インプラント治療の3つの誤解
最近ますます身近になってきているインプラント治療。深刻な歯周病でなくても、歯並びや歯の色が気になる人なら興味を持ったことがあるのではないでしょうか。
インプラントは、もともとある歯を歯根から人工のものに変えてしまうという大がかりなものですが、十分な基礎知識を持たずに治療を受ける人が少なくありません。
インプラントは基本的に保険適用外ということからもわかるように、クリニック選びも治療法の選択も自己責任になります。都内で歯科技工士として働くIさんに、後悔する前に知っておいてほしい「インプラントの誤解」を教えてもらいました。
誤解1:治療したらすぐにキレイな歯になる
インプラント治療とは、アゴの骨に人工の歯根(フィクスチャー)を埋め込んで新しい歯をつくる治療のことです。何らかの理由で歯根ごと歯がなくなってしまったり、虫歯がかなり進んで、被せ物だけでは対応できなくなったりした場合に使います。骨の中に埋められた人工の歯根と義歯(上部構造)は、アバットメントと呼ばれる連結部品でしっかりと固定されているので、自然の歯に近い快適な噛み心地を長期間キープすることができます。
良いことばかりのようなインプラントですが、治療開始からキレイな歯の状態になるまでに時間がかかるというのは、あまり知られていないのではないでしょうか。治療方法にもよりますが、人工歯根がアゴの骨に定着するまでに3~6ヵ月、人工歯根の上部を一度歯肉で覆う方法を選んだ場合は、歯茎を切り開いてから傷口が落ち着くまでに1~6週間の時間がかかります。
この期間を経てやっと義歯を装着できるわけですから、仮歯を使うのでないかぎり、インプラント治療を開始しても半年強は歯がない状態が続くということなのです。「即時荷重」と言って治療をしたその日に義歯をつける治療法もありますが、歯根が固定されていないうちに力がかかってしまうため、とてもリスクの高い方法です。先のことを考えると、慎重に選択したほうがよいでしょう。
誤解2:インプラント治療は誰でも安全に受けられる
インプラント治療を始める前には、CTや血液検査などの各種検査が必要です。その人の体質や健康状態によって適切な治療方法は違ってくるうえ、場合によっては治療をオススメできないケースも存在するからです。
たとえば、骨粗しょう症の症状がある場合は、人工歯根がアゴの骨に十分にくっつかない可能性もあります。このような場合は、インプラント治療の前に骨移植などの処置を行なわなければなりません。また、糖尿病の人は抵抗力がとても弱い状態なので、そのままインプラント治療を行うと、傷口から細菌が入り込んでしまいます。抗生物質を内服するなどして、対策をしておく必要があります。
最近ではこうした対策を講じることにより、治療が不可能な人はほぼいないと言われています。しかし、依然として治療のリスクが高く、かなりの覚悟を要するケースも存在します。治療を始める前に、しっかりとした事前診断を受けることが重要です。
誤解3:一度治療したら永久にもつ
インプラント治療に対する誤解でもっともありがちなのが、「インプラント治療は一度行ったら終わり」というものです。インプラント治療で使われる義歯は、強い刺激を受けると欠けたり、時間の経過により磨り減ったりしてしまいます。少し前まで主流だったセラミックは義歯の素材の中でも強度が弱く、その傾向は強いと言えるでしょう。
最近ではセラミックにレジンと呼ばれる物質を混ぜて強度を上げたものや、一般的なセラミックの4~5倍の強度を誇るジルコニア製のものなども使われるようになっていますが、絶対に、永久に破損しない義歯というのはないと考えた方がいいでしょう。治療を受けたあとも歯の状態をこまめにチェックし、異変を感じたら医師に相談してください。
また、アバットメントがスクリュー固定式の場合は、時間とともにネジがゆるんできてしまうこともあります。これも放っておくと、ガタつきによって歯肉や周辺の神経に不要な刺激を与えることがあります。違和感を感じたらすぐにクリニックを受診し、ゆるみを直してもらうことをオススメします。
治療費は、1本数十万円の高額になることも珍しくないインプラント。治療を決断したからにはしっかりと下調べをして、自分に合った治療法を選びたいものです。基礎知識を洗い直していくことで、知らず知らずのうちにしていた誤解や思い込みが正され、より安心して治療を受けることができるでしょう。(提供:ヘルスグリッドオンライン)
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