Munenori Taniguchi
カリフォルニア州のソーク研究所など国際的な研究チームが、ヒトの幹細胞を注入した豚の胚を増殖させたキメラ胚を作り出すことに成功したと学術誌Cellに発表しました。この研究では、豚の胚のなかにヒトの細胞でできた心臓や肝臓、さらに脳神経細胞(ニューロン)などの原型となる組織が形成されることが確認されています。
この発表の前日には、ラット胚のなかにマウスのiPS細胞や ES細胞を注入してマウスの膵臓を持つラットを生み出し、その膵臓組織を糖尿病のマウスに移植する実験に成功したとする東京大学・米スタンフォード大学の研究報告が発表されたばかり。実験ではマウスの拒否反応も数日でおさまり、最終的に糖尿病を治癒させることにも成功しています。
そしてこの東大の研究チームもまた、冒頭の研究例同様、豚の胚にヒトのiPS細胞を注入して移植用臓器を作る再生医療の実現を目指すとしています。ただ日本ではヒトの幹細胞を胚に注入する実験が禁止されているため、今後は米国での研究を検討中とのこと。
ヒトと他の動物のキメラを作るとなると、やはり倫理的な問題がつきまといます。下手をすれば、映画『ザ・フライ』のようにグロテスクかつ凶暴ながら一部に人間性を備える悲しい生物を生み出すことも、もしかするとありえるかもしれません(「ザ・フライ」はテレポーテーションの研究でしたが)。しかし、研究者らは家畜とヒトのキメラ胚研究によって、人体に移植可能な臓器の "生産"を可能にしたいと考えています。
New findings highlight promise of chimeric organisms for science and medicine
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もし研究者らの試みが成功して実用化されるなら、肝臓や膵臓、腎臓といった臓器の移植はいまよりももっと簡単になり、患者が順番待ちのために長期間苦しまずに済むことが期待されます。また臓器売買の問題なども解消されるかもしれません。
ちなみにキメラとは、複数の異なる動物が合体したような架空の生物のこと。ファンタジー系小説やRPGに造詣の深い方、夢枕獏の「キマイラ・吼」シリーズ読者にはいまさら説明不要の単語ではあります。
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