2024年2月1日木曜日

離島と本土結ぶジェットフォイル、老朽化への対応どうする…建造費高騰で更新計画立てられず

https://www.yomiuri.co.jp/local/kyushu/news/20240130-OYTNT50062/ 

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離島住民に欠かせない移動手段となっているジェットフォイル(昨年12月15日、長崎市で)
離島住民に欠かせない移動手段となっているジェットフォイル(昨年12月15日、長崎市で)

耐用年数35~40年

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 「揺れが少なく、体への負担も小さい。フェリーもあるけど、ジェットフォイル以外は考えられない」

 昨年12月中旬、福岡市の博多港。長崎県対馬市で飲食店を営む女性(66)は、福岡県内の老人ホームに入所する母親を見舞った帰りに、対馬行きの便を待ちながら、そう語った。自身も病気で福岡市の大学病院に通っており、毎月1回、JFで往復している。「島民の命と暮らしを守る船を未来につないでほしい」と願う。

 運航する九州郵船(福岡市)によると、博多港と長崎県・壱岐、対馬を結ぶ航路は、ピーク時の2018年度には延べ約46万人が利用し、離島住民らに欠かせない移動手段となっている。ただ、使用する2隻の船齢は昨年末現在で32、38年。国土交通省などによると、耐用年数は35~40年程度とされ、更新を検討する時期を迎えている。

 しかし、コロナ禍で半減した利用者も完全に回復しておらず、同社単独では建造費を負担できないという。万谷住雄常務(66)は「船が使えなくなる日が少しずつ近づいている」と不安を口にする。

技術維持にも影

 国内では新潟県から鹿児島県までの定期航路で6事業者がJFを運航しているが、老朽化する船の更新は共通する問題だ。

 読売新聞が6事業者にアンケート調査を行ったところ、20年に建造された最新の1隻を除く17隻の平均船齢は23年末時点で34・6年。最も古い種子屋久高速船(鹿児島県)の「トッピー7」が45年となるのをはじめ、14隻が30年を超えている。

 各事業者とも更新の必要性は認識しているが、5事業者が「更新する予定だが具体的な計画はない」、1事業者が「更新するかどうかも含めて具体的な計画はない」と回答した。

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 全事業者が更新する上での課題に挙げたのが、「建造費の高騰」だった。各事業者などによると、現在運航しているJFの建造費は25億円程度だったが、20年に25年ぶりに新造された東海汽船(東京都)の「セブンアイランド結」は、資材高騰によって約50億円に倍増した。その後の円安の影響もあり、現在は約70億円に達するという。

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 更新が長期間中断している現状は、建造体制の維持にも影を落とす。米ボーイング社が開発したJFは、1987年に技術を引き継いだ川崎重工業が建造している。同社の担当者は「何とか技術をとどめている状況だが、このまま動きがなければ、受注した時に確実に造れるか分からない」とこぼす。

自治体「国動いて」

 JFはビジネスや観光のほか、医療や災害時の救援など幅広い用途で利用されており、地元自治体は国に財政支援を求めているが、救済策は示されていない。対馬市地域づくり課の安藤智教課長補佐は「一事業者の手に負える額ではなくなっている。国が動いてくれないと手遅れになる」と焦りをにじませる。

 国交省の担当者は、補助金の支出について「船価が高騰し、通常の高速船やフェリーを利用する航路も多い中、国民が納得できるものでなければならない。コロナ禍で体力を削られた事業者の投資意欲を見極める必要もあり、自治体を含め、意思の疎通を図りながら対応を検討していきたい」としている。

◆ジェットフォイル =海面から浮上し、ジェットエンジンで海水を後方に噴き出して進む水中翼船。最高時速約80キロで通常の高速船やフェリーより速く、波の影響を受けにくいため、揺れが少ないのが特長。性能や採算性の観点から、波が高い海域や人口の多い離島を中心に就航している。

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