2024年7月12日金曜日

半導体テラヘルツ発振器の周波数揺らぎを減らす

https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2406/25/news062.html#l_tm_240625titech04.jpg


 京都大学の研究グループは2024年7月、大阪大学やロームと共同で、共鳴トンネルダイオードを搭載した半導体テラヘルツ発振器から放射されるテラヘルツ電磁波の振動波形(位相)を計測し、制御することに成功したと発表した。テラヘルツ波の位相情報を利用した超高速で大容量の無線通信やスマートセンシング技術の実現につながるとみられる。

 Beyond 5Gや6Gと呼ばれる次世代無線通信技術では、超高速で大容量通信を実現するため、テラヘルツ周波数帯の活用が検討されている。これに向けた半導体テラヘルツ発振器の開発も進む。ただ、現行の計測技術では、テラヘルツ波の位相を計測し、制御することが難しかったという。研究グループは光技術を応用するとともに、半導体テラヘルツ発振器の周波数揺らぎを減らすことで、従来の課題を解決した。

 具体的には、注入同期現象を利用することで共鳴トンネルダイオードの発振周波数を固定し、周波数の揺らぎを減らした。これによって、放射されるテラヘルツ電磁波の振動電場波形を計測することに成功した。計測した結果から、テラヘルツ電磁波は注入同期に用いた信号とは逆の位相で振動していることが分かった。この振る舞いは、幅広い同期現象を普遍的に記述する非線形振動子の同期理論で説明できるという。

 さらに、注入同期に用いる信号の位相を操作すれば、半導体テラヘルツ発振器から放射されるテラヘルツ波の位相を制御できることが分かった。


半導体テラヘルツ発振器から放射されたテラヘルツ電磁波の振動電場波形[クリックで拡大] 出所:京都大学

 今回の研究は、京都大学大学院理学研究科の有川敬助教(研究当時、現在は兵庫県立大学大学院工学研究科准教授)、田中耕一郎教授(兼高等研究院物質-細胞統合システム拠点連携主任研究者)らの研究グループと、大阪大学大学院基礎工学研究科の西上直毅氏(研究当時は修士課程学生)、冨士田誠之准教授、永妻忠夫教授(研究当時、現在は大阪大学産業科学研究所特任教授)、ロームらが共同で行った。

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