2014年11月11日がん細胞にウイルスを感染させて破壊するウイルス療法に、手術、放射線、抗がん剤と並ぶ、新たながん治療の柱となる期待が高まっている。遺伝子組み換えによる治療用ウイルス製剤を開発した脳神経外科医は、臨床の傍ら、新技術に対する規制によるひときわ厳しい薬事承認への道を切り開き、医師主導治験の開始にこぎつけた。聞き手 : 本多昭彦=本誌編集長構成 : 塚﨑朝子=ジャーナリスト
――がんのウイルス療法とは、どんな経緯で考えられたものですか。 実は1950~60年代には臨床試験が行われています。がん細胞に感染させたウイルスがよく増えることは昔から知られていて、がん患者がウイルス感染すると、がんが良くなることも観察されていました。ただ、ウイルスを大量に使うとウイルスの病気が出てしまうし、少ないとがんが治りませんでした。当時は、ウイルスの作用を制御する方法がなかったのです。放射線や抗がん剤はそれ自体に発がん性があるのに治療に使えるのは、その作用を制御できるようになったからです。それが遺伝子組み換え技術により、個々の遺伝子の作用を利用して、ウイルスを人為的に制御できるようになりました。 その初めての報告が、91年に「Science」誌に発表された、脳外科医であるマルトゥーザ医師の論文です。私は東大に入学直後、素人考えで、ウイルスでがんを治せないかと漠然と考えていました。それが極めて科学的になされていたことに触発され、米国・ジョージタウン大学のマルトゥーザ先生の元に留学しました。
2014年11月11日
がん細胞にウイルスを感染させて破壊するウイルス療法に、手術、放射線、抗がん剤と並ぶ、新たながん治療の柱となる期待が高まっている。遺伝子組み換えによる治療用ウイルス製剤を開発した脳神経外科医は、臨床の傍ら、新技術に対する規制によるひときわ厳しい薬事承認への道を切り開き、医師主導治験の開始にこぎつけた。聞き手 : 本多昭彦=本誌編集長構成 : 塚﨑朝子=ジャーナリスト
――がんのウイルス療法とは、どんな経緯で考えられたものですか。
実は1950~60年代には臨床試験が行われています。がん細胞に感染させたウイルスがよく増えることは昔から知られていて、がん患者がウイルス感染すると、がんが良くなることも観察されていました。ただ、ウイルスを大量に使うとウイルスの病気が出てしまうし、少ないとがんが治りませんでした。当時は、ウイルスの作用を制御する方法がなかったのです。放射線や抗がん剤はそれ自体に発がん性があるのに治療に使えるのは、その作用を制御できるようになったからです。それが遺伝子組み換え技術により、個々の遺伝子の作用を利用して、ウイルスを人為的に制御できるようになりました。
その初めての報告が、91年に「Science」誌に発表された、脳外科医であるマルトゥーザ医師の論文です。私は東大に入学直後、素人考えで、ウイルスでがんを治せないかと漠然と考えていました。それが極めて科学的になされていたことに触発され、米国・ジョージタウン大学のマルトゥーザ先生の元に留学しました。
全摘できない脳の腫瘍を治したい
――医師になられ脳神経外科をご専門にされた理由は。 子どもの頃から死ぬことがとても怖かったので、生命に関する勉強をしたかった。生物の究極であるヒトの研究が最も良さそうだと、医者になりました。生きていることとは、意識がすべてです。意識を扱う科目のうち、脳そのものを手で扱える脳外科を選び、脳腫瘍を専門に据えました。研究テーマは、一貫して治療法の開発です。 根治できるがんとは、基本的に臓器とともに摘出できるがんですが、脳は全摘するわけにいきません。渡米する前にドイツに2年間留学し、髄膜腫という脳腫瘍の手術によらない治療法を研究していました。脳外科の最大のチャレンジは、悪性脳腫瘍の治療です。
