2016年09月23日
脂肪の多い食事などにより特定のタンパク質が肝臓で増加し、脂肪肝が悪化することを大阪大学の研究のチームが突き止めた。このタンパク質「ルビコン」は脂肪などの分解を抑える働きがあり、これを標的とした治療薬の開発が期待できる。
脂肪を摂りすぎると肝臓の「オートファジー」の機能が低下
脂肪肝は、脂肪の多い食事などが原因で、日本を含めた先進国で増加しており、人口の30%が脂肪肝を発症していると推計されている。また、脂肪肝の一部は「非アルコール性脂肪肝炎」を経て重症化し、「肝硬変」、「肝がん」へと進行するため、脂肪肝の悪化をいかに抑えるかが課題となっている。しかし現在は、脂肪肝を治療するために効果的な薬剤はない。 一方、生物が生きるためには、細胞内で不要なもの、有害なものを分解することが重要だ。「オートファジー」は細胞内分解システムのひとつで、「オートファゴソーム」と呼ばれる膜構造の新生を通して、栄養源のリサイクルや細胞内で過剰なもの、有害なものを分解することで、生体の健康を維持している。オートファジーの異常はがんなどの病気を引き起こすほか、老化を抑制するメカニズムとして注目されている。 脂肪肝では「ルビコン」というタンパク質が増えると、オートファジーの機能が低下することまでは分かっていたが、詳しいメカニズムは分かっていなかった。非アルコール性脂肪肝炎の患者の肝臓内でもルビコン発現が上昇
そこで、研究グループはルビコンに注目し実験を行った。マウスに4ヵ月間、脂肪を約30%含む高脂肪食を与え続けるとマウスの肝細胞はルビコンが増加し、オートファジーが抑制されていた。また、ルビコンが働かないように遺伝子操作したマウスの肝臓は、オートファジーが機能し、脂肪蓄積が減っていた。 また、大阪大学の臨床部門の協力を得た研究で、非アルコール性脂肪肝炎の患者の肝臓内でもルビコンの発現が上昇していることを確認した。 今回の研究成果により、脂肪肝に対して、ルビコンを標的として、患者の肝内脂肪を減少させ、肝障害を軽減させる治療薬の開発が期待される。さらに、これにより脂肪肝から重症化する非アルコール性脂肪肝炎や肝がんの発症を抑制することも期待される、と研究グループは述べている。 大阪大学大学院医学系研究科消化器内科学の竹原徹郎教授、同大学大学院医学系研究科遺伝学/生命機能研究科細胞内膜動態学の吉森保教授らの研究グループによるもので、研究成果は、米科学誌「Hepatology」オンライン版に発表された。 今回の研究成果について吉森教授は「今回の成果はルビコンが原因となっている病気のはじめての報告となる。オートファジー不全を伴う病気は脂肪肝以外にも報告されておりルビコンが原因のものもあるかもしれない」と述べている。 また竹原教授は「肝疾患の中でももっとも頻度が高い脂肪肝の治療につなげたい」などとコメントしている。大阪大学大学院医学系研究科消化器内科学[ Terahata ]
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