勉強の為に引用しました。
未来へ~2016(4)2016.1.7 10:00
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文部科学省は昨年12月、人工多能性幹細胞(iPS細胞)による再生医療の実現に向けたロードマップを発表した。血液や軟骨、心筋、腎臓など約20の臓器・組織が臨床段階に入る見通しだ。「夢の医療」の現実味とは…。(前田武)
iPS細胞で大量生産された「輸血用血液」が救う生命
《数十年後のある地方都市。若者の人口減少には歯止めがかからず、献血離れは一層加速している。駅前での献血の呼びかけに足を止める人はいない。だが、病院では毎日のように多くの手術が行われている。街の郊外にあるバイオ工場から定期的に運ばれてくる、iPS細胞を使って大量生産された「輸血用の血液」のおかげだ》
《数日前に心臓手術を受けた高齢の男性も、その恩恵を受けた。男性はベンチでつぶやいた。「昔は輸血用の血液を献血で確保していたが今は必要ない。ありがたい時代になった」》
これはiPS細胞が描き出す未来のひとつ。もちろん実現するまでにはまだ大きな距離があるが、決して絵空事ではない。
5~10年後に血液製剤の販売始まる?
京都大iPS細胞研究所の江藤浩之教授らのグループは、iPS細胞から赤血球や血小板といった血液の成分を作る研究を進めている。
人口減少時代には、輸血用の血液が足りなくなると予想される。江藤教授らの取り組みは、その対策として期待されている。
江藤教授らが設立したベンチャー企業「メガカリオン」などは、iPS細胞で作る血小板について、早ければ平成28年度中にも日本と米国で治験を始め、5~10年後に血液製剤の販売を始めることを目指している。細胞培養装置や冷凍庫などを備えた同社のクリーンルームはほぼ無菌状態に管理され、すでにiPS細胞から安全かつ大量に血小板を作る環境を整えているという。
個別化医療がもたらす絶大な効果
文部科学省が昨年12月に発表したiPS細胞による再生医療の実現に向けたロードマップでは、血液や軟骨、心筋、腎臓など約20の臓器・組織がリストアップされ、続々と臨床段階に入る見通しが示されている。
人間の皮膚や血液から作製でき、体中の臓器や組織に変化する能力を持つiPS細胞によって、かつては考えられなかった医療が現実になりつつある。iPS細胞の生みの親である同研究所長の山中伸弥教授は、「個別化医療」を目標のひとつに挙げている。
患者から作製したiPS細胞を、病気の細胞に変化させて薬剤を投与することによって、実際に患者へ投与する前に薬剤の効き目や副作用を確認することができる。こうした技術により、個別の患者ごとに最も適した治療を選ぶことも可能になる。
高額費用、技術開発の必要性…一般化まではまだ長い道のり
ただ、ハードルは高い。そうした治療を万人が受けられるところまで見通せていないからだ。
多くの患者が恩恵を受けるためには、細胞の大量培養や保存、いかに運ぶかといった技術の開発が急務となる。こうした態勢を整えなければ治療費用が下がることもなく、幅広い実用化は難しい。そこに至るまでには、まだ時間がかかる。
臨床にリスクはつきものだが、日本では何事にも100%の安全性を求める傾向が根強い。非現実的な安全信仰が高じると、コストの上昇や研究の停滞を招きかねないという懸念もある。
一日千秋の思いで待つ患者の存在
課題は多いものの、それでも実用化に向けて踏み出した一歩の意義は大きい。iPS細胞による再生医療が広く実用化されれば救われる患者は少なくないのだ。
世界初となったiPS細胞の臨床研究で網膜の再生医療を手がけた理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーは「なぜ(実用化を)急ぐのか」と問われたとき、こう語ったことがある。
「驚いた。どんな気持ちで患者さんが待っているのか、ご存じないようだったので」
医学の研究には、一日千秋の思いで未来の行方を見守っている患者がいる。
反応
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