https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2403/04/news051.html
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東京大学は、光と電子の性質を併せ持つハイブリッドな量子結合状態を生成することに成功した。テラヘルツ電磁波と電子の両方を半導体ナノ構造中に閉じ込め、強く相互作用させることで実現した。大規模固体量子コンピュータへの応用を視野に入れている。
GaAs 2次元電子系上に半導体量子ドットを形成
東京大学生産技術研究所の黒山和幸助教や平川一彦教授らによる研究グループと、同大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構の荒川泰彦特任教授、權晋寛特任准教授らによる研究グループは2024年2月、光と電子の性質を併せ持つハイブリッドな量子結合状態を生成することに成功したと発表した。数個の電子とテラヘルツ電磁波の両方を半導体ナノ構造中に閉じ込め、強く相互作用させることで実現した。大規模固体量子コンピュータへの応用を視野に入れている。
研究グループは、テラヘルツ電磁波によって誘起された電流を測定することで、半導体量子ドット内に偏って存在する電子と、GaAs(ガリウムひ素)半導体基板上に作製したスプリットリング共振器との間の結合状態を観測した。
GaAs半導体基板には、表面から約100nm下に2次元電子が蓄積されたヘテロ接合基板を用いた。共振器の下側にある2本のサイドゲート電極とスプリットリング共振器に負電圧を印加することで、2次元電子を空乏化し量子ドットを形成することができる。
作製した共振器構造に外部からテラヘルツ電磁波を照射して共鳴励起させると、共振器のギャップにおいて、極めて強い電場の閉じ込めが起こる。しかも、スプリットリング共振器と量子ドットの微細電極の間では、電場がさらに増強される。また、量子ドットの中では、量子化した電子の軌道が形成されており、量子ドットに磁場を印加すると、電子軌道のエネルギー間隔を調整できる。
これに従い、電子軌道のエネルギー間隔がテラヘルツ光共振器の共鳴エネルギーと一致すると、量子ドットに閉じ込められた電子が、サイドゲート電極の近傍で発生したテラヘルツ電場を感じ、量子ドット中の軌道間で共鳴励起されるという。
実験では、量子ドット-スプリットリング共振器結合系試料を、ヘリウム3冷凍機で冷却。その上でテラヘルツ電磁波を照射し、量子ドットにおける電流変化(光電流)を測定した。この結果、スプリットリング共振器の共鳴モード(SRR)と2次元電子のサイクロトロン共鳴(CR)および、量子ドットの共鳴励起信号(QD)の間で反交差信号を観測した。また、3つの信号のエネルギーが一致する磁場領域では、3つの共鳴信号の間で反交差信号を形成することが分かった。
同時結合状態における共鳴エネルギーの磁場依存性を計算で求めたところ、実験結果と同じような光電流信号が再現できることを確認した。計算結果を基に、共振器と2次元電子の結合強度を評価した。この結果、ラビ周波数が共振器の共鳴周波数と比べ0.1倍よりも大きくなった。これは共振器と2次元電子とが超強結合状態にあることを示すものだという。
テラヘルツ光共振器と量子ドットの結合強度も、共振器と2次元電子の結合強度に匹敵する大きさであることが分かった。この理由として、量子ドットの電極とスプリットリング共振器との間に発生する「極めて強い局所的なテラヘルツ電場」を挙げた。
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