光渦の回転方向でねじれを制御
大阪公立大学と千葉大学の共同研究グループは、「光渦」と呼ばれる特殊なレーザー光を照射し、ねじれた構造をもつ直径数マイクロメートルの単結晶を、狙った場所に精度よく印刷することに成功した。単結晶のねじれ方向は、光渦の回転方向で制御できるという。
直径数マイクロメートルのフェライト単結晶、狙った場所に高精度で形成
大阪公立大学大学院理学研究科の柚山健一講師と千葉大学大学院工学研究院の尾松孝茂教授らによる共同研究グループは2024年7月、「光渦」と呼ばれる特殊なレーザー光を照射し、ねじれた構造をもつ直径数マイクロメートルの単結晶を、狙った場所に精度よく印刷することに成功したと発表した。単結晶のねじれ方向は、光渦の回転方向で制御できるという。
研究グループは、円環型の強度分布をもつ光渦を照射して、パターニングしたい物質(ドナー物質)を転写する新しい印刷技術「光渦レーザー誘起前方転写法(OV-LIFT)」の開発に取り組んでいる。
今回は、ドナー物質として粒径100~300nmのフェライトナノ粒子が分散した溶液を用い、OV-LIFTで印刷した時に、フェライトナノ粒子がどのように印刷されるかを調べた。この結果、印刷されたコアは1つの大きな粒子として形成されることを確認した。電子線を照射したところ、結晶格子には特徴的な回析パターンが観測された。これにより、コアはフェライト単結晶であることが明らかになった。
しかも、印刷された直径数マイクロメートルのコアは、ねじれた構造であることが分かった。光渦のらせん波面の回転方向を逆にすると、コアのねじれ方向が反転することから、コアのねじれ方向を制御することも可能である。
研究グループは、光渦でフェライトの結晶化が起こるメカニズムの解明に向けて、ハイスピードカメラを用い、毎秒106画像の速度で液滴の吐出過程を観察した。この結果、バブルの膨張と収縮に伴い、最大サブMPaという内向きの圧力が加わることが分かった。温度が瞬間的に1000℃以上に達することも確認した。これらの条件によって、フェライトナノ粒子が圧縮され、単結晶になると推測した。また、単結晶化の過程で光渦特有のねじり力が働き、ねじれた単結晶が印刷されることも分かった。
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