――そこでウイルス療法に可能性を。 ジョージタウン大学に留学直前の95年、がん治療の第二世代のヘルペスウイルスが出来上がり、私がチームに加わって、それを臨床に進めるための橋渡しに取り組みました。動物実験で遺伝子組み換えウイルスの効果とそのメカニズム、安全性を検証して、米国食品医薬品局(FDA)に申請するデータを作成しました。 98年中に臨床応用が始まり、その後いくつかの臨床試験が行われました。アメリカの臨床試験の大半は、国の予算でなく、バイオベンチャーが投資家からお金を募って行われます。我々の試験もベンチャーが進めていましたが、そこが別の製薬企業に買収されて試験は頓挫してしまいました。ジョージタウン大学は、特許権をすべて企業に渡してしまったために試験は続行不能になり、ベンチャーに関わることやライセンスを手放すことのリスクについて随分勉強させられました。さらに実用性の高い開発品を目指して研究を続け、第三世代のウイルスを開発しました。当時はハーバード大学マサチューセッツ総合病院にいましたが、特許については、きちんと契約を交わしました。
――2003年に帰国して、東大脳神経外科に戻り、日本に拠点を移されました。 アメリカの永住権が取れる直前だったのですが、アメリカで脳外科の臨床をやるためには、研修をやり直さなくてはなりませんでした。日本に帰れば、自分が開発したウイルスで自ら治療ができると思ったからです。
――医師になられ脳神経外科をご専門にされた理由は。
子どもの頃から死ぬことがとても怖かったので、生命に関する勉強をしたかった。生物の究極であるヒトの研究が最も良さそうだと、医者になりました。生きていることとは、意識がすべてです。意識を扱う科目のうち、脳そのものを手で扱える脳外科を選び、脳腫瘍を専門に据えました。研究テーマは、一貫して治療法の開発です。
根治できるがんとは、基本的に臓器とともに摘出できるがんですが、脳は全摘するわけにいきません。渡米する前にドイツに2年間留学し、髄膜腫という脳腫瘍の手術によらない治療法を研究していました。脳外科の最大のチャレンジは、悪性脳腫瘍の治療です。
――そこでウイルス療法に可能性を。
ジョージタウン大学に留学直前の95年、がん治療の第二世代のヘルペスウイルスが出来上がり、私がチームに加わって、それを臨床に進めるための橋渡しに取り組みました。動物実験で遺伝子組み換えウイルスの効果とそのメカニズム、安全性を検証して、米国食品医薬品局(FDA)に申請するデータを作成しました。
98年中に臨床応用が始まり、その後いくつかの臨床試験が行われました。アメリカの臨床試験の大半は、国の予算でなく、バイオベンチャーが投資家からお金を募って行われます。我々の試験もベンチャーが進めていましたが、そこが別の製薬企業に買収されて試験は頓挫してしまいました。ジョージタウン大学は、特許権をすべて企業に渡してしまったために試験は続行不能になり、ベンチャーに関わることやライセンスを手放すことのリスクについて随分勉強させられました。さらに実用性の高い開発品を目指して研究を続け、第三世代のウイルスを開発しました。当時はハーバード大学マサチューセッツ総合病院にいましたが、特許については、きちんと契約を交わしました。
――2003年に帰国して、東大脳神経外科に戻り、日本に拠点を移されました。
アメリカの永住権が取れる直前だったのですが、アメリカで脳外科の臨床をやるためには、研修をやり直さなくてはなりませんでした。日本に帰れば、自分が開発したウイルスで自ら治療ができると思ったからです。
安全性・増殖能が高くワクチン効果も
――第三世代のがん治療用単純ヘルペスウイルス1型「G47Δ」の特徴は。 第一世代は、ヘルペスウイルスの遺伝子を一つだけ改変して、がん細胞で増えるようにしたものです。一つの遺伝子を改変すると、その前の世代の野生型に比べ安全性は1000倍になりますが、ある程度毒性が残ります。野生型が毒性を現わす量の1000倍量のウイルスを投与すれば、毒性が出て正常組織も傷害されます。 第二世代は、改変をもう一つ加えることでさらに1000倍安全になり、野生型の100万倍の量のウイルスを使うのでなければ、毒性は問題になりません。ただし、がん細胞で増える力も弱くなってしまったので、それを克服するために第三世代を作りました。第三世代は、さらに一つ遺伝子を改変していて、理論上は、正常細胞に対する安全性がさらに1000倍高まる一方で、がん細胞でよく増えるようにしました。 第二世代の開発中、ウイルスががん細胞に感染して増える過程で抗がん免疫が引き起こされることも見つけました。今では常識ですが、当時は大発見でした。ウイルスは細胞に感染すると、免疫に見つからないようにするメカニズムが働きますが、遺伝子を改変したことで免疫に見つかりやすくなりました。ウイルスは最初、ワッと増えますが、感染して破壊されたがん細胞はウイルスとともに免疫に排除されます。 つまり、ウイルス療法は非常に効率のいいがんワクチン療法にもなり得るのです。ウイルスに感染していないがん細胞もどんどん免疫に攻撃されるので、治療効果を高められます。第三世代は第二世代に比べて抗がん免疫を引き起こす力も強く、一石二鳥です。
