2024年2月7日水曜日

日大とNTT、電子の光応答を超音波制御 量子メモリーに。2024年2月7日 5:00

https://www.nikkei.com/prime/tech-foresight/article/DGXZQOUC315BR0R30C24A1000000?n_cid=NPMTF000P_20240207_a20

https://www.nikkei.com/prime/tech-foresight/article/DGXZQOUC315BR0R30C24A1000000?n_cid=NPMTF000P_20240207_a20


エルビウムを添加した結晶基板上に超音波を生成する素子(左)を作製した。量子光メモリー(右)への応用が見込める(出所:日本大学、NTT)
日本大学とNTTの研究グループは、数ミリ秒の長い寿命を持つ光励起電子と、ギガヘルツ(GHz)超音波のハイブリッド状態を生成することに成功した。通信波長の光に共鳴する希土類元素を添加した超音波素子を作製して実現した。今後の省エネルギー量子光メモリー素子への応用に活用が期待できる。
本研究では、エルビウム(Er)を添加した結晶基板上に超音波の一種である表面弾性波を生成する素子を作製することで、約2GHzの振動ひずみを結晶表面に集中させ、Erの光共鳴周波数を高速変調することに成功した。この変調速度は励起電子の寿命よりも速く、電子が共鳴線幅を上回る周波数で変調されるため、通信波長帯に共鳴する電子とGHz超音波のハイブリッド状態が生み出される。これにより、コヒーレンスの高いEr励起電子の光応答を超音波で低電圧制御できる。実験結果と超音波の深さ方向のひずみ強度分布を取り入れた解析により、結晶の最表面付近ではハイブリッドの程度が十分大きくなり、超音波を用いて励起電子の数や位相を操作できる可能性が示された。本研究の技術ポイントは、①同位体純化されたErを添加した超音波素子の作製、②レーザー光周波数の高精度安定化、の2つがある。①の同位体純化したErの利用により、共鳴線幅を500MHzにまで狭線化し、2GHzの超音波を作用させて電子と超音波のハイブリッド状態を実現した。②では、光周波数コムを利用したレーザー光の周波数安定化機構を開発し、従来に比べ3桁ほど周波数精度の高い実験を実現できた。
今後は、最表面のみにErを添加した材料の利用や、最表面のErのみ選択的に光アクセスできるような構造を導入し、ハイブリッド状態の均一性向上に取り組む。均一性に加えて制御性を高めることで、通信波長帯で動作する省エネルギー量子光メモリー素子の実現と、長距離量子通信への応用を目指す。
<研究概要>
●キーワード
量子光メモリー素子、ハイブリッド状態、超音波、光励起電子、表面弾性波、エルビウム、Er、光周波数コム、量子通信
●関連研究者
石澤淳、俵毅彦
●関連研究機関
日本大学
●関連企業
NTT
●関連論文掲載先
Physical Review Letters
●関連論文タイトル
Observation of Acoustically Induced Dressed States of Rare-Earth Ions
●関連論文URL
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.132.036904
●詳細情報
https://www.ce.nihon-u.ac.jp/nue/wp-content/uploads/2024/01/240119_pressrelease_ja.pdf
(ニューズフロント 小久保重信)

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