普段何気なく食べているアジの開きやサンマの煮つけ。和食には、ほかにもおなじみの魚料理が多いが、そんな魚の油部分に「脂肪燃焼細胞」を増加させる効果があることが京都大学の研究グループによって実証された。この機会に伝統の魚食を見直すと同時に、改めて魚食の魅力に触れてみたい。
■「魚油」の脂肪燃焼細胞の増加が実証!~京都大研究チーム
保健指導リソースガイドによれば、京都大学農学研究科の研究グループが、2015年12月17日に、科学誌にある興味深い実証結果を発表した。それは、魚の油に含まれる「EPA(エイコサペンタエン酸)」と「DHA(ドコサヘキサエン酸)」と呼ばれる成分が、脂肪細胞を褐色化させることで、体脂肪の消費を促進するという効果があるという内容だ。
脂肪細胞は、白色、ベージュ、褐色と三種類に分けられるという。中でも、褐色脂肪細胞は体脂肪分解機能が高いため、脂肪燃焼が活発に行われている状態。つまり、魚油のEPAとDHAは、脂肪燃焼効果を高めるはたらきがあることが明らかになったのだ。
■今こそ見直すべき?魚食がメインの「和食」
魚に脂肪燃焼を活発にさせる効果があると知れば、思わず仕事帰りにスーパーや商店街の魚屋に立ち寄って魚を買い求めたくなるという方もいるのでないだろうか。刺身、焼き魚、魚の煮つけ、鍋など、魚メニューといえば、やはり「和食」をイメージしてしまう。
そもそも、和食は米を主食とし、魚をおかずとするのが基本だ。これは農林水産省によれば、東南アジアや東アジアなどの高温多湿な地域の特色だという。つまり、稲作をするのに好条件な気候と海に囲まれた環境が、自ずと米と魚の文化を生み出したのである。
その代表的な料理が「寿司」。寿司は、魚をごはんに合わせて、圧力を加えることによって発酵が促され、熟成された旨味を引き出す料理。同時に、発酵による長期保存も可能だ。そして、魚の保存食としては、ほかにも塩分と乾燥によって旨味を引き出す「干物」、小魚を加工する「練り製品」なども忘れてはならない。
また、和食が「肉より魚」の傾向があるのは、意外な背景があったようだ。日本では、昔の時代から、米の豊穣のために、災いが起きぬよう、肉を犠牲にする風習があったのだ。例えば、古代の天武天皇の時代(645年)には、肉食禁止令が出された。これは、『魏志』倭人伝の「災いがあった際は肉を断つ」という伝統を引いているといわれている。つまり、米の豊穣のために、肉を食べない思想が古くから根付いていたことも、日本で「肉食より魚食」文化が発達した理由と考えられている。
■今、改めて見直したい「魚食」。人気の魚と魚の料理メニューとは?
日本では古くから発達してきた米と魚文化。しかし1960年(昭和35年)ころから洋風化が急速に進み、米消費の減少と肉・乳製品の需要の増加が目立っていった。そして1988年(昭和63年)には、肉・乳製品の供給量が、魚介類をついに追い抜いたのだという。
このような中、魚食は一時期減っていったように見えるものの、「和食」が2013年にユネスコ無形文化遺産に登録されてから、世界的に和食が注目されるようになったこともあり、改めて魚食への回帰ムードが起きているようだ。
健康・ダイエット志向の人にとっても、魚油の効果はぜひ得たいものである。そこで、日本の魚食の魅力を改めて見直すために、魚食がどのように親しまれているかを紹介しよう。
●「魚好き」がお気に入りなのはアジ、サバ、ブリ、ハマチ
「ととけん」こと、日本さかな検定が2015年に行った調査によれば、同検定受検者がお気に入りの魚介のランキング1位はアジ、2位はサバ、3位はブリ・ハマチ、4位はイカ、5位はマグロという結果に。一方、一般生活者については、1位はマグロ、2位はサケ、3位はエビ、4位はカニ、5位はサンマという結果になっており、魚好きの目利きがうかがえる。(参照元「TBS総合嗜好調査2015」)
●「魚好き」が好む料理はシンプル!
また魚の味わい方をよく知っている魚好きたちがお気に入りの魚介料理は、1位まぐろ刺身、2位さんま塩焼き、3位いか刺身、4位かつおたたき、5位あじなめろう、とシンプルな料理が続いた。ちなみに「なめろう」とは、もともとは漁師料理で、魚を下ろして味噌とネギやショウガなどの香味野菜などをたたき合わせて作る料理だ。サンマやカツオなどのなめろうもある。
いずれにしても、魚本来の味が楽しめる、味付けも至極シンプルな料理が、魚食を存分に楽しむポイントといえそうだ。
また、魚食は、その料理の幅も非常に広いことも、魅力の一つといえる。ぜひ焼き魚や煮つけ、刺身、寿司など、和食回帰の意味でも、脂肪燃焼効果の意味でも、日々の生活の中に取り入れてみたい。
取材・文/石原亜香利
※記事内のデータ等については取材時のものです。
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