2021.05.03 WiFiルーター
【LANケーブル】CAT5 / CAT6 / CAT7 / CAT8でネットの速度は変わる?【性能比較】
- 「ネットが遅いならCAT7以上のLANケーブルがおすすめ」
- 「PS5でゲームならCAT8でしょ」
結論からいうと、↑のような売り文句はほぼウソです。本記事では、LANケーブルをCAT7やCAT8に変えても、ネットの速度に与える影響は「ほぼない」について、実際に検証して解説します。
LANケーブルのカテゴリと性能を知ろう
LANケーブル カテゴリ別スペック表 | |||
---|---|---|---|
カテゴリ | 速度(最大) | ケーブル | コネクタ |
CAT5 | 100 Mbps | UTP | RJ-45 |
CAT5e | 1 Gbps | UTP | RJ-45 |
CAT6 | 1 Gbps | UTP | RJ-45 |
CAT6A | 10 Gbps | UTP またはSTP | RJ-45 |
CAT7 | 10 Gbps | STP | GG-45 またはTERA |
CAT8 | 40 Gbps | STP | RJ-45 |
2021年時点、Amazonで購入できるLANケーブルのカテゴリ別スペックをまとめました。
使用できるケーブルの長さや、伝送周波数帯域など。上記以外に細かいスペックがカテゴリ別に決められていますが、話を分かりやすくするため要点のみをスペック表に入れています。
基本的にLANケーブルのカテゴリが高いほど、高性能です。インターネットが速くなる、テレワークにおすすめなどとアピールされる傾向が強い「CAT7」だと最大10 Gbpsの通信速度に対応します。
注意点:蛇口が高性能でも元栓がダメなら意味なし
カテゴリが高いほど、対応している最大通信速度が高いため、「CAT7以上のLANケーブルならインターネットが速い」と思われがちです。
残念ながら、どれだけLANケーブル(= 蛇口)を高性能にしても、肝心のインターネット回線(= 元栓)の性能が遅いならまったく意味がありません。
日本のインターネット回線は大部分がベストエフォート型です。たとえば最大1 Gbpsをアピールしていても、事業者は1 Gbpsが出るように努力するだけで、実際には100 Mbps程度の場合もあります。
だから大部分のユーザーにとって、CAT7やCAT8はまったく意味がありません。性能にこだわるなら「CAT6A」まで、コスパ重視なら「CAT5e」で十分です。
カテゴリ別に通信速度をベンチマーク
使用したLANケーブルとテスト方法
- ELECOM Cat5準拠(1.5m)
- ELECOM Cat5e(1.5m)
- ELECOM CAT6準拠(2.0m)
- ELECOM CAT6A対応(2.0m)
- ELECOM CAT7準拠(2.0m)
- ELECOM CAT8(2.0m)
長さ1.5 ~ 2.0メートル、6種類のカテゴリのLANケーブルを用意しました。メーカーはエレコムで揃えています。
テストPC | 赤色(←) | 黒色(→) |
---|---|---|
CPU | Ryzen 7 5800X 8コア16スレッド | Core i9 11900K 8コア16スレッド |
メモリ | DDR4-3200 16GB x2 | |
LANカード | Intel X520-DA1 最大10 Gbps対応 | Intel X550-T2 最大10 Gbps対応 |
OS | Windows 10 Pro 20H2 |
LANケーブルの性能をテストする方法は、2台のパソコンをLANケーブルで接続し、フリーソフト「iperf 3.1.3(Windows 10用)」を使って通信速度を測定します。
- Intel X550-T2(最大10 Gbps対応 / 2ポート / RJ-45)
- Intel X520-DA1(最大10 Gbps対応 / 1ポート / SFP+)
なお、LANケーブルの性能が良くてもLANカードの性能が悪いと検証にならないので、2台のパソコンにはそれぞれインテル製の10 Gbps対応LANカードを搭載済み。