――第三世代のがん治療用単純ヘルペスウイルス1型「G47Δ」の特徴は。
第一世代は、ヘルペスウイルスの遺伝子を一つだけ改変して、がん細胞で増えるようにしたものです。一つの遺伝子を改変すると、その前の世代の野生型に比べ安全性は1000倍になりますが、ある程度毒性が残ります。野生型が毒性を現わす量の1000倍量のウイルスを投与すれば、毒性が出て正常組織も傷害されます。
第二世代は、改変をもう一つ加えることでさらに1000倍安全になり、野生型の100万倍の量のウイルスを使うのでなければ、毒性は問題になりません。ただし、がん細胞で増える力も弱くなってしまったので、それを克服するために第三世代を作りました。第三世代は、さらに一つ遺伝子を改変していて、理論上は、正常細胞に対する安全性がさらに1000倍高まる一方で、がん細胞でよく増えるようにしました。
第二世代の開発中、ウイルスががん細胞に感染して増える過程で抗がん免疫が引き起こされることも見つけました。今では常識ですが、当時は大発見でした。ウイルスは細胞に感染すると、免疫に見つからないようにするメカニズムが働きますが、遺伝子を改変したことで免疫に見つかりやすくなりました。ウイルスは最初、ワッと増えますが、感染して破壊されたがん細胞はウイルスとともに免疫に排除されます。
つまり、ウイルス療法は非常に効率のいいがんワクチン療法にもなり得るのです。ウイルスに感染していないがん細胞もどんどん免疫に攻撃されるので、治療効果を高められます。第三世代は第二世代に比べて抗がん免疫を引き起こす力も強く、一石二鳥です。
前例のないチャレンジを認めさせる
ウイルス療法の臨床研究
ウイルス療法は、増殖するウイルスを使ってがんを治す画期的な治療法です。本臨床研究で用いるG47Δウイルスは、がん細胞だけを殺して正常細胞は傷つけないように工夫されています。つまり、ウイルス遺伝子を組み換えることによってウイルスの作用をコントロールし、がん細胞内だけでよく増えるようにすることで直接的にがん細胞を破壊します。加えて、G47Δウイルスが感染したがん細胞は免疫を担う細胞(リンパ球)に発見されやすくもなっており、より強力な抗腫瘍免疫効果(がんワクチン効果)が期待できます。
ウイルス療法は、増殖するウイルスを使ってがんを治す画期的な治療法です。本臨床研究で用いるG47Δウイルスは、がん細胞だけを殺して正常細胞は傷つけないように工夫されています。つまり、ウイルス遺伝子を組み換えることによってウイルスの作用をコントロールし、がん細胞内だけでよく増えるようにすることで直接的にがん細胞を破壊します。加えて、G47Δウイルスが感染したがん細胞は免疫を担う細胞(リンパ球)に発見されやすくもなっており、より強力な抗腫瘍免疫効果(がんワクチン効果)が期待できます。
G47Δについて
G47Δは、第三世代遺伝子組換え単純ヘルペスI型ウイルスで、米国で臨床試験に用いられた第二世代遺伝子組換え単純ヘルペスウイルスI型のG207を改良したものです。単純ヘルペスI型ウイルスのゲノムの大きさは、約152kbで、80個以上のウイルス遺伝子を持っています。G207が二つのウイルス遺伝子を操作したものであるのに対し、G47Δは3つの遺伝子を操作した三重変異を有するヘルペスウイルスであり、G207よりもさらに安全性と治療効果を高めてあります。単純ヘルペスウイルスI型がヘルペス脳炎を起こす遺伝子はすでに解明されており、G47Δはその遺伝子をあらかじめ除去してありますから正常組織を傷害することはありません。すなわち、G47Δは正常細胞では増えず、感染した腫瘍細胞内だけで増えるため腫瘍細胞だけが破壊されます。万一G47Δが増え過ぎたとしてもヘルペスウイルスに対する抗ウイルス薬がありますから、いつでも治療を中断することができ、安全性に優れています。ヒト膠芽腫細胞の場合 ウイルス投与前 ウイルス投与後(36時間経過)
