2016年9月17日土曜日

0.5秒でガンを見分ける職業



by Slices of Light 

人間には状況を一目見るだけで概要を把握する能力が備わっており、例えば自分の部屋のイスが突然部屋から消えれば、実際に部屋をじっくり調べなくともチラッと見るだけで「イスがない」ということに気づくことができます。米国科学アカデミー紀要(PNAS)で発表された新しい論文によると、これと同様に、乳ガンの検査を専門に行っている放射線技師は0.5秒で正常な乳房X線撮影像と異常な乳房X線撮影像を見分けることができると報告されました。 

A half-second glimpse often lets radiologists identify breast cancer cases even when viewing the mammogram of the opposite breast 
http://www.pnas.org/content/early/2016/08/24/1606187113 

Doctors don’t have to see cancer to suspect it’s there | Ars Technica 
http://arstechnica.com/science/2016/09/doctors-dont-have-to-see-cancer-to-suspect-its-there/

人が大きな写真をちらっと見ただけで意味を把握できる現象はグローバル処理と言われています。イギリス・ヨーク大学に在籍するKarla K. Evans教授らは放射線技師らに画像を一瞬だけ見せ、放射線技師らの見立てと画像解析結果とを比べることで、彼らのグローバル処理がどのような精度なのかをテストしました。 

by Carol Romero 

すると、わずか0.5秒のあいだX線画像を見せただけであっても、放射線技師らは偶然とは言えない確率でガンを検知できることが判明。時に放射線技師らは画像に写った特定の異常を見つける前でさえも、画像を少し見ただけで「悪く見える」という知見を述べることがありますが、今回のテストの結果はこれらの逸話を裏付けるものと言えます。技師らは実際に細胞のどこでガンが育っているかが分からなくとも、画像全体からガンのシグナルを読み取れるのだということが示されたわけです。 

また、驚くべきことに、ガン細胞の異常成長が見られない乳房のX線画像であっても、技師らはガンの存在に気づいたとのこと。研究者らによると、技師らがガンの有無を見分けるとき、正常な乳房の細胞と比較することはないように見えたそうです。ただし、同様に一瞬だけ画像を見せて「ガン細胞のある場所を見つけてください」と言った場合の検知率は、偶然と言えるレベルにまで落ちたそうです。 

もちろん医者も放射線技師と同様に患者のガン細胞を見分けることができますが、マンモグラムから一瞬でガンを見分けることができるのは放射線技師ならではの技術と言えます。研究者らは、コンピューター化された ガンのスクリーニング検査の精度を上げるべく、放射線技師らが画像から一瞬にして受け取る「シグナル」が一体何なのかを今後の研究で明らかにしていきたいとしています。 

by Army Medicine

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