TSMCが7月18日に開催した2024年第2四半期決算説明会にて、同社の魏哲家(C.C. Wei)董事長(会長) 兼 CEOが「Foundry 2.0(ファウンドリ 2.0)」という新たなコンセプトを提唱した。

従来のファウンドリ業界の定義である前工程の生産受託から、後工程のパッケージング、テスト、そしてマスク製造、さらにはメモリ製造を除くすべてのIDMが手掛ける範囲まで対応領域を拡大するもので、同社のフェンデル・ファンCFOによると、「設計から製造まで一貫して手掛けるIDMがファウンドリ市場に参入してきており、ファウンドリという境界があいまいになっているため」だという。ウェイ会長は、「新たな定義は、TSMCが将来的に拡大する対応可能な市場機会をよりよく反映していると考えている」と述べる一方、後工程については、すべてに対応するのではなく「注力するのは、先端パッケージング技術」と強調した。

ファウンドリ2.0でのTSMCのシェアは28%

このファウンドリ2.0の定義に基づくと、その市場規模は2023年で2500億ドル近くになるという。従来のファウンドリ市場の規模が1150億ドルほどと試算され、その場合はシェア61.2%だが、ファウンドリ2.0になると28%まで低下するとする。また、その成長率(従来のファウンドリ市場+メモリを除くIDM)は2024年で10%の成長が期待できるとしている。

TSMCがなぜ、このようなコンセプトを突然打ち出したのかについての明確な理由は不明だが、一部の半導体業関係者からは各国の政治的な動きを鑑みたものではないかという声がある。例えばフランスでは、反トラスト法(独占禁止法)規制当局が、NVIDIAを反競争的慣行の疑いで告発する準備を進めているとする報道があり、他国の規制当局も同調する可能性が出ている。TSMCはNVIDIAのAI関連チップの製造を独占的に受託しているのみならず、NVIDIA以外のAI関連チップの製造受託もほぼ独占しており、前工程のみならず後工程のCoWoSパッケージング含め供給がひっ迫していることをウェイ会長は語っており、そうした中、TSMCは独占禁止法に抵触するようなシェアを有していないことをアピールするのが狙いではないかとする向きが一部にはある。

先端プロセスは順次量産開始を計画

また同社は、今後の先端プロセスの計画について、「2025年に量産開始を予定している2nm(N2)の最初の2年間の新規テープアウト数は、3nm/5nmの時と比べて上回ると予想している。N2は、N3E比で同じ電力で10~15%の処理性能向上、または同じ処理性能で25~30%の電力効率向上、およびチップ密度を15%以上向上できる。機能強化版となるN2Pは、N2比で同じ電力で5%の処理性能向上、同じ処理性能で5~10%の電力向上が期待され、スマートフォンとHPCの両方で2026年後半からの量産開始を予定している。次世代となる1.6nm(A16)についてはN2P比で同じ電力で8~10%の処理性能向上、同じ処理性能で15~20%の電力向上、そして7~10%のチップ密度向上を実現する。裏面電力供給ソリューションとして、ゲート密度とデバイスの柔軟性を維持を可能とする新たな裏面コンタクト技術『スーパーパワーレイル(SPR)』の採用によりHPCでの活用が期待されている。量産開始は2026年後半の予定で、N2、N2P、A16およびその派生製品により、将来にわたって成長の機会を獲得できるようになると確信している」とウェイ会長は語っている。