iperf 3を使うと、簡単にLANカード間の通信速度をテストできます。
たとえば、最大10 Gbps対応のLANカードを使っているはずが、なぜか性能を出しきれない場合。LANケーブルの性能が悪い可能性がある、と判断できます。
スピードテストが測定しているのは、使っているインターネット回線の性能です。時間帯、周辺地域のNTT回線の契約者数(混雑具合)、トンネル方式かネイティブ方式なのか・・・などなど。
LANケーブル以外の理由で、結果がかんたんに変わってしまいます。
朝9時と夜9時にスピードテストを試した結果が↑こちらです。ぼくが使っているインターネット回線だと、朝のほうが速くて、夜に下り速度が遅くなる傾向が強いです。
時間帯ですらテスト結果に大きく影響するので、LANケーブルの性能をテストするなら、2台のパソコンを使ったテスト方法が圧倒的に正確です。
CAT5の性能:1 Gbpsで認識しない
CAT5のLANケーブルはそもそも「1 Gbpsとして認識されない」です。念のため他のLANポートも試しましたが、100 Mbpsでリンクアップしてしまい、スペック通り100 Mbpsが限界※です。
おそらく「LANケーブルを変えたらインターネットが早くなった」で、一番ありえるのがCAT5のLANケーブルでしょう。
たとえばNTTから借りているONUと、自分の使っているパソコンがCAT5ケーブルでつながっているせいで、100 Mbps以上を出せない可能性は高いです。
スピードテストを時間帯を変えて何度やっても、100 Mbps付近でキレイに止まるなら、ONUやルーターなどでCAT5以下のLANケーブルが使われていないか。確かめてみてください。
※ただし、他社の太いCAT5ケーブルなら問題なく1 Gbpsで通信できた事例もあるので、今回テストに使ったケーブル特有の問題かもしれません。
CAT5eの性能:なぜか10 Gbpsで動作
CAT5eのLANケーブルは最大1 Gbps対応です。実際にテストした結果は平均9.55 Gbit/sでした。
てっきり1 Gbps(1 Gbit/s)前後で止まるかと思いきや、10 Gbps近い通信速度を叩き出しています。数メートルの短距離なら、CAT5eケーブルで十分な性能です。
10メートル以上の長距離は45メートルまでなら動作するらしいですが、おすすめはしません。
CAT6の性能:問題なく10 Gbpsで動作
CAT6のLANケーブルも、CAT5eと同じく最大1 Gbps対応です。実際のテスト結果は平均9.81 Gbit/s、ほぼ10 Gbps近い性能を発揮します。
どうやらLANのカテゴリは、実際にはかなり余裕のある作りになっている可能性が高いですね。スペック上は1 Gbpsといいつつ、テストすると普通に10 Gbps近い性能が出てしまっています。
数メートルの短距離をつなぐだけなら、CAT6ケーブルでまず問題ないでしょう。長距離は55メートルまでなら動作するらしいですが、試してないので20 ~ 30メートルくらいが無難かもしれません。
CAT6Aの性能:スペック通り10 Gbpsで動作
CAT6Aは、CAT6の上位カテゴリとして策定された規格です。スペックで最大10 Gbps対応をアピールし、最大100メートルの長距離に対応します。
テスト結果は平均9.88 Gbit/sです。スペック通り10 Gbps近い性能が出ています。
通信速度的にはCAT5eやCAT6とほとんど変わらない結果ですが、CAT6Aはノイズ耐性が強化されていたり、数十メートルの長距離動作がサポートされています。
LANケーブルを大量に使う、50メートルなど長距離でLANケーブルを引き回すなら、CAT6Aをオススメできます。価格も手頃でコストパフォーマンスも高いです。
CAT7の性能:スペック通り10 Gbpsですが・・・
ようやく問題のCAT7ケーブルです。とりあえずテスト結果は平均9.88 Gbit/sで、CAT6Aとほぼ同じです。