G47Δは、第三世代遺伝子組換え単純ヘルペスI型ウイルスで、米国で臨床試験に用いられた第二世代遺伝子組換え単純ヘルペスウイルスI型のG207を改良したものです。単純ヘルペスI型ウイルスのゲノムの大きさは、約152kbで、80個以上のウイルス遺伝子を持っています。G207が二つのウイルス遺伝子を操作したものであるのに対し、G47Δは3つの遺伝子を操作した三重変異を有するヘルペスウイルスであり、G207よりもさらに安全性と治療効果を高めてあります。単純ヘルペスウイルスI型がヘルペス脳炎を起こす遺伝子はすでに解明されており、G47Δはその遺伝子をあらかじめ除去してありますから正常組織を傷害することはありません。すなわち、G47Δは正常細胞では増えず、感染した腫瘍細胞内だけで増えるため腫瘍細胞だけが破壊されます。万一G47Δが増え過ぎたとしてもヘルペスウイルスに対する抗ウイルス薬がありますから、いつでも治療を中断することができ、安全性に優れています。
ヒト膠芽腫細胞の場合 | ||
ウイルス投与前 | ウイルス投与後(36時間経過) |
単純ヘルペスウイルスI型(HSV-1)について
通常の単純ヘルペスI型ウイルスは、皮膚や粘膜に接触することで感染し、そこで増えて細胞を壊して細胞外に移動し、隣の細胞へ感染を繰り返していきます。そして、口唇に水疱ができたり、ごくまれに脳炎(ヘルペス脳炎)を起こしたりします。また、単純ヘルペスI型ウイルスは増殖しながら神経に沿っても移動していき、感覚神経節(しばしば三叉神経節)に入り込んでその中でじっとしています(潜伏感染)。この潜伏感染の状態ではウイルスは増えもせず、他のヒトへ感染することもありませんが、免疫力が低下するなどすると、この潜伏感染の状態からウイルスが再活性化して口唇に水疱がまたできたりします。
通常の単純ヘルペスI型ウイルスは、皮膚や粘膜に接触することで感染し、そこで増えて細胞を壊して細胞外に移動し、隣の細胞へ感染を繰り返していきます。そして、口唇に水疱ができたり、ごくまれに脳炎(ヘルペス脳炎)を起こしたりします。また、単純ヘルペスI型ウイルスは増殖しながら神経に沿っても移動していき、感覚神経節(しばしば三叉神経節)に入り込んでその中でじっとしています(潜伏感染)。この潜伏感染の状態ではウイルスは増えもせず、他のヒトへ感染することもありませんが、免疫力が低下するなどすると、この潜伏感染の状態からウイルスが再活性化して口唇に水疱がまたできたりします。
現在進行中の臨床研究
- 進行性膠芽腫患者に対する増殖型遺伝子組換え単純ヘルペスウイルスG47Δを用いたウイルス療法の臨床研究
- 進行性嗅神経芽細胞腫患者に対する増殖型遺伝子組換え単純ヘルペスウイルスG47Δを用いたウイルス療法の臨床研究
- ホルモン治療抵抗性再燃前立腺癌患者に対する増殖型遺伝子組換え単純ヘルペスウイルスG47Δを用いたウイルス療法の臨床研究
【本臨床研究に関する問い合わせ先】東京大学医科学研究所附属病院 医療安全管理部・臨床試験管理推進室トランスレーショナルリサーチ・コーディネーターTEL 03-5449-5462 (平日9:00〜17:00)メールアドレス dctsm@ims.u-tokyo.ac.jp
----------関連情報:引用元:
http://www.denka.co.jp/news/pdf/20150512_G47.pdf#search='g47%CE%94+2015'
平成27年5月12日 電気化学工業株式会社 デンカ生研株式会社 がん治療ウイルス製剤「G47Δ」実用生産の開発受託に関するお知らせ 電気化学工業株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:𠮷髙紳介、以下「デンカ」)の 主要グループ会社であるデンカ生研株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:前田 哲郎、 以下「デンカ生研」)では、この度、藤堂 とうどう 具 とも 紀 き 氏(東京大学医科学研究所教授)より委託を受け、 同氏が開発中のがん治療ウイルス製剤※1G47Δ※2の実用化に向けた大量生産法の開発に、着手 することとなりましたのでお知らせいたします。 G47Δは遺伝子改変ヘルペスウイルス(HSV-1)を用いた新しいコンセプトのがん治療薬で、 本年1月より膠芽腫 こ う が し ゅ (悪性脳腫瘍の一種) ※3を対象とした臨床試験のフェーズ2が医師主導治験※4 として開始されております。