2022年5月7日土曜日

炭素でO157を無毒化? 特効薬開発にも期待 群馬大研究Gが発表

 


52

写真腸管出血性大腸菌「O157」の電子顕微鏡写真=国立感染症研究所提供
腸管出血性大腸菌「O157」の電子顕微鏡写真=国立感染症研究所提供

 重度の食中毒を引き起こす腸管出血性大腸菌O(オー)157を、炭素を用いることで無毒化することに成功したと、群馬大学が6日発表した。大学院医学系研究科の平川秀忠准教授らの研究グループによる成果で、「根本的な治療方法が確立されていないO157への有効な薬などの開発が期待できる」という。


 O157に感染すると「ベロ毒素」などの病原性たんぱく質が分泌され、食中毒を起こす。


 群大によると、国内で初めて感染が確認された1990年以降、特効薬などは現在でも存在せず、平川准教授は「重症化しないよう祈るしかなかった」。感染者の5%、幼児や高齢者は10%が重症化し、亡くなったり後遺症が残ったりすることがあるとされる。




 平川准教授らは2017年ごろ、化学メーカーの「クレハ」(東京)から「医療用活性炭を細菌に使えないか」と相談を受け、研究を始めた。消臭効果で知られる炭には、目に見えない分子などを表面の穴で吸着する働きがあり、平川准教授は身近な細菌のO157を無毒化できないかと考えた。


 研究を進める中で、活性炭よりも大きい平均直径150ナノメートルのマクロ孔を持つ「多孔質炭素」が、O157が生み出す病原性たんぱく質の大きさにあっていることが判明。この炭素をO157の培養液に添加すると、病原性たんぱく質を強く吸着し、無毒化することが確認できた。


 O157の代替菌に感染させたマウスを使った実験でも、多孔質炭素を経口投与したグループには治療効果がみられ、副作用などもみられなかったという。

0 コメント:

コメントを投稿