テロメアは細胞分裂の際に、染色体を劣化から保護する機能を持つ構造で、染色体の末端に存在する。
分裂を繰り返すうちに徐々に短くなり、一定の短さに達すると分裂を停止した細胞状態となるため、人体の老化にも大きく影響していると考えられている。
研究者らは、皮膚科医から「長期間ニキビだった患者の皮膚は、非患者の皮膚よりもゆっくりと老化しているように見える」とする指摘があることに注目。
英国在住の18~75歳の双子が登録されている健康記録データベース「TwinsUK」から、片方はニキビ既往歴があるが、もう一方はない組み合わせの1205組を対象に血液を採取し、白血球のテロメアの長さを測定した。
先行研究で、白血球のテロメア長は体内の他のテロメアの長さと関係していることがわかっており、老化の指標となる可能性が示唆されている。
年齢、性別、体重、身長などの条件を調整したうえで、テロメアの長さを比較したところ、思春期にニキビを経験している人は、そうでない人に比べテロメアが長かった。
さらにニキビにテロメア保護のなんらかの要因があるかを確認するため、双子の皮膚を採取し、遺伝子の発現状態を調査したところ、細胞老化の度合を調節する遺伝子経路が、ニキビ既往歴のある人の皮膚でのみ発現していることが確認されたという。
ただし、今回の研究でニキビによって老化が抑制されているとする因果関係が明らかになったわけではなく、研究者のひとりであるシモーヌ・リベロ博士は「今回確認した遺伝子経路が、ニキビ以外でも発現している可能性を精査し、老化の解明を進めていきたい」とコメントしている。
発表は2016年9月27日、皮膚科分野の専門誌「Journal of Investigative Dermatology」に掲載された。
(Aging Style)
参考論文
Acne and telomere length. A new spectrum between senescence and apoptosis pathways.
DOI: 10.1016/j.jid.2016.09.014 PMID: 27693374
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