩である経営者の一言でした。「言っただろ!学んで、実践しなきゃダメだよ!」。葬儀サービスを手掛ける株式会社LIVENTの三上力央社長はそこではじめて、すべての元凶が自らの「人を大切にしない経営」「他責」と気づきます。そこから会社は180度反転。V字復活の経緯を伺いました。

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株式会社LIVENT
代表取締役 三上 力央(みかみ りきおう)さん

1973年東京都生まれ。国学院大学卒業後に渡米し、オレゴン大学ビジネス学部アントレプレナーシップ学科卒業。その後、プライスウオーターハウスに入社。エンターテインメント業界でコンサル業務に従事し、戦略から業務改善に至る大規模プロジェクトに参画。 2002年、有限会社LIVENTを設立。


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周囲のバッシングに耐え切れず犯した、経営者としての大きな過ち

三上 力央さん(以下、三上): 学生時代から起業プランを考えていて、辿り着いたのが冠婚葬祭をより素晴らしいものにする事業でした。

新卒でいったん就職し、3年後の起業を目指して準備を進め、2002年に私と友人の2人での船出になりました。

ただ、起業後しばらくはまったくうまくいかず。僕は家賃2万円、風呂なしの生活を1年続けました。やっと3年目に文化財指定の洋館を見つけ、そこで結婚式ができるようになったことで軌道に乗り始めました。

当時の目標は、10年以内に直営の結婚式場と葬儀場を作ること。まずは葬儀場です。葬儀は、私が起業プランを考える中で一番やりたかったこと、一番素晴らしいものにしたいと考えていたライフイベントでした。結婚式事業が徐々に軌道に乗り2年ほど計画を前倒しする形で、意気揚々と進めました。

しかしこの葬儀場への進出・事業運営は、 会社・組織を崩壊に至らしめる大きな後悔 を残すものになりました。

今でこそ「それらの経験があって今がある」と受け入れて話せるのですが、少し前までは虚栄心や強がりが先に立って、一連の顛末は誰にも話せませんでした。

――何があったのでしょう?

三上: 端的に言えば、葬儀場の建設にあたって、近隣の商店街から反対運動が起こりました。それ自体には誠意をもって対応・交渉を進めていたのですが、ある日その反対運動がテレビのニュースや報道番組で取り上げられることに。

するとすぐに多くのマスコミが押しかけ、私は公私問わずいろいろな所でマイクを向けられるようになりました。最初は丁寧に対応していたつもりなのですが、発言していないこと、思ってもいないことが報じられ、悪い噂が尾ひれをつけて広がりました。 そうなるともう、何をやってもダメでした…。

そしていよいよ心が折れてしまい… 経営者として、大きな過ち を犯してしまいます。

――大きな過ちというのは?

三上: 逃げ出してしまったんです。率直な言葉を使えば、ビビっていました。

私は順調だったウェディング部門のオフィスに籠もりきりになり、葬儀部門には顔を出さなくなりました。そして葬儀部門はもう1人の創業メンバーに「申し訳ない。頼む」という一言で丸投げしました。

経営者として、リーダーとして失格です。 葬儀場の計画は頓挫し、借入金の4000万円だけが残って財務が悪化。立て直すためにウェディング部門に力を入れていくのですが、これが後々、当社を倒産間際にまで追い込む出来事に繋がっていきました…。報いを受けたのかもしれませんね。

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順調だった事業は、社員の不正と風評被害で凋落

――当時のウェディング事業の状況は?

三上: ウェディング部門は順調で、特に地方の結婚式場を買収できたことが大きなトピックスでした。1億円近い金額を借入してリノベーションし、3年後には5億を売上げるまでに成長。地域No.1の結婚式場にすることができました。

――一見、順調に見えます。

三上: 私もそう思っていました。

地方の結婚式場の好業績は、担当していたマネージャーの手腕あってのものでした。私としては、もっとも信頼していた社員の1人でした。

しかし2011年、 その社員の不正・着服が発覚します。 私は最後まで信じられませんでした。ただただ、嘘であってほしかった。

最終的にその社員には退職してもらうことになるのですが、現場からの人望も厚く…残されたスタッフには涙もありました。その後、その結婚式場の売上はどんどん下がっていきました。

さらには、当社の結婚式場で既婚警官が別女性と結婚披露宴を開くという事件の舞台となってしまい、再び全国ニュースに。「あそこの式場は縁起が悪い」という風評被害も起こり…売上は激減。この連続した出来事により、 約1億円の資金ショートが見込まれることになり、苦しい日々が始まりました。

