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27%。これは、北海道にある水道の浄水施設の耐震化率です。
去年の元日に発生した能登半島地震では各地で断水が相次いだことから、国は全国で水道施設の耐震化率の緊急調査を行いました。
その結果、道内では、浄水施設のほかにも多くの項目で、耐震化率が全国平均を下回っていることが明らかになりました。
私たちの生活に欠かせない水道を地震からどう守るのか。
道内の水道の耐震化をめぐる課題を取材しました。
(札幌放送局記者 下京翔一朗)
耐震化進める札幌市 雪国ならではの課題も

札幌市で最大の浄水場、白川浄水場です。
市内全体の給水量の8割をまかなっています。
運用開始から50年以上が経過し、水のろ過や消毒を行う施設は老朽化していて、国が求める耐震性能を満たしていません。
耐震化工事を行うには、施設の運用を一時的に止める必要があります。
その間も給水量を確保するため、市は敷地内に新たな施設の建設を進めています。

しかし、雪国特有の事情で事業費が割高になるといいます。
その大きな要因が、施設全体を雪から守るために設置される、分厚いコンクリートの屋根や壁です。

札幌市水道局 長平武信 計画課長
「施設を屋根や壁で覆わないと、雪が降ったときにすべて埋まってしまいます。人が歩いて点検することにも支障が出てしまいますし、水が凍ってしまうおそれもあります」

市によりますと、施設建設にかかる費用は、温暖な地域と比べて1.5倍程度になるといいます。
さらに、費用の問題は水道管の交換にも。
市は現在、老朽化した水道管を、順次、耐震性の高いものへ交換しています。
しかし、浅い場所では凍結のおそれがあるため、温暖な地域の2倍程度の深さに埋めなければならず、工事費用もその分、割高になるといいます。

札幌市水道局 長平武信 計画課長
「やはり雪と寒さが、どうしても北海道特有の水道の耐震化における壁となります。しっかりと財源の確保をしていかないと、耐震化を進めるのはなかなか難しいと思っています」
小規模自治体の課題
人口の少ない自治体の中には、別の課題を抱えているところもあります。
約2400人が暮らす空知の上砂川町です。

町内の水道管の総延長は約60キロで、住民1人あたりの長さは全国平均の4倍、札幌市の8倍を超えます。

都市部に比べて少ない料金収入で、日常的な水道施設のメンテナンスを行わなければならず、水道事業単独では赤字が続いています。
このため、耐震化を進めようにも、十分な予算を確保できないといいます。
さらに、担当職員の少なさも課題です。
水道事業専門の職員は1人だけで、ほかの部署を兼任する職員を合わせても、わずか3人です。

国はことし(2025年)1月末までに、水道の耐震化計画の提出を求めていますが、日常業務の対応に追われ、私たちが取材した去年12月の時点では、計画の策定はなかなか進んでいないということでした。
奥山光一町長は、国などに対し、耐震化の経費に加えて、人材面でも支援が必要だと訴えています。

上砂川町 奥山光一 町長
「上砂川町に限らず、水道関係では、おそらく技術者がどこの町もかなりいないと思います。国あたりがアドバイザー的な人材、もしくは技術者の派遣をやってもらえればと思います」
専門家“耐震化コストに住民も理解を”
水道事業に詳しい北海学園大学工学部の山田俊郎教授は、水道施設そのものの耐震化は、予算や人手の点で限界があると指摘しています。

その上で、▼耐震化に向けたノウハウを自治体の間で共有する場を設けることや、▼災害で断水した際の復旧計画を事前に定めておくことなど、“ソフト面”での対策が必要だと話します。
例えば、札幌市では、水道管の敷設場所や種類、材質などの情報をデータ化して、地図上に表示できる仕組みを取り入れています。
これによって、万が一、災害で大規模な断水が発生しても、ほかの自治体から応援に駆けつける職員などと必要な情報を共有し、迅速に復旧工事を行うというのがねらいです。

山田教授は、こうした対策に加えて、水道を利用する住民の側も、将来的な水道料金の値上げなど、耐震化にかかるコストについて理解することが必要だと考えています。
北海学園大学工学部 山田俊郎 教授
「現在の水道事業は24時間、必要な量の安全な水を配っている。このようなしっかりとした仕組みが、私の感覚でいうと、非常に安い料金で維持運営されている。将来的にリスクに備えるということであれば、必然的に費用がかかる。ユーザーである住民も含めて、一緒に費用負担のあり方を考えるということが、今、求められているのではないか」
能登半島地震を教訓に必要な備えの見直しを
能登半島地震から1年。
この間、取材を進める中で水道の耐震化以外にも、真冬の寒さが厳しい時期の避難生活など、道内にも共通する多くの課題が浮かび上がりました。
私たち一人ひとりが、日頃から必要な備えについて考え、見直しを続けていくことが大切だと思います。
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