https://www.suumocounter.jp/chumon/report/jitsurei/entry/2021/02/19/103000
シェアさせて頂きました。
音楽やマンガなど、圧倒的な熱量を注ぐ「好きなもの」をおもちの方に、こだわりの住まいをご紹介いただく本企画「趣味と家」。第5回目は家の中に専用の“映画館”をつくるため、シアタールームのある一軒家を建てたごっさんさんに寄稿いただきました。どうしてもふくらみがちなコストを、いかに抑えつつ理想の映画空間をつくるか。並々ならぬリサーチと工夫で手に入れたシアタールームを紹介します。
こんにちは。妻と2人の子どもと岐阜に暮らす、ごっさんと申します。
私は2018年にシアタールームのある新築一戸建てを建てました。昔から映画が大好きだったので「家を建てるならシアタールーム」を絶対条件として、最後まで貫き通しました。
しかし、決して予算が潤沢だったわけではありません。「限られた予算でも妥協はせず、いかに快適に暮らせるか」。これが家を建てるにあたり、まず念頭に置いたことでした。
また「家」は家族で過ごす空間ですから、「自分だけが楽しめる場所」であってはいけません。日々の生活をストレス無く快適に過ごすための動線や工夫も精一杯考え、詰め込みました。
さまざまな工夫を凝らしてようやく実現した「シアタールームのある家」ですが、結果として私だけでなく、家族みんながそれぞれの楽しみを満喫できる空間に仕上げることができました。今回はそんなわが家を紹介したいと思います。
【目次】
- 誰にも気兼ねなく、映画に没頭できる空間が欲しかった
- 低コストで満足いく空間を実現。わが家のシアタールーム環境
- 映画だけじゃない!家族それぞれのシアタールームの楽しみ方
- シアタールーム以外もこだわりを詰め込んだ、自慢のわが家
- 住宅ローンは正直つらい。だからこそやりたいことは詰め込む
誰にも気兼ねなく、映画に没頭できる空間が欲しかった
小さいころ、母に連れられて映画館で観た『インディ・ジョーンズ』。金曜ロードショーを録画して何度も繰り返し観た『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。最初はホラー映画だと思っていた『シザーハンズ』。私は子どものころから映画が大好きでした。
結婚してからも、家族が寝静まった後、細々とした音量で映画鑑賞を楽しんでいました。しかし、当時住んでいたのは普通の賃貸アパート。寝ている家族はもちろんのこと、隣や階下の住人も気にしながらの鑑賞は、あまり満足のいくものではありませんでした。
だからこそ、妻に「そろそろが家が欲しい」と相談されたとき真っ先に浮かんだのが「シアタールーム」でした。
「建売でもいいんじゃない?」という妻に「高額な買い物だから、どうせなら注文住宅で自分たちの希望を取り入れた家にしたい。僕の条件はシアタールームです!」と訴え、マイホームプロジェクトがスタートしました。
大好きな映画を大画面・大音量で気兼ねなく楽しめるというのは、とても贅沢なことです。しかし贅沢ゆえに建築コストは増加しますし、プロジェクターやスピーカーといった機材の初期投資も必要です。
私と同じようにシアタールームを希望しながらも、コストカットのために泣く泣く諦める人は多いと思います。
でも考えようによっては、これから生活していく家の中に「専用の映画館」ができるんです。
多分私は年を重ねても映画を好きなままだと思いますし、今後、子どもたちも映画を楽しむようになっていくでしょう。映画鑑賞だけでなく、まわりを気にせず歌ったり演奏することもできます。そう考えると、すごくコスパが良くありませんか?
