現在の集積回路は、おもに樹脂の半導体パッケージ基板の上に作られている。しかし、AIの急速な発展にともない集積回路もさらなる高度化が求められる半導体メーカーは、より高密度な回路を構築できる新しい基板素材と、そこに回路を形成するための技術の開発にしのぎを削っている。なかでももっとも注目されているのがガラス基板だ。シューズメーカーのアキレスは、ガラス基板上に高精細な回路を「めっき」で作るという画期的な手法を開発した。 アキレスはプラスチック加工技術を基盤としたコア技術の研究開発を行っているが、導電化処理もそのひとつ。同社の特許技術である「ポリピロールめっき法」は、同社独自開発のナノ分散ポリピロール液を塗布した場所にだけのみめっきができ、さらにさまざまな材料に密着性の高いめっき処理ができるというもの。これを応用して、スマートフォン用の薄くて軽量な電磁波シールドなどが作られている。 それを用いてガラス基板に微細な配線をめっきできるようにしたのが「高密着めっき形成技術」だ。ガラス基板へのめっきは困難とされてきたが、これならガラス基板の微細な配線がめっきで実現する。しかも、この方法なら低温、常圧での処理が可能で、薬品を使うエッチングと違い環境負荷も低いということだ。 樹脂基板の表面は意外に凹凸があり、今よりもっと密度の高い配線が難しい。また熱膨張という問題もある。ガラス基板なら、表面が非常に滑らかで、熱の影響も受けにくい。また、大規模集積回路は円形のシリコンウエハーの上に複数が印刷され、切り出してパッケージに収められるのだが、これをガラス基板にすることにも大きなメリットがある。シリコンウエハーが円形なのは結晶構造によるものだ。そこから四角い回路を切り出すのだから周囲に無駄が出る。それに対して、四角いガラス基板を使えば無駄がない。 ガラス基板自体にもまだ課題がある。インテルは、本格的なガラス基板半導体の量産化を2020年代後半を目標にしている。そのとき、世の中がどう変わるのか楽しみだ。
Forbes JAPAN Web-News
- 15
- 12
- 4
0 コメント:
コメントを投稿