しかし、価格はCAT6Aと比較してざっくり1.5 ~ 3倍に跳ね上がります。加えてさらに厄介な点は、CAT7ケーブルは一般家庭で扱いやすい「UTPケーブル」ではなく、「STPケーブル」です。
ぼくのテスト環境はSTPケーブルに対応していませんが、問題なく動作しました。でも運が良かっただけです。使用環境によっては、STPケーブルが原因でかえって性能を損なうリスクもあります。
「UTP」ならオススメしやすいものの、「STP」を万人向けにおすすめはできません。最大10 Gbpsを余裕で出せるCAT6Aにしてください。
CAT8の性能:40 Gbpsは不明ですが・・・
普通に買えるカテゴリで最上位に位置する「CAT8」は、最大40 Gbps対応の「STPケーブル」です。
テスト結果は平均9.81 Gbit/sで、ほぼ10 Gbps近い性能。つまり、性能テストに使用したLANカード(最大10 Gbps)がボトルネックです。
もちろん、ぼくは40 Gbps対応のLANカードの購入を当初は考えていました。しかし、エレコムのCAT8ケーブルはコネクタがごく普通のRJ-45です。一方40 Gbps対応LANカードはコネクタがQSFPです。
QSFPをSFP+やRJ-45に変換すると10 Gbpsが限界で、40 Gbpsに変換できるコネクタはどうやら販売されていません。つまり、40 Gbpsを出せるかどうか検証する方法自体が存在しません※。
- 40 Gbpsを確かめる方法がない
- 一般家庭で対応しない「STPケーブル」
- CAT6AやCAT7と比較して価格がすごく高い
今のところ、CAT8のLANケーブルはムダに高いオーディオケーブルのような商品です。
※フルーク社のすごく高額なLANケーブルテスターなど、業務用の測定機材なら可能性はあります。
CAT8ケーブルはゴムホースのように硬くて、取り回しも最悪です。買う価値はありません。
LANケーブルのカテゴリ別性能
ここまでのテスト結果をグラフにまとめました。今回使ったLANケーブルでは、CAT5だけが100 Mbpsにとどまり、CAT5e以上のカテゴリはすべて10 Gbps近い性能を発揮します。
普通のネット回線(1.0 ~ 2.0 Gbps回線)を使っている大多数のユーザーにとって、CAT5eで十分な性能です。
まとめ:CAT5e以上ならネットの速度は変わらない
高性能なLANケーブルに交換してインターネットの速度が速くなる可能性は、かなり低いです。
使っているONUやルーターが極端に古くて、付属のLANケーブルがCAT5以下なら、LANケーブルがボトルネックになってネットの速度が頭打ちになる可能性はあります。
しかし、普通はCAT5eのケーブルが付属していて、数メートルの短距離なら1 Gbps程度の性能を出すのはかんたんです。今回のテストだと10 Gbps近くまで出ていて、十分すぎる性能です。
普通のネット回線なら「CAT5e」「CAT6」
契約しているインターネット回線が、ごく普通の「最大1.0 Gbps」またはちょっと背伸びして「最大2.0 Gbps」なら、LANケーブルはCAT5eまたはCAT6で大丈夫です。
今回ベンチマークした「エレコム Cat5e(1.5m)」は平均9.55 Gbps、「エレコム CAT6準拠(2.0m)」では平均9.81 Gbpsもの通信速度を記録してます。1.0 ~ 2.0 Gbps程度ならまったく問題なし。
迷ったら「CAT6A(UTP)」を選べばOK
LANケーブル選びで迷ったら、とりあえず「CAT6A(UTPケーブル)」を選んでおけば間違いなし。
最大10 Gbpsの通信性能、かつ最大100メートルの長距離に対応し、一般家庭で普通に使えるUTPケーブルです。誰にでもおすすめしやすい万能タイプのカテゴリです。
首都圏エリアで提供が始まった「10G回線」も安心して使えます。10G LAN対応の高性能NASもOKです。部屋から部屋へとLANケーブルを引き回しても基本的に問題ありません。価格も手頃です。
CAT6A(UTP)がもっとも万人向けのLANケーブルです。