そのような状況下で、幸いにも昔からお世話になっていた二人の社長から5000万円ずつ、返済期間10年金利1%で貸していただき、首の皮一枚で繋がりました。

しかしそれも束の間、一方の債権者からお客様が多い時期にまとまった入金があるようだから返済してほしいという申し出がありました。資金不足になったら再度貸すというお話もいただいたので、いったん返済。

その後、何度か金銭の返済と借入を繰り返したのですが、その度に資金調達手数料が約80万円発生し、さらに利率が徐々に上がっていき…最終的には金利12%にまでなりました。

資金繰りはどんどん苦しくなり、最後は返済期間28日間と短く切られ、返済の目途が立たなくなりました。そうして、結婚式事業の売却か全株式の売却、もしくは倒産のいずれかの決断を迫られることになりました。

結果、創業メンバーの家業に結婚式事業を借金と相殺で買い取っていただき、倒産・自己破産は免れました。2017年の出来事です。

振り返ると、当時の私は地獄の資金繰りにより精神が不安定な状態でした。「ライフタイムイベントをより良いものにしたい」「仲間と一緒に素晴らしい会社を作りたい」 そんな思いで起業して、どんなに苦しくてもそれを胸にがんばってこられたはずなのに、ただただ「目の前のお金をどう用立てするか?」しか見えなくなっていました。

好調だったウェディング事業だが、2015年からの立て続けの事件で他社への売却を余儀なくされる(現在は事業を再開し好評を博している)(写真提供/LIVENT)

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「事業を獲られた、裏切られた」とはまったく考えていない

――失礼ですが、一連の出来事は外的要因や周囲の裏切りの影響も多分にあったように感じます。

三上: その時々では目の前のことに一生懸命で「事業を獲られた」「裏切られた」といった感情はありませんでした。ただ、少し落ち着いた時に(そういうことだったのかな?)という思いがよぎることもありましたね。

しかし今、心から言えることは「獲られた、裏切られたとはまったく考えていない」ということです。 これらはすべて、自分自身が招いたことだと考えられるようになりました。

そのきっかけは、結婚式事業を手放し、過去に自分が投げ出した葬儀事業だけが残った後。ある恩人のおかげで、ゼロから再出発をしてからでした。

一連の紆余曲折で、最大で50人ほどいた社員は15人になり、10億円あった売上も2億円ほどになっていました。

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「後がないんだろ!学んで、実践し続けなきゃダメだよ!」恩人の言葉から再出発

――再出発のきっかけとなった恩人というのは?

三上: 株式会社築地玉寿司の中野里陽平社長です。学生時代から仲良くしていただき、私にとっては1つ歳上の兄貴分のような存在でした。正直、「恩人」という言葉ともちょっと違う、ニュアンスを正確に伝える言葉が見当たらない関係性ではあるのですが。

結婚式事業を売却してどん底に陥るまで、私はゼロイチを立ち上げたそれなりの起業家、優秀な経営者として振る舞っていました。ですので中野里社長を含めた周囲には、今回お話ししたような窮状や、それこそもっとドロドロとした話はしていませんでした。

事業譲渡が完了し、吹けば飛んでしまう会社になって私ははじめて中野里社長に一連のことを打ち明けました。

――中野里社長は何と?

三上: 「なんで話してくれなかったんだ!」と驚かれました。そして 「後がないんだろう!学んで、実践し続けなきゃダメだよ!」 と言われました。

私は中野里社長が長年言い続けてくれた「日々の勉強と実践」を疎かにしていました。 「中野里社長は4代目で自分は創業者だから違う」というもっともらしい理由をつけてみたり、そもそも自分に勉強は不要という軽薄な自意識から。

そしてあらためて「もう最後のチャンスじゃないか」と、ゼロから学ぶことを勧められました。中野里社長はずっと学びを続けられ、何十億という借金を返済し、素晴らしい会社を作り上げていらっしゃる方。その言葉は、私にとってとても重いものでした。

私は中野里社長の力を借りながら経営の勉強会などに参加するようになりました。中野里社長が私に「良くなってほしい」という思いは痛いほど感じましたし、築地玉寿司という会社についても歴史から、どのような会社経営をしているのかを見せていただき、店長会議から幹部会議にも出席させていただきました。

それこそ自分の会社とは天と地の差で、いよいよ目が覚めました。中野里社長がいなければ、今の私はないと断言できます。

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人を人と思っていなかった。失敗に至る2つの理由

――天と地の差というのは?

