2015年6月3日水曜日

中国に入れ込んだ代償…現地子会社の不正見抜けず、名門商社が100年の歴史 に幕


経営破綻し陳謝する江守グループホールディングス社長の江守清隆氏=福井商工会議所1/2枚

 東証1部上場だった化学薬品商社「江守グループホールディングス」(福井市)が4月末、民事再生法適用の申請を発表し、破綻した。同社は昨年3月期決算までは好業績を続けていたが、その後、中国の取引先から代金が回収できないなど、傾注していた中国事業での失敗が表面化。債務超過に陥り、明治の創業以来109年続いた創業家の歴史に幕を下ろした。福井の名門企業である同社の倒産劇は改めてチャイナリスクの大きさをクローズアップさせた。

落胆の社長

 「じくじたるところは109年に及ぶ歴史に幕を下ろすことで、強く責任を感じている」

 福井市内で4月30日に行った記者会見で、社長の江守清隆氏(54)はこう悔やんだ。負債総額は4月末時点で約711億円。帝国データバンクによると、2000年以降に経営破綻した福井県に本社を置く企業の中で最大規模だ。

 江守グループホールディングスは5月29日付で、中核企業の江守商事を含む主要8社の全株式をスポンサー企業などが出資する特定目的会社に譲渡。創業家の江守氏は江守商事の社長を退任した。

中国に傾注

 同社は明治39年に江守薬店として創業。昭和33年に江守商店となり、45年に江守商事に改称。染料、工業薬品、化学薬品などで業容を拡大し、平成18年に東証1部に上場。26年4月に持ち株会社に移行した。

 一方、6年の上海事務所設置のころから中国への進出を強め、化学品や電子部品などの販売で業績を伸ばした。26年3月期決算の連結最終利益は4期連続で過去最高を更新し、売上高は2千億円を突破した。

 ところが好調な業績とは裏腹に、中国の大口取引先からの代金回収が滞ったほか、中国子会社の不正取引などによる特別損失計上で、26年12月末時点で234億円の債務超過となっていた。

 同社の売上高のうち中国市場は7割を占め、過大な中国依存度が屋台骨に大きな衝撃を与える結果につながった。

チャイナリスク

 複数の民間信用調査会社の関係者は「中国での取引でだまされたという印象もあるが、放漫経営の側面も否定できない」と厳しい見方を示す。

 ビジネスでの現金の流れを示す営業キャッシュフローは26年3月期まで5期連続でマイナス。一方、金融機関からの借り入れなどを反映する財務キャッシュフローは膨らんでおり、ツケを回収できないまま、借り入れでまかなっていた財務状況は明白だった。

中国での不正を見抜けなかった

 中国子会社の不正を見抜けなかったことに対する風当たりも強い。江守は3月、中国子会社の経営トップだった元総経理が、親族が経営する会社と取引を行っていたと発表。元総経理が内部規則に違反し、江守の承諾を得ずに親族の会社と取引を行い、最終的な販売先が仕入れ先と同一の「売り戻し取引」が見つかったという。本来は手数料収入だけとするはずの利益を商品売買の売り上げがあったように計上していた。

 同社は8社の事業と社員の雇用は維持するとしているが、経営は創業家の手を離れた。江守氏は「苦渋の決断だった」と落胆を隠せない。中国傾注の代償はあまりにも大きかった。

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