2016年1月11日月曜日

ペプチド薬合成に成功 がん縮小に効果 浜医大

(2015/9/2 07:43)
がん遺伝子(LIX1L)とペプチド薬の仕組み

 浜松医科大(浜松市東区半田山)腫瘍病理学講座の中村悟己特任研究員と椙村春彦教授のグループが、多数の種類のがん細胞に存在する遺伝子「LIX1L(リックスワンエル)」が、がん細胞の増減に関与する「がん遺伝子」であることを新たに突き止め、この遺伝子の活性化を抑えるペプチド薬を合成し、腫瘍の縮小に成功した。8月下旬にイギリスの科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」電子版で発表した。
 これまでに発見されたがん遺伝子は約200種類に上るが、複数の種類のがん細胞に存在するがん遺伝子や、多種類の腫瘍で効能のある薬剤の合成に成功した例は少ないという。今後、さまざまな種類のがん細胞に横断的に効果を発揮する治療薬の開発が期待できる。
 研究グループは、急性骨髄性白血病細胞と正常な造血細胞を比較解析し、白血病細胞だけで増加するLIX1Lに着目した。
 約20年間にわたり研究室に蓄積されたがんの症例計千件を解析し、胃や大腸、卵巣、前立腺など11種のがん細胞の3〜6割でLIX1Lが存在することを発見した。LIX1Lを遺伝子操作で無くすとがん細胞が死滅し、増加すると増殖の加速が認められた。
 研究グループはLIX1Lの活性化やがん細胞が増殖する仕組みも解明。LIX1L活性化の鍵を握る配列の一部と同じ配列のペプチド薬「PY136」を合成し、ヒトの胃がん細胞を移植したマウスに投与した結果、3週間後に胃がんが消滅した。投与したPY136が“おとり”の役目を果たし、LIX1Lの活性化が抑制されたとみられるという。
 中村特任研究員は「ペプチドをどうやって細胞に到達させるかなど今後の課題もあるが、臨床応用されれば、治療の選択肢が広がる」と話した。

 ペプチド 複数のアミノ酸が「ペプチド結合」した複合体。タンパク質より小さな構造をしている。がん細胞など特定の細胞や細胞異常に作用する「分子標的治療」が近年、注目を集める中、特定の細胞と結びつくペプチドを薬として活用する創薬研究も盛んになっている。特定の細胞だけに作用するため、副作用の危険性も低くなるとされる。

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