2016年9月19日月曜日

妊娠したら大切な葉酸を摂取しましょう。

葉酸(ようさん)は特に妊娠初期に摂ることが重要と言われていますが、妊娠初期に葉酸をしっかり摂ることで母体や胎児に、どのような効果があるのでしょうか。その理由を知っておくことも大切です。

また、妊娠初期に葉酸が不足すると起こり得るリスクについても知っておきましょう。
(監修:矢追医院 院長 矢追正幸先生)

妊娠初期における胎児への葉酸の効果

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胎児は、妊娠7週目までに脳や脊髄などの中枢神経系の基礎となる神経管が形成され、妊娠11週までには頭や胴体、足もできてきます。

このように細胞分裂が活発な妊娠初期に、葉酸は重要な役割を果たします。

神経管閉鎖障害の発症リスクを軽減

葉酸は、DNA(遺伝子情報)とRNA(体内でタンパク質を合成)で構成された「核酸」を作る働きがあります。また、DNAが正しく複製・分裂して細胞が増えていく過程で重要となるタンパク質の生成にも欠かせません。

このような働きを持つ葉酸が妊娠初期、特に7週目までに不足すると、先天異常である「神経管閉鎖障害」を起こすリスクが高まります。

胎児の中枢神経の基礎となる神経管は、最初は板状の神経板からはじまり、妊娠4週目頃に管状の神経管へと発達していきます。

神経管は背中の中心あたりから上下に向かって閉じていき、最後に頭側と尾側が閉じてから骨や筋肉に覆われます。

このときに、細胞の分裂や増殖に関わる葉酸が不足することで神経管の一部がきちんと閉じられず、脊髄が飛び出した状態になることがあります。これが「二分脊椎」です。

出産後に二分脊椎が判明すると直ちに手術が行われますが、下肢の運動障害や排泄機能に障害が残ることもあります。

また、神経管は妊娠7週目までに形成され、8週目には脳脊髄液の循環が始まりますから、この循環に支障をきたすことで水頭症が起こる可能性もあります。

流産・死産のリスクを軽減

「二分脊椎(にぶんせきつい)」の場合は背中から下の神経管に閉鎖障害がみられますが、この現象が背中から上にあらわれると「無脳症」になります。

無脳症は脳に欠損や収縮がみられる状態で、流産や死産の危険が高まります。

神経管閉鎖障害を防ぐ世界各国の取り組み

1991年に7カ国が参加して行われた臨床実験において、「妊娠前後に葉酸を摂ると胎児の二分脊椎のリスクが72%低くなる」と報告されました。

翌年、アメリカの疾病管理センターでは、「妊娠可能な年齢のすべての女性は、1日400μgの葉酸摂取」を勧告。(※μg=マイクログラム)

さらに1998年からは、「通常の食事からの葉酸の摂取に加え、サプリメントや強化食品による1日400μgの葉酸摂取」をススメています。

各国も同じような取り組みをはじめ、二分脊椎の発生率が大幅に低下しました。

日本でも、2000年に厚生労働省が葉酸摂取の呼びかけをスタート。妊娠する1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月の間、食事のほかサプリメントで「1日400μg の葉酸摂取」を推奨しています。

母体への葉酸効果

葉酸を摂取するのは、胎児のためだけではありません。母体にとっても葉酸は大切な働きを持ちます。

貧血を予防

葉酸は「造血ビタミン」とも呼ばれており、ビタミンB12とともに赤血球の生成には欠かせません。ですから、葉酸が不足すると、巨赤芽球性貧血、動悸や息切れ、全身の倦怠感などを引き起こすことがあります。

免疫機能や消化管機能を健やかに保つ

葉酸が欠乏すると細胞分裂に支障をきたし、口内炎や舌炎、胃や十二指腸潰瘍などが起こりやすくなります。

着床しやすい環境づくりも期待

細胞分裂を活発にする葉酸は、子宮の健康状態を保つためにも効果的です。子宮内膜の強化や受精卵を守ることで着床しやすい環境を作ります。

高血圧や心疾患のリスクを低減

動脈硬化を引き起こす原因になると言われている「ホモシステイン」。葉酸はこのアミノ酸の血中濃度を下げる働きがあり、動脈硬化による心疾患や高血圧を予防します。

このように、母体にも胎児にも大切な栄養素である葉酸。日常生活の中で上手く摂取できるように心がけつつ、不足していると感じたらサプリメントなどで補っていくようにしましょう。

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