がんと重症感染症治療のためのウイルス薬を研究開発するオンコリスバイオファーマ。昨年12月に上場後注目を集めている。同社がターゲットとするのは、患者数が少ないため大手製薬会社が取り組みにくいが需要は確実にある、いわゆるオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)。それも、肝臓がんや食道がんといった医療現場のニーズの高い領域を狙っている。
現時点での主要なパイプラインは、HIV感染症治療薬と腫瘍を溶解するウイルス治療薬。臨床開発に特化するため、前臨床・臨床試験の開発企画に集中し、研究・探索のための研究所などの設備は持たない。創薬には探索から前臨床、3段階の臨床試験、承認申請、販売と、5つの段階があるが、バイオ創薬ベンチャーの多くは、早い段階で大手製薬会社に開発技術を導出(ライセンスアウト)し、開発協力金(マイルストーン収入)やロイヤリティ収入を得る。その資金を研究開発に注入することで開発を加速させる。
オンコリスでも主要パイプラインのほかに、がんや炎症性疾患の体外検査薬の研究も進めている。浦田泰生社長に事業の現状と展望を聞いた。
ウイルスを使って新薬開発
――オンコリスバイオファーマとは、変わった社名ですね。
「オンコリス」は、オンコロジー(腫瘍)とリシス(溶かす)を組み合わせた医学用語です。日本人には「リシス」は発音しにくいため、縮めて名付けました。
創薬というと化合物を想像されることが多い。確かに大手製薬メーカーをはじめとして新薬のほとんどは化合物です。一方で、古くは豚の膵臓からインスリンを作り、タンパクの遺伝子操作によって抗体をつくるなど、「生もの」を薬にすることは行われてきました。これがバイオ医薬品です。米国ではバイオ創薬ベンチャーは1980年代からありましたが、日本でもこの10年、米国より20年遅れでバイオベンチャーが増えています。
――オンコリスの特徴はウイルスを使う、という点ですね。
「がん細胞だけで増えるウイルスの開発」と「ウイルスの増殖を止めることの開発」をコンセプトに事業展開を行っているベンチャー企業は、日本ではオンコリスだけです。
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