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Wi-Fi 7の目玉の1つに6GHz帯の320MHz幅対応があるが、「Wi-Fi 7対応」をうたうPCでも、320MHz幅でつながるとは限らないのが現状だ。 【画像】筆者の購入したWi-Fi 7対応PCに記載されている技適番号は「003-230204」 現状のWi-Fi 7対応PCは、技術基準適合証明(技適)、ドライバー、Windowsのバージョンの組み合わせによって使える機能が異なっており、「320MHz幅対応だが320MHz幅でつながらない」「320MHz幅非対応だが320MHz幅でつながる」といったように、“なぞなぞ”のような状況になっている。混沌としたWi-Fi 7対応PCの情報を整理する。 ■ 謝罪:技適関連で2度目の「やらかし」 まずは謝罪から。 筆者がこれまでに本誌で解説したWi-Fi 7関連のレビュー記事で、320MHz幅接続での速度をテストしたものがあるが、これらのテストで使用した機材は、技術基準適合証明で320MHz幅が許可されていない製品であった。 具体的には、MSI Prestige-16-AI-Studio-B1VFG-8003JPで、筆者が個人的に2月に購入したPCとなる。 このPCには、Killer Wi-Fi 7 BE1750w (Intel BE200D2W)が搭載されているのだが、筆者が購入したPCの底面に記載されている技適番号は「003-230204」となっており、下図のように6GHz帯に関しては160MHz幅までが許可されている。 このIntel BE200D2Wには、もうひとつ「003-240053」技適番号があり(5月27日付)、こちらは「D1D,G1D 6.105GHz,6.265GHz 0.000195W/MHz」という記載がある通り、320MHz幅の2つのチャネルが許可されている。 昨年末に国内で320MHz幅が認可され、筆者が購入した当該PCが発売されたのが2月8日だったので、勝手に320MHz幅に対応済みと考えていたが、実際はそうではなかったわけだ。 筆者の確認不足によって、320MHz幅が認可されていると誤解される可能性がある不正確な情報を発信してしまったことをお詫びする(編集部注:当該記事には注意書きを加えます。後述の通り、テストの結果自体は意図通り320MHz幅による通信を行って測定されたデータが得られていることから、記事の情報は引き続き公開いたします)。 なお、同じIntel BE200シリーズでも、BE200NGWの方は本校執筆時点(2024年7月5日)では160MHz幅までの証明しか存在しない。 ■ 320MHz幅でつながるのは事実 ただし、筆者がこれまでに掲載した記事で計測した320MHz幅の速度自体に誤りはない。 筆者のPCに搭載されていたIntel BE200D2Wに関しては、ドライバーのバージョンによって320MHz幅が意図せず使えてしまう状況であった。 具体的には、出荷時にインストールされていた「23.10.0.8」、1月9日にリリースされた「23.20.0.4」に関しては、アクセスポイント側を特定の設定にすることで、意図せず320MHz幅でのリンクが可能となる。 このため、誤解してほしくないのだが、記事で紹介している製品の性能やテスト結果自体に間違いはない。あくまでも、そのテストをする行為(接続行為)が法令に違反していたという話となる。 ■ ドライバーのバージョンによって変わる320MHz幅対応 しかしながら、ややこしいのが、この状況が現在は変わっていることだ。 Intel BE200D2W用のドライバーは、その後、「23.30.0」「23.40.0」「23.50.0」「23.60.1」とリリースされており、23.30.0以降のドライバーでは、以前のような特定設定での320MHz幅接続はできないように制限されている。 では、BE200D2Wで320MHz幅接続はできないのかというと、そうではなく、以下の条件を満たす場合に可能になる。 ・技適番号「003-240053」が印刷または画面上で確認できる ・最新のドライバーを利用する(現状23.60.1) ・PCのUEFIで320MHz幅が許可される 国ごとに利用できる周波数帯が異なることから、Wi-FiモジュールはPCのUEFIに書き込まれているパラメーターを参照して動作を決定するしくみになっている。これらはユーザーからは見えないようになっているため、詳細は筆者もわからないが、おそらく国コードのような値やWi-Fiの各機能を有効化するパラメーターがあると予想される。 出荷時にUEFIで320MHz幅のパラメーターが有効になっているケースもあれば、あとからアップデートでパラメーターを書き換えるケースもあるが、いずれにせよ、法的には新しい技適番号、機能的にはUEFIとドライバーが必要になる。 ■ Windows 11の対応は、320MHz幅の必須条件ではない ちなみに、Windows 11に関しては、24H2にてWi-Fi 7対応が実施されることになっているが、現状の23H2でもOSに依存しない部分に関しては接続が可能だ。 