三上: 特に感じたのが「人」の部分です。

私は事業がうまく進まない中で、経営者として、リーダーとしてあまりにも未熟でした。売上や数字について社員に厳しく当たり、成果を出せない社員は入れ替えたほうが早いと考えていた節すらありました。

「人を人と思っていない」。強い言葉ですが、正直この言葉がしっくりきます。

そして、様々な外部の研修で経営者としての心の在り方から、マーケティングやマネジメントをゼロから学びなおしたことも大きかった。また、研修プログラムには共に学ぶ仲間同士、会社の中を見学する機会があり、表には見えない工夫された仕組みもたくさん参考になることがありました。あらためて勉強を重ねていくと、 私の失敗の原因、失敗に至る必然的な理由 が見えてきました。

――失敗の理由とは?

三上: これまでお話しした中で多少触れてきたことでもあるのですが、大きく2つあると思っています。

1つは、創業時の思いなど「原点」を忘れないこと。 いつも、そこに立ち戻ること。私は売上や資金繰りに苦しくなってそれしか見えなくなりましたが、原点に立ち戻る習慣があれば、違った判断、結果になったと思います。

そしてもう1つが「他責しない」こと。それも「すべて」を。 以前の私はいつも、結局は自分ではない誰かが悪いということで結論していました。

社員の不正が出た時も、最後は「そういう奴だったんだ」で終わらせていました。そうではないのです。つまるところ、会社の仕組みが悪い。不正ができる会社を作った自分が悪い。自分がしっかりした会社を作っていれば、その社員は不正に手を染めることはなかった。染めようと思っても染められなかった。そうなると、その社員を不幸にすることはなかった。もっともっと、仕事に邁進してもらえたはずなのです。それができていれば、結婚式場の業績は落ちなかったでしょう。

当時は「なぜこんなひどいことばかり続くんだろう」と思っていました。でも結局、私は「人のせい」にして何も対策を講じていなかっただけ。起こるべくして起こった必然だったと腹落ちしました。

起きる問題は、すべて他人のせい。 他責するリーダーが率いる組織がうまくいくわけがありません。最初の葬儀場を建設する際に起こった反対運動やメディアへの対応。あの時、私が逃げ出した時点で、会社の未来は決まっていたのです。

変革を妨げる「現状維持バイアス」を克服するには?

理念経営ですぐに儲かることはない。それでも、やらなければならない。

――再出発にあたって、何から始められたのでしょうか?

三上: まずは「理念経営」です。

私は長い間、「会社にとって大事なのは数字であって、理念は形ばかり」と考えていました。今思うと、理念経営ごっこだったと思います。

しっかりとビジネスモデルがあるかどうかはもちろん、それとともに朝礼であったり、環境整備であったり、良い社風づくりにも専念しなければならないことが分かりました。

そして社風を変えるのに、長い時間がかかることも腹落ちしました。濁った水にきれいな水を入れたからといって、すぐにきれいな水にはならない。それでも、時間をかけてきれいな水を入れ続けなければ、いつまで経ってもきれいな水にはなりません。

私は大きな挫折を経て「次こそは本当に良い会社を作りたい。これが最後のチャンス」だと本気で思えるようになっていました。

そして理念経営を自分なりに整理しなおして明文化。「コーポレートスタンダード(経営計画書)」として行動指針をまとめ、社員に共有しました。様々な研修を受けては素直に、愚直に実践していきました。2018年のことです。

――経営理念の中には「社員の幸せがお客様を幸せにし、お客様の幸せが社員を幸せにします」とあります。

三上: 以前は「お客様ファースト」を謳うだけでした。そして社員には「あなたが成長しないことはお客様に迷惑をかけることだ」と伝えていました。

しかしそれは結果として「社員を大切にしない経営」に繋がっていました。 「社員が幸せでなければ、お客様を幸せにできない」と考えをあらためました。社員の幸せが先。決して順番を間違えてはいけません。

他にも「仕事を通して出会う人々に、私たちからプラスの影響を広げていきます」と記しました。自分の次は家族、その次は社員、お客様そして、地域、社会。自らの力を増大させながら、影響の輪をどんどん外へと広げていく。これを徹底していくと、地域へのボランティア活動に発展し、表彰されるまでになりました。

――社員への浸透具合はいかがですか?

