USB4を利用して20GbpsでPC同士を直結

 最近のPCに搭載されているUSB4ポート(またはThunderbolt 4ポート)を利用すると、USB4ケーブルを利用して2台のPCをつなぐだけで簡単にネットワーク接続を確立できる。大量のデータを転送する必要する場合など、既存のネットワークに負荷をかけることなく、しかも20Gbpsの超高速でデータを転送できるのがメリットだ。

充電と周辺機器接続だけじゃないUSB4ポート

 Wi-Fi 7検証目的で筆者が購入したPCもそうだったが、最近のPCにはUSB4ポート(またはThunderbolt 4ポート)が搭載されていることが珍しくなくなってきた。

USB4ポート(写真はメーカー公式にはThunderbolt 4ポート)。充電と周辺機器接続だけでなく、ネットワーク接続にも利用できる

 USBは、バージョン表記やThunderboltとの関係もあって、規格が本当に分かりにくく、正直、筆者も規格を正確に把握しきれていない。詳しく知りたい方は、僚誌PC Watchの山口真弘氏の記事を参照してほしい。

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▼PC Watchの記事
USBさっぱり分からんの“戦犯”。「Gen表記」がよく分かる解説
ThunderboltはUSB Type-Cと一体何が違う?最新規格で違いをチェックしてみた

 今回は、そういったややこしい話は置いておいて、とりあえず2台のPCにUSB4ポート(またはThunderbolt 4ポート)があったら「直結してみようぜ」という話になる。

PC同士を直結してネットワーク通信ができる

 と、いうのも、Windowsは「USB4NET」(Ethernet over USB4ドメイン間プロトコル)に標準で対応しており、ハードウェアがUSB4に対応していれば、2台のPCをケーブルでつなぐだけで、簡単にネットワーク接続を確立できるようになっている。

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▼マイクロソフトによる解説記事
USB4のドメイン間接続(Microsoft Learn Challenge)

 現状、PCに搭載されているネットワーク機能は、RJ45でつなぐ有線LANで1~10Gbps、無線で2402~5764Mbps(Wi-Fi 7 320MHz)対応が一般的となる。

 これに対して、USB4の速度は、モードによって異なるが最大20Gbpsまたは40Gbpsとなっており、一般的な20Gbpsでつないだとしても、10Gbpsの有線LAN比で2倍、1Gbpsの有線LAN比なら20倍の速度を実現できる。

WindowsはUSB4NETをサポートしているため、ケーブル1本で2台のPCを接続できる

 しかも、USB4の方が手間もコストもかからない。USB4NETは、PC同士を直接つなぐための方式となるため、従来の10Gbps(RJ45)のようなネットワークアダプターやスイッチなどの機器を購入する必要がない。

 シンプルにUSB4対応のケーブル(対応する速度に注意)が1本あれば、PC同士のピアネットワークを構築できる。

つないでみる

 というわけで、実際にUSB4NETで2台のPCを直結してみた。利用したのは以下の環境だ。PC1、PC2とも、公式にはThunderbolt 4対応と記載されているが、WindowsのUSB4NETはThunderbolt 3との互換性もある。

  • PC1:MSI Prestige-16-AI-Studio(Core Ultra 7 155H/32GB/1TB NVMe)
  • PC2:ASUS Zenbook S 14(Core Ultra 5 226V/16GB/512GB NVMe)
  • ケーブル:Ocetea USB4 ケーブル 240W 40Gbps(2047円で購入)
今回購入したケーブル。実売で2047円
40Gbps対応を選択

 USB4は、ポートやケーブルの対応状況によって速度が変わるため、ケーブルにもこだわった方がいいようだが、今回は2000円を目安に安い製品を購入した。実は、有名メーカー製の高価なケーブルも仕入れたのだが、今回のテスト環境では、いずれのケーブルでも最大20Gbpsでの接続となった。おそらくPC側の対応が20Gbpsまでと考えられる。個人的には40Gbps接続を試してみたかったのだが、あらためて機材を調達した際に再挑戦するようにしたい。

 使い方は簡単で、本当にケーブルでつなぐだけでいい。PC1のUSB4ポート(USB Type-C)にケーブルを接続し、ケーブルの反対側のコネクタを、PC2のUSB4ポートにつなぐ。これで準備完了だ。

シンプルにPC同士をケーブルでつなぐだけでOK

 これで、自動的にWindowsのデバイスマネージャーに「USB4(TM)P2P Network Adapter」が追加され、ネットワーク接続が確立される。

 標準ではIPv6で接続されるので、リンクローカルIPv6アドレスを利用するか、コンピューター名で相手先のPCを指定することでアクセス可能だ。もちろん、ネットワークのプロパティでIPv4アドレスを手動で指定すれば、IPv4でも利用できる。

自動的にネットワークアダプターが追加される
ネットワーク接続が確立される。IPv6で接続される
IPv6アドレスまたはコンピューター名でアクセス可能

 注意が必要なのはファイアウォールだ。標準では、Windowsセキュリティの機能によって通信が遮断されるので、必要に応じてファイアウォールの設定を変更する必要がある。

 また、ファイル共有をする場合は、片方のPCでフォルダーを共有しておく必要がある。主に自分のPCで転送するはずなので、共有フォルダーがあるPCのアカウントを使ってアクセスすれば簡単にファイルの参照やコピーができる。

ファイアウォールの設定変更が必要。今回は、検証目的なので、ファイル転送するときだけオフにした
フォルダーを共有。自分のPCであれば、所有者のアカウントでアクセスすればOK

iPerf3で18Gbps、ファイル転送で2GB/sを実現

 転送速度は爆速だ。

 以下は、直結した2台のPC間でiPerf3を実行した結果となる。上り18.7Gbps、下り18.3Gbpsと見たこともない速度で通信できる。10Gbpsの有線LAN(RJ45)の場合、8~9Gbpsほどなので、見事に2倍の速度で通信できている。

PC1→PC2 iPref3テスト
通信方向USB4NET
上り18.7Gbps
下り18.3Gbps

 続いて、ファイルコピーの速度を計測してみた。こちらは、ストレージの速度が影響するが、以下のように50GBのファイルをわずか25秒で転送できる。1Gbpsの有線(RJ45)だと、7分49秒もかかるので、まさに雲泥の違いと言っていい。

PC1→PC2ファイルコピー
通信手段所要時間
USB4NET(20Gbps)25秒
有線LAN(1Gbps)469秒
USB4接続時の様子
1Gbps有線LAN接続時の様子

PC買い替えどきのファイル移行に

 というわけで、USB4NETを試してみた。USB4対応のPCが必要なものの、ケーブル1本だけとコストが安く、20Gbpsと速度も高いため、用途によっては便利な方法という印象だ。

 映像やAI関連のファイルなど、大容量のファイルをPC間で転送するなら、LAN経由よりもUSB経由の方が速いし、既存のネットワーク(特に無線)に負荷をかけずに済むのでメリットが大きい。

 課題は、ファイル共有の設定やファイアウォール設定の手間が必要になるのと、使用後もファイアウォールの設定を変更したり、共有を無効にしたりと、セキュリティ対策を忘れずにしておく必要がある点だろう。

 今回は検証目的のため一時的にファイアウォールを無効にしたが、そのままにすると外部のネットワークに接続した際に不正アクセスの危険があるため、忘れずに有効化したり、不要なポートを閉じたりしておく必要がある。この点にさえ注意すれば、お手軽なファイル転送方法として重宝しそうだ。

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清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 11」ほか多数の著書がある。