安全保障関連法案が2015年9月19日に参院で可決・成立したが、経団連がそれを見越して「防衛産業を国家戦略として推進すべきだ」とする提言をまとめた。安倍政権が進める安全保障政策と歩調を合わせる形で、2015年10月新設の防衛装備庁に戦闘機などの生産拡大も求めている。三菱重工業など日本を代表する防衛産業が、安保法案の成立をビジネスチャンス拡大の好機ととらえていることを如実に示している。
提言は9月15日に決定されたもので、「国会で安全保障関連法案が成立すれば、自衛隊の国際的な役割の拡大が見込まれる」として、「自衛隊の活動を支える防衛産業の役割は一層高まり、その基盤の維持・強化には中長期的な展望が必要だ」と指摘している。
安倍政権下で増加に転じた防衛予算
政府の防衛関係費は小泉政権以降、公共事業関係費と並び、財政再建のため、長期にわたって削減が続いた。ところが第2次安倍政権が編成した2013年度に減少傾向に歯止めがかかり、防衛予算は増加に転じた。それでも、経団連は「防衛生産・技術基盤の維持強化に直接の効果がある航空機、艦船、車両、火器・弾薬などの主要な国産装備品の調達予算は増えていない」と不満を漏らしている。
このため経団連は、新たに発足する防衛装備庁に対して、(1)装備品に関する適正な予算を確保し、人員の充実を図る(2)関係省庁を含めた官民による緊密な連携を基に、装備品や技術の海外移転の仕組みを構築する――などを要求。「陸海空の装備品の調達および国際共同開発・生産や海外移転を効果的に進めるべきだ」と主張している。
具体的には、米国を中心とする9か国が共同開発する最新鋭の戦闘機「F-35」を重視。日本はF-35の製造(自衛隊向け機体の最終組み立て、検査等)に参画しているが、国際共同開発のパートナー国となっていない。このため、「(日本も)他国向けのF-35の製造を目指すべきだ」と主張。「他国向け機体の製造・整備がわが国と世界の安全保障に資するという観点から、F-35生産への参画および維持・整備事業を積極的に推進することが必要だ」という持論を展開している。
「産業界は、わが国や世界の安全保障に資する国際共同開発・生産に積極的に貢献する」という理屈がもとになっているが、その主張は、安保関連法案の成立で行使が可能となる集団的自衛権とも密接にリンクする。
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