これで本当に過労死が防げるのか-。政府が進める残業時間の上限規制について、経団連と連合のトップは「月最大百時間」で合意した。上限規制の法定化を評価する声もあるが、過労死遺族からは「もっと短くして」「納得できない」と不満が続出している。 (福田真悟) 「過労死遺族の一人として強く反対します」 過労自殺した電通の新入社員高橋まつりさん=当時(24)=の母幸美さん(54)は、報道各社へのコメントに怒りを込めた。 月当たりの上限の基準となる百時間の残業は、脳や心臓疾患の労災認定の目安となる「過労死ライン」の数字。「このような長時間労働は有害なことを政府は知っているにもかかわらず、なぜ、法律で認めようとするのでしょうか。納得できません」と問題視する。 「死にたい」「一日二時間の睡眠時間はレベルが高すぎる」。悲痛なツイートを残し、命を落としたまつりさん。「娘のように仕事が原因で亡くなった多くの人たちがいます。死んでからでは取り返しがつかないのです」と訴えた。 「全国過労死を考える家族の会」代表の寺西笑子(えみこ)さん(68)も「過労死を招く長時間労働にお墨付きを与える内容」と憤る。 約二十年前、夫を過労自殺で亡くしてから、ほかの遺族らと過労死をなくす活動に取り組んできた。その結果、二〇一四年に「過労死等防止対策推進法」が施行。過労死対策への国の責任が盛り込まれた。 「過労死をなくそうと言っているのに、過労死ラインに近い数字を認めるのは矛盾している」と批判。「最長の残業時間を百時間より大幅に短くする企業も出てきている。流れが逆行しかねない」と懸念する。 日本労働弁護団の棗(なつめ)一郎幹事長は「罰則付きの上限規制ができるのは賛成」と評価する一方、「労働者の健康が守れるか心配」と述べる。 長時間労働を巡る過去の裁判では、月八十~九十五時間の残業でも「使用者が安全配慮義務に違反している」と判断された例がある。 「百時間近い残業は、あくまでも例外的でなくてはならない。使用者の安全配慮義務を免除するものではないと法律に明記する必要がある」と指摘した。 ◆高橋まつりさん母・コメント全文 月100時間残業を認めることに、強く反対します 高橋 幸美 2017年3月13日 政府の働き方改革として、一か月100時間、2か月平均80時間残業を上限とする案が出されていますが、私は、過労死遺族の一人として強く反対します。 このような長時間労働は健康にきわめて有害なことを、政府や厚生労働省も知っているにもかかわらず、なぜ、法律で認めようとするのでしょうか。全く納得できません。 月100時間働けば経済成長すると思っているとしたら、大きな間違いです。人間は、コンピューターでもロボットでもマシーンでもありません。長時間働くと、疲れて能率も悪くなり、健康をそこない、ついには命まで奪われるのです。 人間のいのちと健康にかかわるルールに、このような特例が認められていいはずがありません。 繁忙期であれば、命を落としてもよいのでしょうか。 命を落としたら、お金を出せばよいとでもいうのでしょうか。 娘のように仕事が原因で亡くなった多くの人たちがいます。死んでからでは取り返しがつかないのです。 どうか、よろしくお願いいたします。 ※原文通り
2017年3月14日火曜日
残業「100時間」なぜ認めるの 過労死遺族ら反発
19:26
No comments
0 コメント:
コメントを投稿