また、一度家を建ててしまうと、後から防音室にするのは施工面でも費用面でも難しくなります。
シアタールームといえども所詮は「部屋」の一つ。今は仕事や子育てでゆっくり映画を見る時間があまり取れないという場合も、防音環境や空配管(のちのち配線できるよう、あらかじめ壁面に配管しておくこと)だけでも施工しておけば、他の用途に使用してもよいのです。
いろんな悩みを解決しながら、ついに手に入れたシアタールーム。今ではリビングでTVを見ている妻にも、寝ている子どもにも、もちろんご近所さんにも気を使う必要なく、思う存分映画に没頭できています。
防音された空間で映画を大迫力で楽しめるのは、本当に最高の体験です。
低コストで満足いく空間を実現。わが家のシアタールーム環境
では、どのようにしてシアタールームを導入したのか。具体的な施工内容などを紹介します。
ホームシアターの環境をどこに整えるかといえば、リビングを検討される方が多いかと思います。ちなみにわが家もリビングの壁内に空配管を施工して、5.1ch(5台のスピーカーとサブウーファー1台を配置して立体的な音響効果を得る構成)の環境を造りました。
しかしリビングは家族が自然と集う場所なので、シアター専用にするわけにはいきません。また、防音や遮光といった点でも、ダイニングやキッチンと接して空間が広く、日当たりの良さを重視しがちなリビングでは難があるのです。
迷った末、わが家はリビングとは別に専用ルームをつくりました。
防音の関係上、本当は1階に配したかったのですが、生活動線を重視して1階にLDKや浴室、脱衣・洗濯室をまとめて配置したため、2階に。
低音が多少漏れても問題ない玄関や浴室の階上に配置し、隣はWICにするなど、防音も意識した間取りにしました。
またコスト削減のため、防音の考え方や仕組みについてはネットで調べ、DAIKENの防音プラン、吉野石膏の遮音システムのページなどを参考にしました。また、東京出張の際にDAIKENのショールームを訪れ、防音室はどの程度防音できるものなのかも体験しました。
「音を外に漏らさない事」を最優先に、最終的に以下のようにプランニングしました。
・吸音性を高めるため天井、壁、床下にロックウール(繊維系の断熱材)を施工
・遮音性を高めるため天井、壁は石膏ボードを455mmずらして二重にし、目地部分はコーキング処理
・二重にした石膏ボードの間には遮音シートを施工
・音は隙間から漏れるので、隙間を無くすために壁、天井、床の入隅(面と面が交わる角)にも遮音シートを施工
・一つだけある窓は内窓(二重窓)に
・クロスは迷光(不必要な光の反射や散乱)対策で光を反射しづらい色に
・ドルビーアトモス(ドルビーラボラトリーズ社が開発したサラウンド記録再生方式)のスピーカー配置ガイドを元に、各スピーカーまでは空配管を施工
・天井スピーカーやプロジェクター設置のための下地を施工
プロジェクターの取り付けやケーブルの配線なども自分で行いました。下地や空配管さえ施工してもらっていれば意外と簡単ですよ。
あわせて、そろえた機材関係は以下のとおり。
・スクリーン……シアターハウス タペストリータイプ 16:9(ワイド)ブラックマスク プロジェクタースクリーン
・プロジェクター……ViewSonic PX727−4K
・AVアンプ……DENON AVR-X6300H
・Blu-rayプレーヤー……SONY UBP-X700
ホームシアターの肝はスピーカーです。できるだけ試聴し、予算と相談して決めました。
わが家のシアタールームは7.1.4chで構成。視聴位置を7台のスピーカーと1台のサブウーファーで囲み、さらに高さ方向の音を追加するため、天井に4台のスピーカーを設置しています。
最近増えてきた、ドルビーアトモスなどのオブジェクト・オーディオ(音の移動表現を明確にするための技術)と呼ばれるフォーマットに対応させた事で、前後左右の平面的な音場が立体的になり、まさに「音が降って」きます。
あわせて音のつながりを良くするため、スピーカーはできるだけ同シリーズ(わが家の場合はONKYOのD-509シリーズ)で統一しています。
ただサラウンドバックスピーカーは、結婚前から使用していたVictor SX-55を使用しています。40年前ほど前に製造されていたものですが、今でもいい音を出してくれています。
