2024年12月17日火曜日

絹100%の人工血管、量産技術を開発 福井経編興業。絹が生体組織に置き換わり、最終的には本物の血管が形成されるため、血栓が引っかかりにくいのも特長。

https://www.nikkei.com/article/DGXNASJB20029_Q2A120C1LB0000/

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ニット生地製造大手の福井経編興業(福井市、野坂鉄郎社長)は、100%絹製の人工血管を量産する技術を開発した。絹の血管は細くても内部に血栓ができにくいのが長所。これまで化学繊維製では難しかった小口径の人工血管の実用化に向けた道が開ける。今後は分岐した形状の血管を編む技術を確立し、臨床試験などを経て製品化する方針だ。

東京農工大の朝倉哲郎教授らのグループと共同で開発した製法は、絹糸をダブルラッセルと呼ばれる立体編み方式を用い、縫い目なしに筒状に編む。動物性たんぱく質で表面処理することで、血液が漏れ出すのを防ぐ。長さ30センチメートルを超える血管も量産を可能とした。

絹から血管を作る技術は、難しいとされてきた絹の編み物を使った衣料品用生地の製造技術の確立に取り組んできた中で、開発につながった。天然繊維である絹糸は、ポリエステルなどの化学繊維と異なり伸縮性が低い。織機には使えても、編み機では高い張力がかかり、切れてしまうという問題があったが、「特殊な加工を施すことで編めるようになった」(高木義秀専務)。

人工血管に絹糸を使う利点は、生体組織との親和性が高く、時間の経過とともに分解されること。動物実験では時間の経過とともに、絹が生体組織に置き換わることを確認した。そのため、一定期間ごとに血管を新しいものに取り換える必要もない。現在、人工血管の材料として主流のポリエステルなどの化学繊維は体内で分解されず、いつまでも残ってしまう。

絹が生体組織に置き換わり、最終的には本物の血管が形成されるため、血栓が引っかかりにくいのも特長だ。同社によると化学繊維は血栓が詰まりやすかったという。これにより、従来難しいとされてきた直径6ミリメートル以下の小口径の人工血管の利用が可能になる。すでに直径1ミリメートルの血管の製造にも成功している。

同社では今後3~4年をかけて、Y字型に分岐した血管などの開発を進める計画。国内外の大手医療機器メーカーにOEM(相手先ブランドによる生産)供給や技術供与によるライセンス契約を想定しており、医療関連事業を収益源に育てる。

福井経編興業は1944年設立。婦人衣料のほか、カーシート向けの生地も生産している。国内の編み機の1割強を保有し、生産量は国内全体の約2割を占める。最近は伸縮性の高いスポーツ衣料にも注力している。2011年3月期の売上高は約48億円。

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