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デンソーはインバーターの技術開発を強化している(写真:日経クロステック)
デンソーはインバーターの技術開発を強化している(写真:日経クロステック)
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 デンソーが、電気自動車(EV)などの電動車両に向けたインバーターの技術開発を強化している。次世代パワー半導体の炭化ケイ素(SiC)や新しい冷却構造などで出力密度を従来比で1.6倍超に高めた。新技術の投入でインバーター事業の成長に弾みをつける。

デンソーは電力密度が高い新型インバーターを開発した(出所:日経クロステック)
デンソーは電力密度が高い新型インバーターを開発した(出所:日経クロステック)
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 直近の事業説明会や展示会で、電動化事業の方針や技術開発状況などを説明してきた。電動化事業の中核にあるのは、「世界トップシェア」(同社)を誇るインバーターである。

 

コストを削減できる。電池容量が大きいEVではコスト削減効果が大きいので、主にSiCを使う。

 一方、HEVはEVほど必要な電池容量が大きくない。そこでHEVには安価なSi IGBTが適すると見ている。IGBTの中でも、デンソーが力を注ぐのが「RC-IGBT」である。

 RC-IGBTはIGBTにダイオードを集積して1チップ化したもので、「逆導通型絶縁ゲートバイポーラトランジスタ」と呼ばれる。インバーターやコンバーターといった電力変換回路では、IGBTのようなトランジスタとダイオードをセットで用いる。これらを1チップ化することで、それぞれを別に用意する場合に比べて、パワー素子のサイズを約3割小さくできる。それにより、コストも減らせる。

SiCウエハーの確保に注力

 今後、インバーターはEV向けの比率が高まることから、SiCパワー素子に対する需要が急拡大する。そこでデンソーはSiCパワー素子の生産能力も強化する。

 現在、口径150mm(6インチ)のウエハーでトレンチ型のSiC MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)を量産しているが、2027年に口径200mm(8インチ)のウエハーで量産することを目標に掲げている。ウエハーの口径が大きくなるほど生産性が高まるので、コスト削減につながる。

 パワー半導体各社がSiCパワー素子の増産に走っている。そのため、高品質なSiCウエハーの安定的な調達がますます重要になっている。そこでデンソーは、ウエハーメーカーとの関係強化に動いている。

 2023年10月には、SiCウエハー企業の米Silicon Carbide(シリコン・カーバイド)に対して、5億米ドル(約740億円)を出資すると明らかにした。この出資を機にデンソーはSiCウエハーの長期供給契約を締結している。

キーワード

インバーター 直流を交流にする電力変換器。交流の電圧や周波数を変えてモーターを駆動する。モーターを細かく制御できるので、省エネにつながる。家電から産業機器、自動車まで幅広い機器で利用されている。

論理回路でもインバーターがある。入力信号を反転した信号を出力するもので、NOT回路と呼ばれる。