ちなみに、防音性能を少しでも高くするため、リアスピーカーはラブリコ(柱がつくれる突っ張り棒タイプのDIYツール)に設置して、壁に穴を開けないようにしました。
現在はブックシェルフ型のコンパクトなスピーカーを使用していますが、今後、スピーカースタンドを使用したり、トールボーイ型に変更したりする可能性もあるため、どんな「選択肢」にも対応できるように、という思いもあります。
スクリーンは電動巻き上げタイプではなく、掛け軸タイプを採用しました。専用室なのでスクリーンをいちいちしまう必要はないですからね。サイズは100インチ。
プロジェクターは迷いましたが、4Kに対応しているものを選びました。まだまだコンテンツは少なめですが、4K映像はやはり圧巻です。
また、シアタールームにエアコンを設置する場合、スクリーンが揺れないように取り付け位置に気をつけたり、エアコンの音が気になったりといった問題がでてきますが、わが家の場合は家庭用エアコン1台で全館空調を行うYUCACOシステムを採用して解決しました。
吸気や排気は防音ダクトを介して行っているので、音漏れの心配もありません。
シアタールームありきで導入したわけではなりませんが、どの部屋も夏は涼しく冬は暖かくて快適。普段生活する上でエアコンが視界に入ってこないので空間がすっきりしますし、掃除するエアコンは1台ですみます。
1畳程度の空調室が必要になる、100万円程度の初期費用がかかるというデメリットがありますが、特別電気代が高いわけでもないですし、個人的にはメリットのほうが大きいと感じています。
シアタールームのプランニングや環境構築は、ホームシアターインストーラーに依頼することもできますが、プロへの依頼となるのでもちろん高額。お任せできるほど経験や実績があるハウスメーカーや工務店も少ないです。
ちなみにわが家の場合は、部屋を防音室にするために約65万円、機材等をそろえるのに約45万円と、シアタールームを実現するために110万円ほどかかりました。
とにかく情報を集め、自分でプランを考えましたが「本当に防音ができているのか」は完成するまでずっと不安で、家の引き渡し時には防音性能の確認のため、部屋の中で妻や子どもたちに思いっきり騒いでもらいました。
想定どおりというか想像以上というか、防音がちゃんと機能している事を確認できた時、うれしさよりも安堵感のほうが強かったです。
映画だけじゃない!家族それぞれのシアタールームの楽しみ方
最近は子どもたちが(なぜか)『ゴジラ』や『ガメラ』シリーズにハマっており、昭和臭漂う映画館のようになっているわが家のシアタールーム。
そんな中、 子どもの誕生日プレゼントとして購入した「Nintendo Switch」の導入により、映画だけでなくゲームを楽しめる空間にもなりました。
100インチの大画面と7.1.4chのスピーカーという環境なので、ゲームも大迫力で楽しめます。自分の子どものころと比べると、ものすごく贅沢な環境でゲームしてんなっと思います。
子どもにとっても、やはり大画面でやるゲームは迫力が違うようで、兄弟仲良く(たまにケンカもしながら)大はしゃぎでゲームに興じています。
ちなみに、ドアを閉めてしまうと何をしてるのか全くわからず、こちらの声も届かないため、子どもだけでシアタールームを使用する際はドアを閉めないルールにしています。
そして最近は妻も、シアタールームで音楽を楽しんでいます。最近のコンサートやライブのBlu-rayは従来の5.1chサラウンドではなく、オブジェクト・オーディオフォーマットで収録されているものもあるので、より一層臨場感のある音と映像が楽しめます。
新型コロナウイルスの影響により、最近はライブの生配信も増えてたため、もともとあまりシアタールームに興味のなかった妻も、好きなアーティストのライブ情報をチェックしたりと、楽しみが増えたようです。
週末には、お酒を片手につまみを噛りながら、ダラダラとライブ映像を観ながら一緒におうち時間を過ごしています。
私も音楽を聞くのが好きなので、ノートPCとAVアンプを接続してPCオーディオを楽しんだりも。防音は完璧なのでちょっとしたカラオケルームにもなりますよ。
シアタールーム以外もこだわりを詰め込んだ、自慢のわが家
