https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC064R80W3A201C2000000/
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清水建設は3Dプリンターを使い、ビルの柱やはりを建設現場で製造する技術を開発した。従来手法に比べて作業時間を7分の1に短縮する。大林組は高所での耐火被覆の作業の一部をロボットに置き換える。時間外労働の上限規制が適用される建設業界の「2024年問題」に備えて省力化を急ぐ。
清水建設が開発した独自方式はまず鉄筋を格子状に組む。その外側から3Dプリンターでモルタル材料を吹き付けていく。モルタル材料が固まる速度や鉄筋の形状に合わせてロボットアームがスピードを自動調節し、隙間のない柱を製造する。
一般的にビルの柱やはりは、鉄筋の周りに型枠を組み立て、モルタルやコンクリートを流し込んで作る。型枠の組み立てや解体に人手がかかり、1週間程度の作業期間が必要だ。清水建設の方式は1日で完成する。
型枠を廃棄する必要がなくなるため、環境にも配慮できる。柱やはりなどの構造部材の試作品では、従来手法で作った製品と同等以上の強度を確認した。2024年度中に国内の建築現場に導入する予定だ。
3Dプリンター製の柱やはりは既存のコンクリートとは材料や製造方法が異なるため、建築現場で使うには個別に国の認定を得る必要がある。国土交通省は3Dプリンターの普及に向けて法制度を見直すための委員会を立ち上げており、23年度中に見直しの方向性を決める。
高齢化と人口減に伴い、熟練の建設技能者の不足は深刻さを増している。総務省によると、建設業で型枠工事や吹き付け工事などに従事する建設技能者は22年に305万人と過去10年で9%減少した。
24年4月には現場管理にも時間の制約が生じる。19年施行の改正労働基準法が猶予されてきた建設業にも適用され、時間外労働の上限が年720時間になる。新築やインフラ更新、災害対応といった建設需要が高まるなか、労働生産性の向上は喫緊の課題だ。
大林組は耐火被覆材の人工繊維「ロックウール」をビルのはりに吹き付けるロボットを開発した。上下左右に移動する走行装置にロボットアームを搭載し、はりの図面データを基にロックウールを均一に吹き付ける。
一般的にロックウールの吹き付け作業は防じんマスクを着用し、高所作業車に乗って進める。高層ビルなど高い耐火性能が求められる建物は、低層の建物よりも厚く吹き付ける必要がある。フロア数の多さもあって作業量がかさみやすかった。
ロボットを東京都内の建設現場に導入したところ、これまでの手法で5人必要だった作業が3人で済み、施工時間は変わらなかったという。24年度にはロボットにはりの位置や形状を計測する機能も追加する。機械の位置合わせの手間をなくす狙いだ。
建設業界では労務費が上昇している。東京都内の型枠工事の場合、国土交通省による公共工事の設計労務単価は23年3月に2万7500円と過去10年で36%上昇した。
ロボットの導入は機器類のコストがかかる。だが、各社は工期短縮や効率化で採算が取れると見込む。調査会社モードーインテリジェンスによると、世界の建設ロボットの市場規模は29年までに7億8748万ドル(約1100億円)と24年の2倍に拡大する見通しだ。
企業間の技術協力も活発になってきた。21年には施工ロボットや遠隔操縦技術などの共有を掲げるコンソーシアム(企業連合)が発足した。建設各社やスタートアップなど200社超が参加し、アシストスーツや資材搬送ロボットなどの実用化に取り組んでいる。
(橋本剛志)
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