https://news.yahoo.co.jp/articles/66faab30fc7e7546633357305096080266317783
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昆虫食が身近になってきた。とりわけ必要なエサが圧倒的に少なく環境負荷が小さい栄養源としてコオロギが注目される。大手企業が商品化し、環境問題に敏感な若者も普及を進める。食糧問題解決の可能性を秘めた食材の力に迫る。 「昆Tuber」の肩書でユーチューブなどを活用して日々昆虫食の普及に努める清水和輝さん(21)。人類が肉や魚を食べ続けるためには昆虫食が必要だと訴える。どういうことか。 たんぱく質1キログラムを生産するのに必要なエサの量は豚がコオロギの約3倍、牛は約6倍だ。必要な水は豚が875倍、牛は5500倍にもなる。排出する温暖化ガスは豚がコオロギの11倍、牛は28倍。清水さんは「肉や魚の生産には大量のたんぱく質や穀物を使っている。その一部を昆虫に置き換えれば肉や魚を食べ続けられる」と話す。 清水さんは近畿大学農学部環境管理学科の4年生。3月中旬には昆虫料理研究家でNPO法人昆虫食普及ネットワークの内山昭一理事長の指導を受けながら虫好きのタレント、井上咲楽さんのユーチューブ番組にも参加。ハムシの幼虫を新鮮なものと熟成させたもので食べ比べた。「ほかの食材と同じく調理法や味付けでおいしさが変わる」 「虫はおいしい」という体験をしてもらおうと子供のイベントには積極的に参加している。「将来の地球環境を担う子供には虫への固定観念を持たないでほしい」と清水さんは言う。 2013年に国連食糧農業機関(FAO)の報告が人口増加の解決策として昆虫食を推奨したことに驚き、自宅や大学がある奈良県内で100種類以上の昆虫を食べてみた。20年にはコーヒー店と一緒にコオロギの粉末を豆に配合した「コオロギコーヒー」を開発、通信販売している。独特の風味とコクがある。 商品化は大手でも進む。「無印良品」を展開する良品計画は20年に粉末コオロギを材料に使った「コオロギせんべい」を発売。ネットストアと全国51店舗では売り出す度、常に1週間で完売する人気だという。「えびせんみたいで食べやすい」といった声が多い。 19年にフィンランドに出店する際に、環境対策としてヨーロッパで昆虫食が広がっていることを知ったのがきっかけだった。商品開発担当部長の神宮隆行さんは「現状では世界の人口を支えるだけの食を供給できない。コオロギは35日で成虫になり飼育が容易。鶏や豚や牛の代わりになる時代が必ず来る」と話す。 持続可能な食材の秀逸さはわかった。問題は味だ。通販サイトにはコオロギだけで10種類以上の商品がある。食べてみた。ほぼコオロギの姿のローストは苦みと油のクセがある。カレーやにんにくの味付けだとコオロギ特有の苦みはほぼ消える。ラーメン味のスナックは普通においしい。ちなみに、エビやカニと似た成分があるので甲殻アレルギーの人は注意が必要だ。 食品ロスの活用例もある。東京農業大学の学生ベンチャー「うつせみテクノ」では、主に魚粉中心のエサに加え、パン工場で廃棄される麦かすや米ぬか、規格外の野菜や廃棄される魚の頭や内臓をエサにしてコオロギを育てている。さらに人工知能(AI)を利用して魚のフンを植物の肥料にし、植物の一部をコオロギのエサにしてコオロギの一部は魚のエサにする循環型の生産システム構築にも取り組む。 代表社員の4年生、秋山大知さん(21)もFAO報告に危機感を強めた。「特産品のお茶や、ビールかす、ワインかすを食べさせて味を良くしたブランドコオロギの生産も試している。将来的には産官学で協力して、ふるさと納税の返礼品としてコオロギ商品を開発したい」と意気込む。 秋山さんは、発泡スチロールを食べるミールワームという甲虫の幼虫にも注目している。「例えば、猛毒の廃棄物を食べて体内で無毒化して他の生物のエサとなる昆虫が見つかれば、有毒な無機物からたんぱく質を生産できる最強の循環システムになる」。昆虫の可能性は限りなく広がる。(大久保潤)
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