三上: 組織の空気感や普段の行動がより良くなっていることは感じています。一方で、社員へ理念浸透サーベイを毎年実施することで、経営理念の浸透具合や満足度など、組織の状態の見える化に取り組んでいます。

組織に適切な働きかけを行うにあたって、その状態の把握は不可欠です。アンケートは2017年に始めましたが、最初は満足度が100点中50点以下。数字としては悪いです。それが年々上がって、最近では60点代になってきています。まだ道半ばですが、良い会社を作っていきます。

課題はたくさんあります。土台となる理念の浸透は進んでいるものの、目標意識や納得感、行動計画などは弱い。会社としてのサポートがまだまだ足りないと認識しています。そこを克服するべく私や会社が努力すれば、70点には乗せていけるはずです。あくまで指標の1つですが、数字として見えると改善を実感できます。

実際、当社の紆余曲折を知る古参の社員からはしみじみ「会社、良くなりましたよね」と言われます。私自身もそう感じていますし、ありがたいことです。

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業績やサービスは氷山の一角。見えない部分こそが会社にとって重要

――業績についてはいかがでしょうか?

三上 :葬儀事業だけとなった再出発時に、毎年15%増・5年で倍にする計画を立てました。以前は1.5倍、2倍にするんだと無茶な計画を立てていました。事業譲渡後に2億だった売上は、3年で2倍となり、5年間で3倍になりました。平均単価も同業他社のほとんどがダウンしている中で、当社は増加傾向。単価はトップクラスです。おかげさまで債務も解消できました。

もともと葬儀事業は十数年にわたって継続できていたものです。中野里社長からも「それだけ続けられるということは、きっと良いサービスができているはず。まずはそれが何かを見極めて、しっかり磨いていった方がいいよ」とアドバイスされました。

あらためて葬儀事業を見直してみると、荒削りとはいえ、お客様を集客する仕組みはある程度確立できていました。それがあったので、 「お客様により満足いただくための取り組み」、つまり、独自価値を積み重ねることで業績に繋がっていきました。

特に、それまで外注していた花の事業を自分たちでやり始めたことは業界内外で評価され、今では「花葬儀(R)」ブランドとして、独自の立ち位置を確立できました。遺言・相続・不動産・遺品整理といった終活関連のサポートなど、葬儀というライフイベントに臨まれるお客様に寄り添う取り組みを一歩一歩進めていきました。

葬儀業界に革命を起こしたと言われる完全オリジナルの「花葬儀(R)」。オーダーの9割はネット経由。外国人や海外からの相談もありました(写真提供/LIVENT)

――完全にV字復活されて、人も組織も大きく変化しましたね。

三上: ありがとうございます。ただ、業績やサービスといった 「目に見えるもの」はあくまで氷山の一角に過ぎないと思っています。その下の「見えない部分」こそが大事で、良い会社を支える仕組みや風土はそこに存在しています。

以前の私はそれを分かっていませんでした。ですので再出発にあたっては、日々勉強しては実践を繰り返すという形で、どんなに小さなことであっても取り入れるようにしてきました。挨拶、朝礼、整理整頓、社用車の整備…なんでもやりました。そうして少しずつ、会社の雰囲気が変わり、社員の表情や行動が変わっていきました。

私自身としても、同じ轍を踏まない覚悟で学びを重ねるようになりましたし、以前の私を知る人からは「そんなキャラだったっけ?」と言われることもあります。それだけ変われたのでしょう。

大きな思い違いと失敗を経て遠回りしてしまいましたが、それを取り戻して余るくらい、もっと良い会社・サービスを作っていきたいですね。

(取材・文:加藤 陽之 撮影:松本 岳治)

この記事についてコメント(2)

  • 私、石塚正浩は、SNSのmixiの発起人であり、クリスタルグループの創業者で、株式会社エーオンと有限会社ネヴィコの社長でもありますが、mixiは、富士通と渋谷警察の不正で乗っ取られ、クリスタルグループは警視庁と警察庁の会計院の不正で乗っ取られ、ネヴィコも同様で、㈱エーオンも同様で、私は全てを失い、今は、一文無しの貧乏ですが、毎日インターネットニュースを読みとYotubeを視聴して、
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    こちらのホームページに世界情勢に詳しくなれて、最新のガン治療法を https://aon.tokyo/cancer に、https://aon.tokyo/phev にまとめており、今は、警備会社のアルバイトに応募して採用の合否判定を待っている状況です。いつか財閥財団のオーナーになりたいです。

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