2022年(令和4年)7月16日、慶應義塾大学看護医療学部の北西側にできた新しい公園『遠藤笹窪谷公園(えんどうささくぼやとこうえん)生物多様性サテライトセンター』(以下、遠藤笹窪谷公園)。みなさんはもう行かれましたか?
いわゆる“一般的な公園”とは少し異なる同公園。今回は、公園を管理する「横浜植木 株式会社」の樹木医・田村さん(『遠藤笹窪谷公園』所長)に園内を案内していただきました(かなりゆっくり歩いて1周約15分~20分)。
『遠藤笹窪谷公園』は約2.5ヘクタールの自然環境を有する藤沢市三大谷戸(やと)のひとつ。芝生広場・小川・菖蒲畑などの多様な環境に、「トンボ」「ドジョウ」といった多くの生き物が生息しています。※谷戸(もしくは漢字一文字で谷(やと))とは、丘陵地の浸食により形成された谷間状の地形や湿地のこと。
まず、敷地内にある「生物多様性サテライトセンター」2階の展望デッキから谷景観を一望しました。
この日はあいにくの曇り空でしたが、眼下に広がる谷景観はとてもダイナミック。思った以上に谷の地形をはっきりと認識することができます。
「公園ができてから約2年が経ち、工事の際にこの地から出ていってしまった生き物たちが少しずつ戻ってきました。最近では『カヤネズミ』の姿が確認されましたよ」と話す田村さん。内外の専門家と相談しながら、日々手探りで保全活動にあたっていると言います。
平日は、犬の散歩をする人や、平坦な歩道を利用しリハビリを兼ねた散策を楽しむ人(段差が少ないので車いすでも巡れます)、自然観察を楽しむ子どもたちが訪れているとのこと。
「生物多様性サテライトセンター」から時計回りに歩道を進むと、菖蒲畑・カキツバタ田に続いて水田が見えてきます。散策中、足元の“少し伸びた草”が気になった筆者。これは一体…
「利用者さんから1番多くいただくのが『どうして草を刈らないの?』という質問です。普通の公園なら草は刈ってしまいますが、当公園を管理する上でもっとも気を遣うのが『草むらの維持』です」と田村さん。
続けて「草むらはチョウやバッタが育つ環境で、肉食の生き物から逃げたり、巣作りをしたりする小鳥や小動物たちの隠れ家でもあるからです。園内の橋からセンター側は一般的な芝生の公園スタイルですが、橋から向こうは『生き物ファースト』エリア。自然を優先して、区画を決めて草を残したり、刈高を変えたりしながらの手入れとなっています」と説明します。自然に対する思いやりにあふれた樹木医・田村さんの言葉がとても心に響きました。
その時「あ!見て!あの鳥!」と田村さんが指さす方を見ると、そこには…
「飛ぶ宝石」と例えられる藤沢市の鳥「カワセミ」が!
ほかにも大磯町の海岸に集団飛来することで知られる「アオバト」がまれに飛来したり、「フクロウ」も住み着いているそうですよ。
空や陸の生き物だけでなく、水辺に住む生き物も豊か。公園内には小出川の源流となる小川が流れ、雨水貯留機能を兼ね備えた池もあるため「アメンボ」「ドジョウ」「エビ」などが生息しています。街中では見られない希少な生き物たちに出会えますが…
ここは「生物多様性の保全」に取り組む公園。観察をしたら、元の場所にかえしてあげるのがルールです。
この日、辻堂の幼稚園から遊びに来ていた子どもたちも、観察のあとは生き物を優しく放ってあげていました(偉い!)。引率の先生は「ここに遊びに来るようになり、子どもたちは『自然と触れ合う中でもっとも大切なこと』を吸収しているように感じます」と誇らしげでした。
園内散策の最後に、「生物多様性サテライトセンター」1階の展示スペースにも立ち寄りました。
藤沢市から貸与を受けた展示物のほか、季節ごとに入れ替える写真や資料でいっぱいの展示スペース。夏休みの自由研究にも役立つ情報が豊富です。
子どもたちに人気の遊具が設置された公園ではないけれど、いつもは気づかない小さな発見にあふれた『遠藤笹窪谷公園』。駐車場・駐輪場・身障者用トイレ・ベンチなどは整っており、公園内での飲食や犬の散歩も可能です(マナーの徹底にご協力を)。
また7月~8月には「夜の生き物観察会」「昆虫観察会」などのイベントも予定されています。里山の豊かな自然や谷景観は想像以上に見ごたえたっぷりですので、ぜひ一度足を運んでみてくださいね!※イベントの詳細は『遠藤笹窪谷公園』の公式サイトをご確認ください。
基本情報
公園名:遠藤笹窪谷公園(えんどうささくぼやとこうえん)生物多様性サテライトセンター
住所:藤沢市遠藤4840
アクセス:相鉄線・横浜市営地下鉄ブルーライン・小田急江ノ島線「湘南台駅」より「慶応大学行き」バス停「慶応大学」下車慶応大学ロータリーより徒歩約8分
駐車場:有り(普通12台、身障者用4台)
公式 ホームページ(外部リンク)
公式Instagram(外部リンク)
※詳細は『遠藤笹窪谷公園』の公式サイトをご確認ください。
取材・校正協力 遠藤笹窪谷公園 田村様
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