今後、G47Δの実用化には大規模な製造方法や試験方法の確立※5 が必要となりますが、G47Δはウイルスそのものを製剤化するため、特別な技術と経験が必要と なってまいります。デンカ生研は、長年に渡りワクチンとウイルス検査試薬の開発と製造を行って おり、G47Δの実用化に向けて必要となる技術と経験を有していることから、この度の開発受託 に至ったものです。 G47Δは、がんのウイルス療法という新しい分野を開拓する画期的な治療薬として期待されて おり、デンカグループは一日も早い実用化を通じて医療の発展と人類の健康の増進に寄与していき たいと考えております。 以上 [本発表に関するお問い合わせ先] 電気化学工業株式会社 CSR・広報室 TEL:03-5290-5511 注記 ※1:がん治療ウイルス製剤 ウイルスが感染した細胞を最終的には破壊する事に着目し、ウイルスを用いてがんを治療す るという新しいコンセプトのがん治療薬。遺伝子改変技術によりがん細胞では増殖するが正 常細胞では増殖しないように工夫されたウイルスを用いてがん細胞を死滅させる。 現在、各国で研究開発が進められており、海外においては米国の製薬会社が臨床試験のフェ ーズ3を終了し近く製品化される見通し。 ※2:G47Δ(ジーよんじゅうななデルタ) 東京大学医科学研究所 藤堂具紀教授が開発した第3世代型遺伝子組み換え単純ヘルペスウ イルスⅠ型(HSV-1)を用いたがん治療ウイルス。2009年より東京大学で膠芽腫を対 象とした臨床研究開始、2013年からは前立腺癌、嗅神経芽細胞腫のそれぞれに対する臨 床研究も開始した。2015年1月より膠芽腫を対象とした医師主導治験(フェーズ2)開始。 ※3:膠芽腫 悪性脳腫瘍の一種で現在の治療法では平均余命が診断から1年程度で治癒は極めて困難と されており、手術後に再発した場合は有効な治療手段がほとんどない。G47Δは従来の治 療とは異なる機序での治療手段として期待されている。 ※4:医師主導治験 治療薬が国の製造販売承認を受けるために必要となる臨床データを収集する「治験」は製薬 メーカーによる申請を中心に考えられた仕組みだが、2003年の薬事法改正時に医師が自 ら申請して実施することが可能となった。G47Δは非臨床の段階から現在のフェーズ2開 始まで全て医師主導で開発が進められている。 ※5:大規模な製造方法や試験方法の確立 主に化学的なプロセスを経て作られる一般的な医薬品と異なり、ワクチンや抗体医薬といっ たいわゆる生物学的製剤は、薬剤を作る過程において細胞やウイルス・細菌の培養、精製と いったプロセスが必要となり、適切な製造には設備だけでなく経験が非常に重要となる。 また、中間製品や最終製品の検査についても一般的な医薬品とは異なる試験が必要となり、 適切な試験方法の策定や試験の実施にもノウハウが必要となってくる。G47Δの実用化に 向けた大規模生産技術の開発には、生物学的製剤の生産にかかわるノウハウが必要であり、 ワクチンとウイルス検査試薬の製造において豊富なノウハウを持つデンカ生研が大量生産 法の確立を受託することとなった。
- 進行性膠芽腫患者に対する増殖型遺伝子組換え単純ヘルペスウイルスG47Δを用いたウイルス療法の臨床研究
- 進行性嗅神経芽細胞腫患者に対する増殖型遺伝子組換え単純ヘルペスウイルスG47Δを用いたウイルス療法の臨床研究
- ホルモン治療抵抗性再燃前立腺癌患者に対する増殖型遺伝子組換え単純ヘルペスウイルスG47Δを用いたウイルス療法の臨床研究
【本臨床研究に関する問い合わせ先】
東京大学医科学研究所附属病院
医療安全管理部・臨床試験管理推進室
トランスレーショナルリサーチ・コーディネーター
TEL 03-5449-5462 (平日9:00〜17:00)
メールアドレス dctsm@ims.u-tokyo.ac.jp
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関連情報:
引用元:http://www.denka.co.jp/news/pdf/20150512_G47.pdf#search='g47%CE%94+2015'
