労働者派遣法の改正案をめぐる国会の議論が紛糾している。先週開かれた衆議院の厚生労働委員会は、改正案に反対する民主党と共産党が欠席。採決は先送りされたものの、早ければ今週末の6月19日までに与党の「強行」で、衆院通過となる可能性が指摘されている。
今回の改正案の目玉は、派遣期間の制限見直し。現行はソフトウエア開発や秘書、財務処理、書籍等の制作・編集などの「専門26業務」の派遣労働者を除いて最長3年と定められてきたものの、この期間上限が事実上撤廃。一方、これまで期間の制限がなかった専門26業務は、最長3年と定められる。これまでの違法派遣(恒常的派遣)が合法化されることになり、2012年の派遣法改正で導入され、今年10月に施行される予定となっている違法派遣の場合に派遣先への直接雇用を義務づける「直接雇用申し込みみなし制度」が、ほとんど機能しなくなる事態が招来する。
「派遣労働者の一層の雇用の安定、保護等を図るため、全ての労働者派遣事業を許可制とするとともに、派遣労働者の正社員化を含むキャリアアップ、雇用継続を推進し、派遣先の事業所等ごとの派遣期間制限を設ける等の措置を講ずるため」。これが今回の改正案を進める政府側の狙いだ。
企業がその気になれば…
一方、改正案については、野党や労働組合、弁護士会をはじめとする法律家団体などの多数が反対の声を上げている。その中身を具体的に検討すると、当事者である派遣労働者にとっては特段のメリットはないどころか、不利益を強いられかねない。というのも、企業がその気になれば、3年ごとに人さえ入れ替えて派遣労働者を無期限に使い続けられる、つまり、派遣を事実上の常用雇用にできる制度設計になっており、派遣労働者が生涯その地位に留めおかれることにつながるからだ。
専門26業務についても、最長3年で雇用契約を打ち切られる「雇い止め」が常態化して、転職を繰り返さなければならなくなる。一部報道によれば、改正派遣法がまだ成立していないにもかかわらず、すでに専門26業務の派遣労働者で雇い止めを通告されたり、改正案が成立した時点から3年先の雇い止めを告げられたりする事例も出ているようだ。
派遣で働く労働者の中には、「できれば正社員で安定して働きたい」という希望を持っていながら、やむをえず派遣という働き方を選んでいる人も少なくない。にもかかわらず、派遣労働の適用場面を著しく拡大し、構造的に不安定かつ低賃金な派遣労働者が増えるというシナリオが現実味を帯びてくる。
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