グロービス経営大学院の「テクノベートMBA」特別講座のうち、この10月期に開講したる「人工知能と経営」の講師、塩野誠氏にクラスの意義と意気込みを聞いた。
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「人工知能」「AI」はこの1~2年の流行り言葉になっているが、実際に、どういった形でビジネスの現場、ビジネスの意思決定に使えるのかを理解できている人は少ない。闇雲に否定的になったり、逆に盲信的になったりするのではなく、冷静に、何に使えるのかをわかってもらいたい。人工知能は、膨大なデータの中から人間には読み取れないような相関性を見つけ出し、パターンを認識する。それを企業経営における意思決定に活かそうとしているわけだが、一つ壁がある。それは、人間は常に「因果関係」を求める生き物だということだ。特に、過去バイアスが非常に強く、「AがBになったのはCだったからだ」などと過去を振り返って因果関係を語る、すなわち物語を創るのである。
それは人間独特の能力なのだが、人間には理解できない因果関係というものもある。人工知能が提示する相関関係の多くは、人間には理解しがたいものだろう。因果関係が理解できないから使わない。ここが大きな壁だ。そして、様々な課題も呼び起こす。
人間には因果関係が理解できないが、毎回よく当たる人工知能の「お告げ」――。それに対して人間がどう対応するのか。人工知能のお告げの通りに行動するだけで人間はモチベーションが保てるのか。理解できないからという理由で、お告げに従いたくないという人も出てくるだろう。今まで無かった現象が既に起きつつある。人工知能は便利であると動じに、人間が行ってきた「経営」というものに対して新しい課題を突きつけているのではないか。そういったことを踏まえて、ビジネスリーダーとしての人工知能への向き合い方を定めてもらいたい。
グローバルな競争を見ると、米国の大学でコンピュータ・サイエンス学部を出た新卒者は、年収が軽く2000万円を超えるような引っ張りだこ状態にある。これまでの日本企業、特に大企業の人事制度や報酬制度では、とてもじゃないが同じようなことはできない。世界水準の人工知能エンジニアやデータサイエンティストをどうやって確保するのか。人工知能を経営に生かす前段で、日本の会社組織の在り方をどう変えるかという課題を突きつけられているという状況だ。
しっかりと認識すべきことは、今進行している技術のパラダイムシフトの速さに対して、人間のマインドセットと人間が構成する会社組織が変わるペースはあまりにも遅いということだ。まずは、技術革新のスピード感に自分をフィットさせることから始める必要がある。
(文・構成: 水野博泰/GLOBIS知見録「読む」編集長)
★塩野誠氏が登壇するテクノベートMBA特別講座「人工知能と経営」のカリキュラム詳細はこちら。
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