シアタールームの紹介はこれくらいにして、最後にもう少しだけ、こだわりぬいた自慢のわが家を紹介させてください。
まず、私が家を建てるにあたり、シアタールームと同じくらいこだわったのが「生活動線を意識した間取り」でした。家族それぞれが朝起きてから寝るまでの動線を何度もシミュレーションし、暮らしやすい工夫を散りばめました。
中でも1階のLDKから階段へ続く廊下兼ウォークスルークロゼット(WTC)はとても使いやすく、満足しています。ここには着替えや子どものランドセル、教科書などを集約しています。
2階にもウォークインクロゼットがありますが、季節外の衣類を収納しているだけなので、普段の洗濯後の片付けは1階のWTCと、下着や部屋着を置いてある脱衣室だけで完結し、家事の効率がアップしました。
子どもたちは朝、WTCで着替え、脱いだパジャマは脱衣室へ。帰宅後はWTCに設置した洗面台で手を洗い、カバンを片付けるという一連の流れが簡潔に行えます。
オープン収納なので来客の際にはサッと隠せるよう、DIYでロールスクリーンも取り付けました。
こうした動線を考えた間取りもそうですが、生活していく上でストレスになるであろうことも極力排除しました。例えば2階にもトイレがあれば便利ではありますが、そのぶん掃除の手間も増えてしまうため、わが家はあえて1階に1つだけとしました。
収納も多くつくりすぎるとモノが増えて管理が難しくなるので、必要な箇所に必要なスペースだけ。ただし必要になったらラブリコなどを使ってDIYで棚を追加できるよう、下地だけは施工してあります。ずっと同じ家に暮らすことになるので、状況によってカスタマイズしやすいように、ということも重視しました。
洗濯物を干す以外に使用することがほぼないのに掃除の手間はかかる、ベランダやバルコニーもつくりませんでした。
その代わり、1階の洋室に室内物干しワイヤーをDIYし、2階の吹き抜けに面したスペースにはtoolboxのアイアンハンガーパイプを取り付け、室内干しができるようにしました。
こういった「ストレス排除のためにあえてつくらないもの」は、コスト削減や空間の確保にもつながります。シアタールームという贅沢な空間をつくりつつも、ほかの部分でさまざまな工夫を凝らし、家族みんなが住みやすい身の丈に合ったシンプルな家を目指して家づくりに取り組みました。
住宅ローンは正直つらい。だからこそやりたいことは詰め込む
元々賃貸でも十分だと思っていたところに「長男が小学校に進学する前に持ち家が欲しい」という妻の一言からスタートした家づくり。
家、しかも土地もとなると住宅ローンを組まないと買えない、非常に高価な買い物です。しかし高価な買い物だからこそ、後悔のないよう、シアタールームが欲しかったのです。
貧乏性な私は、限られた予算の中でやりたいことを可能な限り妥協せずに詰め込もうと、それはもう必死でした。
間取りや照明、シアタールームの構造や機材なんかを考えたり想像したりするのは大変ながらもとっても楽しいもの。しかし、正直に言えば家づくりは楽しいだけではありません。
家づくりにかける家族とのモチベーションとの違い、度重なる打ち合わせ、施主の意図を伝えるための断面図などの資料づくり、確認していたにもかかわらず急に湧いてくる追加費用、コスト削減のための真夏の単独人工芝DIY……。苦しいことが多かったのも事実です。
ですが最後まで妥協しなかったからこそ、住み始めて2年経った今も不満や不自由なく過ごせています。
家は3回建てないと満足しないと誰かが言ったらしいですが、精一杯考え、悩んで取り組むことで後悔は確実に減らせるな、とこの家に暮らしていると思います。
今現在家を建てられている方や検討されている方も、頑張った分結果がついてくるので、頑張ってくださいね。応援しています!
著者:ごっさん (id:Pashamaru)
映画が大好きで、マイホームをきっかけにシアタールームをつくることができました。昔は恋愛ものも観ていたのに、最近はゾンビものやB級映画ばかり観ています。家づくりを通して、間取りや設備、照明などのインテリアに興味を持ちました。ブログではわが家の家づくりについて、のんびりと書いています。
ブログ:住み良いお家と程良い暮らし
編集:はてな編集部
「趣味と家」アーカイブはこちら
0 コメント:
コメントを投稿