2022年10月5日水曜日

なぜ「コピー機のリコー」が下着&ヨガウェアブランドを?

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2022年10月04日 20:50  ウートピ

ウートピ

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コピー機やプリンターを製造・販売する「リコー」(東京都大田区)が、社内ベンチャーとして、今春、下着やヨガウェアを中心とするエスニックウェアブランド「ランゴリー(RANGORIE)」をスタートしました。「インド農村部の女性たちに職業機会を提供し、女性の地位を向上すること」をきっかけに、下着やヨガウェアを通して、作る人も、着る人も「一人ひとりが可能性を最大限に発揮できる社会」を目指すブランドです。

なぜリコーがエスニックウェアブランドを? 「ランゴリー」のプロジェクトリーダーである綿石早希(わたいし・さき)さんに話を聞きました。

なぜリコーがエスニックウェアブランドを?

——「リコー」と言えばコピー機やプリンターなどオフィス機器を思い浮かべる人が多いと思います。なぜ、「インドで女性の下着やヨガウェアを作る」という事業に結びついたのか、経緯を教えてください。

綿石早希さん(以下、綿石): 確かに、「リコーが下着? ヨガウェア?」と思われますよね(笑)。リコーはプリント技術に強みがあり、中には布にプリントする技術も含まれます。「ランゴリー」で使用しているプリント生地は、弊社のプリント技術を使って作ったものです。

——そうなのですね、社内からの反対はなかったのですか?

綿石:実はリコーの企業理念に関わってくるのですが、少しだけ弊社の歴史を振り返ると、リコーは、1936年に市村清(いちむら・きよし)が創業し、彼が手掛けたさまざまな事業の一つに、1940年代に立ち上げた、下着や水着を扱う「三愛」があります。働く女性の増加を見据えて、服の内側のおしゃれの需要に応えるというものでした。

——あの、下着や水着の「三愛」が昔はリコーの事業の一つだとは、知りませんでした!

綿石:よく言われます(笑)。「世の中に必要とされるものを提供していけば、おのずと事業ができる」というのが創業者の理念で、弊社では「世の中に必要とされるものは何だろう?」と常に考え、社会課題を解決する事業を提供する活動がずっと続いています。

その一つとして、2009年に「世界に視野を広げ、これから成長する国で必要とされる事業を見つけよう」というプロジェクトが発足しました。同プロジェクトの調査隊の1人として現地に行ったのが、「ランゴリー」の共同代表である江副亮子(えぞえ・りょうこ)です。

インドの農村部に滞在した際に彼女が驚いたのが、女性の地位が非常に低いこと。そして、女性たちが農作業をする時もとてもおしゃれなこと。ただ、きらびやかなサリーを着てアクセサリーもつけているのに、そこからチラリと見える下着はイケてなかったり、サイズが合っていなくて苦しそうだったり……インド女性の下着事情を調べようと下着店を訪ねたところ、第二の驚きがあったんです。

インドで女性が女性に下着を売る仕組みを作る

——下着店での第二の驚きとは?

綿石:なんと下着を売っているのが男性だったんです。インドでは、男性が外で仕事をして、女性は家の仕事をする、という役割なので、下着といえども男性が販売するのが当たり前。気まずいけれど「仕方ない」と受け入れられていました。でも、下着は売るほうも買うほうも女性同士がいいだろう、ということで、リコーは女性用品店女性オーナーを育成して、自宅を店舗にして下着を販売するフランンチャイズ店の仕組みを、現地のNGO法人である「ドリシテ(Drishtee)」と協力して作りました。育成はドリシテに委託し、リコーは主に発注システムや物流などの支援を行い、現在では、70店舗ほど運営しています。

——それが、リコーがインドで下着に関わる一歩となったのですね。

綿石:そうです。江副は、次のステップとして、現地で下着を製造したいと考えていたのですが、家庭の都合もあり、一歩を踏み出せないままでした。それから約10年がたち、2019年に社内ベンチャーとして新規事業プログラム「トライバス(TRIBUS)」が始まり、私自身が応募したことで、また動き始めました。

当時、私はコピー機のスキャン機能のエンジニアで、3Dスキャンに興味を持ち始めていました。女性のからだを3Dスキャンして、フィットしたものを提供したら価値あるものが作れるのではと思い、下着作りを調べていたところ、同僚の江副からインドの話を聞き、プロジェクトの立案を始めました。

女性も稼いで家計を助けたいけれど、働く場がないという現実

——「女性は家の仕事をする」ということですが、インドの女性が置かれている状況について詳しく教えてください。

綿石:インドでは、女性は結婚時に持参金が必要な風習が残っているため、経済的負担が大きい存在として扱われてしまいます。でも、女性は外で働く習慣がなく、家計に貢献できない。女性たち自身は稼ぎたいと思っているけれど、働く場がないため、立場が弱い、と江副から聞きました。そこで、農村部で地元の女性たちが働ける工房を設立し、下着を製造しようと考えたんです。どのようなものを作れば事業として成り立つかを探るため、2019年に、商品を日本からインドに持って行きテスト販売するなど調査を行い、いよいよ工房立ち上げという段階でコロナ禍となりました。

——事業化の矢先に出ばなをくじかれた形になってしまったのですね。

綿石:農村部で女性の地位を向上することが一番の目的なので、現地で下着を作るという目標は維持しながら、プロジェクトを前進させるために、まずは日本で生産し、販売することにしました。

テスト販売用に作った下着を日本やインドの女性たちに見せたところ、インド独特の色柄を使ったカラフルな下着だったため「これなら見せて着たい」となり、アクティブウェアとしても着用できるスポーツブラを作ることにしました。また、インドのイメージともつながるヨガウェアを加え、2020年に、「ランゴリー」ファーストコレクション発売となりました。

川原好恵

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