強誘電デバイス開発に新たな手法
京都大学の研究グループは、ファインセラミックスセンター(JFCC)や名古屋大学と共同で、三次元物質の「二酸化ハフニウムジルコニウム(HZO)」から、厚さが1nmの「二次元強誘電体」を作製することに成功した。
さまざまな三次元物質に適用可能なメンブレン結晶作製技術
京都大学の研究グループは2024年6月、ファインセラミックスセンター(JFCC)や名古屋大学と共同で、三次元物質の「二酸化ハフニウムジルコニウム(Hf0.5Zr0.5O2:HZO)」から、厚さが1nmの「二次元強誘電体」を作製することに成功したと発表した。
研究グループはこれまで、ペロブスカイト型マンガン酸化物「La0.7Sr0.3MnO3(LSMO)」上に、HZOをエピタキシャル成長させられることを示してきた。今回の研究では、LSMOが希塩酸水溶液に溶解するのに対し、HZOはほとんど溶解しないことに着目した。
実験では、パルスレーザー堆積法でチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)基板上にHZO/LSMO積層構造を作製した。そして、この基板を希塩酸水溶液中に浸し、HZO膜とSrTiO3基板の間にあるLSMO犠牲層のみを選択的に除去した。その後、HZO層をSrTiO3基板から剥がすことで、1nm厚のHZOメンブレン結晶を得た。
走査透過電子顕微鏡(STEM)を用い、メンブレン結晶を観察した。そして、強誘電相である菱面体晶の結晶構造が維持されていることを確認した。また、室温環境で面直方向に13μC/cm2の自発分極があることも分かった。これらの結果は、HZOから、二次元強誘電体が作製できることを示すものだという。
今回開発したメンブレン結晶の作製技術は、HZOだけでなくさまざまな三次元物質にも適用可能だという。しかも、作製した二次元強誘電体は、磁性体や超伝導体といった機能性物質上に転写することが可能であり、強誘電体と機能性材料とを融合させた強誘電デバイスの開発につながるとみられる。
今回の研究は、京都大学化学研究所の菅大介准教授、Yufan Shen博士課程学生、治田充貴准教授、島川祐一教授および、ファインセラミックスセンター(JFCC)の大江耕介客員研究員、小林俊介主任研究員、名古屋大学大学院工学研究科のXueyou Yuan特任助教、山田智明教授らが共同で行った。
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