微細化による性能向上に限界が見えてきた半導体。今後の性能向上のカギになる技術として注目されるのが「チップレット集積」と呼ばれる技術だ。その分野で日本の知られざる中堅企業が急速に存在感を高めている。

 チップレットとは、従来、1つの半導体チップ内で処理作業をするコアや、記録素子のメモリーなどの構成要素を別々に製造したもの。この複数チップを電気的に接続し、一体の巨大チップのように動くようにするのがチップレット集積だ。

 従来の半導体は、処理能力の向上のために微細化を極限まで進めた結果、製造過程での歩留まりが低下し、コストも大きく膨らんできた。チップレットは、コアやメモリーなどを個片化することで、そうした課題を改善できる。さらに、一律に集積度を高める従来のチップと異なり、高い処理性能が必要なコアでは微細化を進め、そこまで高い性能が求められないメモリーなどの周辺回路は従来の集積度にとどめるといったことも可能になるため、コストも下げられるという。

独自のメッキ技術力に高い評価

上村工業は「バンプ」と呼ばれる微細な電極を高精度で成形する技術に強みを持つ(写真=上村工業提供)
上村工業は「バンプ」と呼ばれる微細な電極を高精度で成形する技術に強みを持つ(写真=上村工業提供)

 「やはり底堅いなぁ」。6月28日、表面処理用化学品・機械メーカー、上村工業の株価が1万1110円で終わると、市場の一部にこんな声が漏れた。4月19日に9540円の年初来安値を付けて以後、低迷していた株価に変化の兆しが見えたためだ。

 この日、会社側は100株としている投資単位の引き下げを検討すると発表したものの、確約したわけでもなかった。一般の知名度も決して高くない同社が、それでもひそかな注目を集めるのは、チップレット集積など半導体の機能向上に欠かせない技術を持つ企業とみられているからだ。

 上村工業は、チップレットやそれを乗せる基板上に「バンプと呼ばれる突起状の微細電極を高い精度で形成する技術を持っている」(橋本滋雄専務)。先端半導体の処理能力を引き上げるには、バンプ間の距離をできる限り狭める必要もあるが、高い形成技術がそこで生きるという。

 同社は技術力を買われて、国内の基板や材料、装置メーカーが共同で次世代半導体製造技術開発に取り組むコンソーシアム「JOINT(ジョイント)2」にも参加する。コンソーシアムを主導するレゾナックの阿部秀則・エレクトロニクス事業本部開発センター長は、「バンプを形成するためのメッキ技術は、(業界内で見ても)極めて高い」と評価する。

 チップレット集積に関連した露光技術で高い評価を受けているのが、非上場企業のオーク製作所(東京都町田市)。チップレット集積を実現するためには、中間基板の上にチップを並列に置く「2.5D実装」や、縦方向に積層する「3D実装」と呼ばれる技術が柱になる。

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