平成27年5月12日 電気化学工業株式会社 デンカ生研株式会社 がん治療ウイルス製剤「G47Δ」実用生産の開発受託に関するお知らせ 電気化学工業株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:𠮷髙紳介、以下「デンカ」)の 主要グループ会社であるデンカ生研株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:前田 哲郎、 以下「デンカ生研」)では、この度、藤堂 とうどう 具 とも 紀 き 氏(東京大学医科学研究所教授)より委託を受け、 同氏が開発中のがん治療ウイルス製剤※1G47Δ※2の実用化に向けた大量生産法の開発に、着手 することとなりましたのでお知らせいたします。 G47Δは遺伝子改変ヘルペスウイルス(HSV-1)を用いた新しいコンセプトのがん治療薬で、 本年1月より膠芽腫 こ う が し ゅ (悪性脳腫瘍の一種) ※3を対象とした臨床試験のフェーズ2が医師主導治験※4 として開始されております。今後、G47Δの実用化には大規模な製造方法や試験方法の確立※5 が必要となりますが、G47Δはウイルスそのものを製剤化するため、特別な技術と経験が必要と なってまいります。デンカ生研は、長年に渡りワクチンとウイルス検査試薬の開発と製造を行って おり、G47Δの実用化に向けて必要となる技術と経験を有していることから、この度の開発受託 に至ったものです。 G47Δは、がんのウイルス療法という新しい分野を開拓する画期的な治療薬として期待されて おり、デンカグループは一日も早い実用化を通じて医療の発展と人類の健康の増進に寄与していき たいと考えております。 以上 [本発表に関するお問い合わせ先] 電気化学工業株式会社 CSR・広報室 TEL:03-5290-5511 注記 ※1:がん治療ウイルス製剤 ウイルスが感染した細胞を最終的には破壊する事に着目し、ウイルスを用いてがんを治療す るという新しいコンセプトのがん治療薬。遺伝子改変技術によりがん細胞では増殖するが正 常細胞では増殖しないように工夫されたウイルスを用いてがん細胞を死滅させる。 現在、各国で研究開発が進められており、海外においては米国の製薬会社が臨床試験のフェ ーズ3を終了し近く製品化される見通し。 ※2:G47Δ(ジーよんじゅうななデルタ) 東京大学医科学研究所 藤堂具紀教授が開発した第3世代型遺伝子組み換え単純ヘルペスウ イルスⅠ型(HSV-1)を用いたがん治療ウイルス。2009年より東京大学で膠芽腫を対 象とした臨床研究開始、2013年からは前立腺癌、嗅神経芽細胞腫のそれぞれに対する臨 床研究も開始した。2015年1月より膠芽腫を対象とした医師主導治験(フェーズ2)開始。 ※3:膠芽腫 悪性脳腫瘍の一種で現在の治療法では平均余命が診断から1年程度で治癒は極めて困難と されており、手術後に再発した場合は有効な治療手段がほとんどない。G47Δは従来の治 療とは異なる機序での治療手段として期待されている。 ※4:医師主導治験 治療薬が国の製造販売承認を受けるために必要となる臨床データを収集する「治験」は製薬 メーカーによる申請を中心に考えられた仕組みだが、2003年の薬事法改正時に医師が自 ら申請して実施することが可能となった。G47Δは非臨床の段階から現在のフェーズ2開 始まで全て医師主導で開発が進められている。 ※5:大規模な製造方法や試験方法の確立 主に化学的なプロセスを経て作られる一般的な医薬品と異なり、ワクチンや抗体医薬といっ たいわゆる生物学的製剤は、薬剤を作る過程において細胞やウイルス・細菌の培養、精製と いったプロセスが必要となり、適切な製造には設備だけでなく経験が非常に重要となる。 また、中間製品や最終製品の検査についても一般的な医薬品とは異なる試験が必要となり、 適切な試験方法の策定や試験の実施にもノウハウが必要となってくる。G47Δの実用化に 向けた大規模生産技術の開発には、生物学的製剤の生産にかかわるノウハウが必要であり、 ワクチンとウイルス検査試薬の製造において豊富なノウハウを持つデンカ生研が大量生産 法の確立を受託することとなった。
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