CAT6Aを買うときの注意点は、ケーブルのタイプです。一般家庭で使えるタイプは「UTP」ですが、困ったことに「STP」も普通にAmazonで販売されています。
「STP」はシールドが付いていてノイズ耐性が高いとアピールされています。しかし、シールドが吸収したノイズを適切に逃がす設備と施工(= 機能用接地)が必要で、普通の建物はそもそも機能用接地が施されていません。
コンセントのアースとは別次元の接地が必要とされるため、家を建て直すところからスタートです。STPに対応するコストは恐ろしく莫大ですので、一般家庭で使うなら迷わず「UTP」にしましょう。
ネットを速くするなら「回線」を見直す
LANケーブルやルーターの買い替えを考えたくなるほど、インターネットが遅くて困っているなら、まずは契約しているネット回線の内容を確認したほうがいいです。
最初に注意点で解説したとおり、「蛇口が高性能でも元栓がダメなら意味がない」です。
- SoftBank 光(公式サイト)
たとえば、ぼくが使っている「SoftBank 光(旧Yahoo BB 光)」では、プラン内容によってインターネットの速度が違います。ファミリー・ライトプランだと何をしても最大100 Mbpsが上限です。
ファミリー・ハイスピードプランでも、PPPoE方式だと最大200 Mbpsに上限で、IPoE方式に切り替えると5倍の最大1 Gbpsに跳ね上がります(※ベストエフォートだから実際に1 Gbpsかどうかは別問題)。
ファミリー・ギガスピードなら、PPPoE方式とIPoE方式どちらでも最大1 Gbps対応です。
回線を乗り換えたり、プロバイダガチャをする前に、とりあえず現状の契約プランに問題ないかチェックしてください。
SoftBank 光がBBIX社と提携して提供している「IPv6 IPoE + IPv4接続方式」は安定して優秀です。
過去3回の引っ越しで検証したところ、PPPoE方式 → IPoE方式への切り替えで夜間のネット速度が高速化しました。地域によって差はあるものの、ぼくの場合は1 Mbpsが500 Mbpsに伸びる劇的な効果です。
2019年頃から固定回線を契約するユーザーが急増している影響で、夜間に500 Mbpsは出ない傾向が強くなりましたが、普通にネットをするだけなら十分。
Steamのように超高速なダウンロードサーバーが相手なら、実測90 MB/s(= 720 Mbps相当)くらいは出ているし、SoftBank 光の「IPv6 IPoE + IPv4接続方式」に不満はありません。
「インターネットが遅い」に対する、コスパの良い対処法はプランの見直しです。特に夜間に遅くなる症状であれば、「IPoE方式(ネイティブ方式)」への切り替えがそこそこ有効です。
以上「【LANケーブル】CAT5 / CAT6 / CAT7 / CAT8でネットの速度は変わるのか?」について、ベンチマークテストと解説でした。
最初にまとめたカテゴリ別スペック表をよく読むと、CAT7のコネクタは「GG-45 または TERA」と書いています。今回の記事に登場したエレコムのCAT7ケーブル・・・コネクタは「RJ-45(普通のコネクタ)」です。
つまり、エレコムやバッファローが売っているCAT7ケーブルはそもそも規格に適合した製品ではなく、メーカー側が勝手に作った独自規格です(メーカーは「CAT7に準拠」などと紛らわしい表現を使います)。
CAT8の方は規格としては「CAT8.1(TIA 568-C.2)」です。とはいえ、RJ-45コネクタで40 Gbpsに対応した市販のルーターやハブが存在しないので、一般家庭でCAT8.1ケーブルを使うメリットはありません。
対応している長さは30メートル程度で、想定用途は一般家庭やオフィスではなく、データセンター向けです。対応する機材がロクに市販されていないのに、LANケーブルだけは売っている状況。何かがおかしいです。
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