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東京都新宿区下落合のマンション地下駐車場で二酸化炭素(CO2)を含む消火用ガスが噴き出し作業員4人が死亡した事故で、天井の張り替え作業の工程で誤って電気信号が流れ、消火装置が作動した可能性があることが21日、捜査関係者への取材で分かった。構造上、電気信号が流れない限り、装置は起動しないことが判明したという。事故から22日で1週間。警視庁捜査1課は今後、再現実験を行う方針で、作業工程を確認し誤作動の端緒を検証する。 【写真】消火設備が誤作動したマンションの入庫口付近 捜査関係者によると、地下1階の駐車場では、CO2を含むガスの噴射で火災を抑える仕組みの消火装置を採用。天井には熱感知のセンサーと煙感知のセンサーが計12カ所に設置されており、両センサーが熱や煙を感知すれば、それを示す微弱な電気が信号として流れ、ガスが噴出する仕組みになっていた。今回も最初に熱センサー、その後に煙センサーがそれぞれ感知して反応していたことを示す形跡が確認されたという。 センサーは天井板に固定するような形になっており、工事で天井板を張り替える際は、むきだしの配線につながれたままのセンサーが吊(つ)り下がった状態だったという。センサーは手で触れるなど直接的な衝撃を与えても反応しないことから、構造上、何らかの原因でセンサーが感知したことを示す電気信号が誤って流れ、ガスが噴射した可能性がある。現場に火の気はなかった。 同様の工事では誤作動による事故を防ぐため、装置の電源を落としたり、手動に切り替えたりすることが一般的だが、今回は電源が入ったまま作業していたという。 捜査1課は業務上過失致死傷容疑で、工事の元請け会社などを家宅捜索し、安全管理に問題がなかったかを調べている。専門家らに調査を依頼して工事中の細かい状況の再現実験を行い、どの工程でセンサーが反応したのかなどを確認する。 事故は15日午後5時ごろに発生。地下1階駐車場でCO2を含むガスを噴射する消火装置が誤作動し、東村山市廻田町、相沢学さん(44)さんら4人がCO2中毒で死亡、1人が意識不明の重体となった。密閉空間で急激に酸素濃度が低下し、逃げ遅れたとみられる。 ■消防設備士配置は努力義務 天井の張り替え作業中に起きた東京・新宿のマンション地下駐車場でのCO2中毒事故。消火装置の取り扱いに詳しい消防設備士が立ち会っていれば事故を防げた可能性があるが、立ち会いはあくまでも努力義務で、今回の工事では配置されていなかった。 総務省消防庁はCO2を用いた消火設備付近で工事をする際、消火装置を取り扱う消防設備士などを立ち会わせるよう自治体などに通知している。誤作動による事故を未然に防ぐのが目的で、有資格者が消火装置の電源を落としたり、手動に切り替えるなどの作業を実施し、安全を確保する。 ただ、有資格者の立ち会いは法的拘束力のない努力義務。消防法では、消火設備近くで行う工事の場合、火災予防を目的とする法の適用範囲を超えていることなどを理由に、立ち会いを推奨することにとどまっている。 CO2を含む消火用ガスを噴出するタイプの消火設備がある駐車場などの事故は後を絶たない。元東京消防庁麻布消防署長で市民防災研究所の坂口隆夫理事は「同様の事故では、資格を持った人が立ち会っていないケースが多い。繰り返し通知を出しているが、実効性が低いのが現状だ」と説明する。 消防設備士の立ち会いの義務化については慎重な意見もある。豊橋技術科学大の中村祐二教授(火災物理科学)は「検討するのは時期尚早。法律で固めると、業者の身動きが取れなくなる可能性がある」と指摘。法整備に伴い作業工程が複雑化することで、新たな事故を誘発しかねないと懸念するが、一方で「しっかりと原因を検証した上で、消防設備士がいなかったことが事故につながってしまったのであれば、義務化を検討する必要がある」とも話している。 捜査関係者によると、亡くなった作業員らは孫請け会社の所属で、有資格者を手配する義務があるのは、元請け会社だという。「孫請け業者は被害者。知識がある有資格者を手配していれば事故は起きなかった。なぜ怠ったのか」。捜査幹部は首をかしげた。(松崎翼、王美慧)
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