具体的には、4K QAMや320MHz幅に関しては、23H2でも利用できる。 ただし、23H2では、Windowsの接続のプロパティでリンク速度が正しく表示されず、Wi-Fi 7ならではの機能となるMLO(Multi-Link Operation)も利用できない。このため、実質的には、4K QAM+320MHz幅版のWi-Fi 6Eという位置づけに近い。 24H2の正式リリースは例年通りなら秋になると考えられ、現状はCopilot+ PCの条件を満たすPCでないと利用できないが、上記の320MHz幅の条件(技適、ドライバー、UEFI)を満たすPCであれば、23H2であっても4K QAMや320MHz幅を利用可能だ。 ■ 技適番号が本体に印刷されていたらアップデートは期待できず 番号が違うといっても、ハードウェア的には同じIntel BE200D2Wなのだから、古い「003-230204」の番号を持つPCが、今後、320MHzにアップデートされる可能性はあるのだろうか? この点については、2つのケースが考えられる。 1.技適番号が印刷されているケース 筆者のPCもそうだが、本体に技適番号が印刷されているケースでは、アップデートは期待できない。 同じハードウェアであっても、技適番号が異なる場合、別の無線機器として扱われる。仮に、UEFIとドライバーのアップデートによって320MHz幅に対応させると、そのPCのBE200D2Wは新番号である「003-240053のBE200D2W」として扱う必要がある。 すると、PC本体に印刷されている番号と実質的な番号が異なることになるため、何らかの形で本体に印刷されている番号を修正しなければならない。 そして、この作業はユーザーには許可されていない。つまり、メーカーが320MHz幅アップデートサービスを提供し、本体回収→印刷書き換え(またはシール貼り換え)という物理的な作業をする必要があるわけだ。 もしも、この方法を実施するメーカーがあれば神対応と言えるが、負担が大きいのでやらない可能性が高い。 2.技適番号が画面表示のタイプ もしも、技適番号がUEFIの画面上で確認できるタイプであれば、アップデートによって320MHz対応が実現される可能性はある。 この場合、UEFIのアップデートによって画面表示される技適番号の情報を書き換えればいいため、先のような回収の手間がかからない。同様の方法は、Wi-Fi 6Eの時にVAIOが実施しているので先例もある。これはメーカーの対応に期待したいところだ。 なお、PCの技適番号表示に関しては、これまでにも紆余曲折があった。 古い時代のPCでは、技適番号が本体に印刷されているのが当たり前だったが、Wi-Fi 6の後半からWi-Fi 6E登場までの1~2年の期間、PC本体に技適番号が見当たらなくなった時代がある。 UEFI表示の機種も一部あったが、オンラインマニュアルなどに技適番号を記載する方式などもあり、この方法が適切なのかどうか、総務省に取材したこともあった。 しかしながら、筆者が今年購入した2台のPC(MSI Prestage 16とLenovo Yoga Slim 7x Gen9)は、いずれも本体に技適番号が印刷されている。全てのPCを確認したわけではないので憶測にすぎないが、過去の印刷方式に戻ってきた印象がある。 個人的には、UEFI表示にしてくれた方が、後からのアップデートも期待できるのでうれしいのだが、技適番号の表示方法をPCの購入前に確認することは困難となっており、実質的には、運でしかない。 ■ 確認しなかった筆者も悪いが「わかりにくい」 このように、Wi-Fi 7の320MHz幅接続は、なかなかややこしい問題を抱えている。 Wi-Fi 6Eのときもそうだったが、Wi-Fiの規格の切り替え時期は、ほぼ混乱する。これは、法令上の課題と、技術的な課題、運用上の課題がまじりあって、複雑化してしまうのが原因だ。とにかく組み合わせが多すぎて、わかりにくい。 もちろん、事前にしっかり確認するのが筆者の仕事だが、今回、320MHz幅対応に関しては「同番での認証」が可能なのではないかという事前の情報があり、それを信じるに足る過去の取材から得た情報もあった。筆者としてはこの同番認証に期待して、先行してレビューすべく、いちはやくPCを購入したのだが、フタを開けたら認証番号が変わっており、結果、失態につながったわけだ。 ただ、今回の失態によって得られた経験は貴重で、それを読者に伝えられる意義もあると思っている。今後も失敗を恐れず(もちろん、同じ失敗を繰り返さないよう確認は行うが)、いち早く、Wi-Fi関連の製品を検証していきたいと思う。 読者の方々においては、新しい規格が登場した場合、しばらく様子を見るのが確実だ。もちろんないように気を付けるが、筆者がやらかして謝罪するのを待ってから、検討を始めても遅くないかもしれない。
INTERNET Watch,清水 理史
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