猫のフンに含まれる寄生虫が卵巣ガンと戦ううえで意外な役割を果たすようになるかもしれない。
トキソプラズマは猫のフンや土の中、家畜の肉などにいる原虫で、約3分の1の人が、一生のいずれかの時点でトキソプラズマ症に感染していると考えられているが、感染しても健康な人には問題がなく気づくこともないが、妊婦のお腹にいる胎児や免疫系が弱っている人にはリスクとなる。
この度アメリカの研究者が発表した発見によれば、トキソプラズマが分泌する特定のタンパク質は、マウスの免疫系にすでに出来上がった卵巣ガンを攻撃させる効果があるという。この仕組みは、寄生虫が宿主を殺さず自らの生存を確保しなければならないことに起因している。
体に備わる免疫系を利用してガン細胞を取り除くやり方は、ガン治療において有望な戦略の1つである。しかし免疫寛容という現象によって、免疫系は攻撃すべき対象をなかなか見出せないことがある。
アメリカ、ニューハンプシャー州にあるダートマス医科大学院では、トキソプラズマの安全な非再生ワクチン株がマウスのいくつかの種類の固形ガンを治すという先行研究の成果に立脚して研究を進めた。
免疫寛容を破るために必要な寄生虫のタンパク質と免疫経路を特定すると、分泌されたエフェクター・タンパク質(寄生虫が免疫系を調節するために宿主の細胞に注入する分子)の遺伝子を系統立って削除。その改変された寄生虫を侵襲的な卵巣ガンのあるマウスに注入した。
その結果、トキソプラズマが宿主細胞に侵入する前後に分泌する特定のタンパク質が、宿主の効果的な抗腫瘍反応の発達を制御し、卵巣ガンのあるマウスの生存率を引き上げることが示された。
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研究に携わったデビッド・ブジク(David Bzik)博士によれば、トキソプラズマが分泌するエフェクター・タンパク質によって操られる宿主細胞の経路を追跡し、理解することで、感染に対応する免疫を制御している基礎メカニズムを明らかにできるそうだ。さらに高度に侵襲的な固形腫瘍に用いるより効果的な治療法を確立するうえで新しい目標となる哺乳類細胞の関連メカニズムも特定できるという。
免疫寛容を破る力のある感染性生物の利用は斬新なアイデアであり、将来的なガン治療において重要な役割を担うようになるかもしれない。現在、研究者らはリステリア菌を利用して、膵臓腫瘍の免疫寛容を破る方法についても調査している。
via:mirror/ translated & edited by hiroching
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