京都大学の研究チームは、半導体量子ドットを集めて結合させることで現れる新しい協同効果を発見し、その効果を利用して非線形光電流を増大させることに世界で初めて成功した。
半導体量子ドットはナノメートルサイズの微小な結晶であり、2023年のノーベル化学賞の受賞対象となった材料である。量子ドットの中に電子を閉じ込めることで、量子力学的な効果によって光の吸収や発光の波長を変えられるため、太陽電池や光電デバイスの材料として注目されている。
研究チームは今回、たくさんの量子ドットを集めた集合体がどのような物性機能を持つのかを明らかにするために、量子ドット同士を有機分子で結合させた量子ドット膜を作製。光照射によって量子ドットに作られた電子を電流として取り出す実験をした。
その結果、有機分子の長さを変えながら量子ドット同士の距離を近づけていくと、量子ドット膜から取り出される非線形光電流が非常に大きくなることを発見。レーザーパルス光を使った電子の量子干渉計測により、集団の量子ドットの中に入った電子が互いに協同的に振る舞うことでこの増大現象が生じることを明らかにした。
非線形な光電流が増大することは、照射した光のエネルギーが物質の中で高いエネルギーに変換されて電流として取り出せるということを意味し、低エネルギーの光を有効利用する光センサーや太陽電池の開発につながると期待される。研究論文は、ネイチャー・ナノテクノロジー(Nature Nanotechnology)に2024年1月31付けでオンライン掲載された。
(中條)
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