2024年3月16日土曜日

CiRA研究インターンシップ生インタビューvol.8 -iPS細胞研究の経験をもとに、トランスレーショナルメディシン分野でキャリアを築くことを目指す- 2024年3月11日

https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/newsletter/240311-000001.html

https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/newsletter/240311-000001.html


小川夏奈さん
(クイーンズ大学)




 カナダのクイーンズ大学大学院修士課程で、トランスレーショナルメディシン(注1)分野で研究を始めている小川夏奈さんにとって、iPS細胞を使うことは初めてではありませんでした。過去に2度、夏にカナダのトロントにあるホスピタル・フォー・シック・チルドレンでインターンとして働き、嚢胞性線維症の研究やそれに関連した大腸がんの腫瘍形成について研究するために、iPS細胞を用いてヒトの大腸オルガノイドを作製しました。去年の夏は、さらに足を延ばし京都にやってきて、CiRAの研究インターンシッププログラムに参加しました。

 CiRA研究インターンシッププログラムに参加することを決めた理由について、「吉田(善紀)先生の研究室で研究したいと思ったのは、評判が良く、専門的な知識が学べるからです。それに、心筋細胞についてもっと知りたいと思ったからです」と語ります。

 去年の7月から8月かけての4週間、小川さんは吉田善紀准教授増殖分化機構研究部門)の研究室で心筋オルガノイドの作製に取り組みました。「iPS細胞由来のそれぞれ異なる種類の心筋細胞を組み合わせることで心臓のオルガノイドを作製できます。このオルガノイドは心臓のいくつかの重要な特徴をシミュレーションする能力があるのです」と説明します。また、iPS細胞から分化させた心筋細胞を、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)(注2)や免疫蛍光染色、蛍光活性化セルソーティング(FACS)(注3)といった手法を用い、遺伝子およびタンパク質発現解析を行いました。「私が作製した心臓のオルガノイドをマウスに移植して観察するという、貴重な体験もできました」と話します。

 「CiRAで素晴らしい経験ができました。iPS細胞研究に特化した世界有数の研究所で学ぶことができ、著名な研究者から指導を受けることができて光栄でした」と小川さん。

 このインターンシッププログラムが、彼女の研究や将来の展望にどのような影響を与えたかという質問に対して、こう答えました。「このインターンシップを通じて、研究を仕事にしたいという思いを強くし、将来に対する考え方が変わりました。CiRAの研究者が熱心に研究に取り組んでいるのを見て、iPS細胞研究を前進させるために行われてきたさまざまな業績に対しとても尊敬の念を抱くようになりました」。

 基礎研究の成果を医療に応用することを目標にしており、インターンシップで素晴らしい研究のスタートを切ることができた小川さんは、小児に多い悪性脳腫瘍である髄芽腫の腫瘍形成制御メカニズムについて大学院で研究する予定です。

 iPS細胞や心筋細胞の研究以外では、歴史と文化が豊かな京都のさまざまな場所を散策し、素晴らしい時間を過ごしたそうです。「京都は美しい街です。ここで過ごしたすべての時間がお気に入りです」と熱心に語ります。京都市内を自転車で巡りながら、京都御所、哲学の道、鴨川、二寧坂(二年坂)などの名所を訪れました。インターンシップ期間中に、祇園祭にも行き、「祇園祭に参加できたのは、とてもいい経験でした。街中であんなにたくさんの人を見たのは初めてです」と小川さん。

左から:祇園祭、鴨川、清水寺、二寧坂
(写真:小川夏奈さん)

注1)トランスレーショナルメディシン
基礎研究から臨床応用へ移行を目指す医学研究。

注2)逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)
遺伝子発現の解析に有用な方法の一つ。

注3)蛍光活性化セルソーティング(FACS)
目的の細胞だけを分取する技術。

(文(英語):ケルビン・フイ(CiRA研究推進室特定研究員)、翻訳:国際広報室)

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