https://news.mynavi.jp/techplus/article/20240304-2898075/
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インフィニオンテクノロジーズジャパンは3月1日、記者説明会を開催。独本社のSam Geha博士(Photo01)により、同社の次世代PSoCシリーズのロードマップの説明が行われた。
複数事業部にまたがるICWビジネス
まずはGeha博士の率いる「ICW Business」について。2020年時点での肩書はInfineon Technology AGの子会社であるInfineon Technologies, LLCのCEOで、このInfineon Technologies, LLCはMemory関連事業をまとめて管轄するビジネスを行っていた。その後、2022年10月に本社であるInfineon Technology AGのICW BusinessのDirectorに就任している。
このICWというのは「IoT, Compute & Wireless」の略で、産業および民生向けの製品を扱っている。面白いのが、事業部そのものとしては同社のPSSとCSSの一部(Photo02)になっている事だ。
実際、2023年第4四半期のInvestor Presentationを見ても、事業部はATV(Automotive)、GIP(Green Industrial Power)、PSS(Power&Sensor Systems)、CSS(Connected Secure Systems)の4つしか存在していない。言ってみればICWというのは、物理的にはCSSとPSSに跨る形で構成される、仮想的な事業部(というか、事業部に跨るCross section的存在?)になっているようだ。ちなみにそのICWの昨年度の売上は全体のおおよそ15%に達するそうだ。そのICW、Infineon的には成長マーケットとして捉えており(Photo03)、しかもICWの中でもEdge AIのマーケットはさらに成長が著しい(Photo04)と見ているそうだ。
ICW向け次期製品はPSoCブランドで統一
ということでいよいよ本題。このICW向けの次期製品として、「PSoC Edge/Control/Connect」という製品群を投入する事が今回発表された(Photo05)。
要するに今後、同社のMCUはPSoCというブランドで統一されることになり、その第一歩がこの3つの製品群という訳だ。
それぞれのラインナップがこちら(Photo06)。
「PSoC Edge」は新しく投入されるラインナップで、Infineonとしては初になるNN Acceleratorを搭載したラインナップとなる。「PSoC Control」はPSoC 6の延長にあるもので、制御用という扱い。そして「PSoC Connect」は旧「AIROCシリーズ」を統合するようなイメージとなる。
もう少し具体的なロードマップがこちら(Photo07)。
この中でPSoC Edgeだけはもう少し詳細が出ており、すでに「PSoC Edge E84」という製品がある事も明らかになっている(Photo08)。
まだ具体的な説明は出来ない(これに関しては3月に開催されるEmbedded Worldで詳細が明らかにされる予定との事だった)ものの、ここにある様にCortex-Mx5(M85なのかM55なのかM35はまだ不明。Cortex-M55辺りが怪しいと思うが)に加え、Ux5とあるのは恐らくEthos-U55かEthos-U65で、これとCortex-M33を組み合わせてNN Acceleratorとしているようだ。PSA Level 4対応と言う事は事実上Arm-v8MのTrustZoneを利用してSecure Environmentを確保しているという事になる。ちなみにCortex-MのAI向けSolutionとしてはHeliumを使うという可能性もある(これをNN Acceleratorと呼ぶか? というと微妙だが)、どうもHeliumまでは実装されていないようだ。またその他のAcceleratorを搭載する、という訳でも無いという話であった。すでにCustomer Samplingは開始されているとの事。
次がPSoC Controlであるが、こちらは現在のPSoC 6をベースにしたものになる。40nmプロセスでの製造となるが、こちらは8月頃のSamplingを予定しているという話であった。
PSoC ConnectについてはWi-Fi Combo、つまりWi-Fi 6/6E+BLEを搭載した製品についてはすでにSamplingを開始しており、またMCUを搭載しないWi-Fi+BLEのCombo(Geha氏曰く「他社のMCUに組み合わせる形で使って貰える重要な製品」)についても「AIROC Combos」という名称ですでにSamplingを開始しているとの事。これに加えてBLE+IEEE 802.15.4 Radio(Thread対応)を組み合わせたWireless MCUもやはりPSoC Connectブランドで提供予定だが、こちらは今年後半のSampling開始になる予定、との事だった。このPSoC ConnectはいずれもTSMCの22nmプロセスを使うとの事で、22ULPないし22ULLを利用するものと考えられる。
ちなみにこのPSoC Connectは今の時点ではすべてCortex-Mベースの製品となる。Cortex-RやCortex-Aは予定に入っていないとの事。またRISC-Vについては評価を行っている最中で、メリット(ロイヤリティやライセンス料が掛からない)がある一方、デメリット(アプリケーションによってはコード量が倍近くになる)もあるため、簡単には導入が難しいと見ているとの返事であった。ただ仮にRISC-Vを採用するとしたら、ローエンド向けになるだろう、という見通しも語られた。
Pはプログラマブルの意味ではなくなったPSoC
さて、質疑応答の中で確認されたのは、もうPSoCはPSoCではない、ということである。元々PSoCという名称は“Programmable SoC”の略である。これはCypressが2002年に発表した最初の製品(CY8C2xxxxシリーズ。当初はPSoC1とは言わずにただのPSoCだったが、後でPSoC 3/5シリーズが追加されたタイミングでPSoC1に改称された)に遡る。この初代PSoCはCPUコアこそM8Cだが、これに加えて「User Module」と呼ばれるモジュールが搭載されていた。このUser ModuleはAnalog BlockとDigital Blockから構成され、Digital BlockはDBB(Digital Building Block)とDCB(Digital Communication Block)の2種類がある。一方Analog BlockはOpAmpとSwitch Capacitorをベースに3種類が提供された。PSoCはこのAnalog BlockとDigital Blockをユーザーが自由に組み合わせることで、いわば専用回路を自由に作れるのが最大の特徴であった。このUser ModuleというかAnalog Block/Digital Blockは2009年に発表されたPSoC 3/5にも引き継がれ、2013年に発表されたPSoC 4ではむしろAnalog Blockの強化が図られた。ところが2017年に発表されたPSoC 6では、DCBの流れをくむSCB(Serial Communication Block)こそ搭載されたものの、ProgrammableなAnalog Block/Digital Blockが消えてしまった。この機能を愛するエンジニアは意外に多く、それもあって質疑応答でもこの機能の復活が何度か質問されたのだが、Geha氏の答えは「No」。Geha氏曰く「PSoCのPはもはやProgrammableの意味ではない」のだそうだ。これは正直非常に残念な話である。
説明会後の雑談の中で氏が漏らしたのは、「あのコンセプトはちょっと早すぎた」である。2024年1月24日にMicrochipがPIC16にFPGA Fabricを組み合わせたPIC16F13145を発表したが、これはある意味PSoC 1の再発明という感じもしなくはない(Analog Blockが無いあたりはむしろPSoC 1の方が高機能とすらいえるが)。つまりこの手のニーズは今も間違いなく存在するのだろうが、問題はすでにInfineonはそういう古典的なEmbedded向けのエリアよりも、もっと大きく伸びるマーケットにAddressしており、そうした古典的なEmbeddedエリア向けの製品を投入し、サポートする余地が無いという事である。これも時代の趨勢、という事なのかもしれないがちょっと残念であった
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