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睡眠時無呼吸症候群は、眠っているときに、一時的に呼吸が止まってしまう病気です。呼吸が止まることで、血液中の酸素濃度が下がったり、血圧が急上昇したりするため、高血圧、糖尿病などの生活習慣病や、心筋梗塞、不整脈、脳梗塞など命にかかわる病気を引き起こします。また、安眠できなくなるので、起きている間に眠くなり、生活に悪影響をおよびします。
睡眠時無呼吸症候群の治療法は、様々な方法がありますので、ご紹介します。
目次
生活習慣を見直す
睡眠時無呼吸症候群の原因となる生活習慣を変えることが、まず大切です。様々な原因があるので、できることから取り組みましょう。
ただし、重い睡眠時無呼吸症候群の方には効果が限られたり、効果が出るまで時間がかかったりする方法ですので、重い方は、CPAP療法なども一緒に行うことが必要です。
減量
睡眠時無呼吸症候群の最も多い原因は肥満です。肥満を解消するため、減量が有効です。基本的には、食事量を減らし、運動を増やします。しかし、睡眠時無呼吸症候群の患者様では、日中の眠気があるために運動量できないこともあり、実際には減量することは難しいこともあります。
禁煙
タバコは、喉に炎症をおこし、睡眠中の無呼吸をおこしやすくなります。禁煙することで、睡眠時無呼吸症候群になりにくくなります。
寝る前の飲酒を控える
就寝前に飲酒をすると、喉の筋肉を緩め、気道の閉塞を引き起こしやすくなり、いびきや睡眠時無呼吸を悪化させます。就寝前にはお酒を飲まないようにしましょう。
CPAP療法
CPAP療法とは?
CPAP療法(持続陽圧呼吸療法)とは、で圧力をかけた空気を鼻からに送り込み、気道(空気の通り道)を広げて、睡眠中に呼吸が止まらないようにする治療法です。
CPAPは、CPAP機器本体、空気を送るチューブ、鼻に当てるマスクからなり、睡眠中はこれを装着します。圧力の大きさは、呼吸にあわせて自動的に調整します。
CPAP療法の効果
重症の睡眠時無呼吸症候群の患者さんにおいて、CPAP治療を行った場合と行わなかった場合とを比較した研究によると、CPAP治療を行った患者さんは、病気のない方と変わりありませんでした。一方、CPAP治療をしなかった患者さんは、心筋梗塞や脳梗塞になる確率が約3倍と高かったです。
また、日中の眠気など自覚症状も、CPAP療法を行うことで、改善することが知られています。
当院でCPAP療法を行っている患者さんも、ほとんどの方が、AHI 5未満と正常となり、日中の眠気がほとんどなくなっています。
一部の方は、マスクが合わない、のどや鼻が渇く、空気の圧力を不快に感じるなど、治療がスムーズに始めれれない方もいます。鼻や顔の形にフィットしたマスクに変更する、加温加湿器を使用する、圧力を抑えるなどの対策をしています。
出展 Long-term cardiovascular outcomes in men with obstructive sleep apnoea-hypopnoea with or without treatment with continuous positive airway pressure: an observational study. Lancet 2005.
費用
検査でAHI 20以上の方は、健康保険が利用できます。
健康保険が利用した場合、3割負担の方で、毎月約5000円です(毎月、診察に来ていただく必要があります)。
当院での治療の実際
CPAP療法をはじめる際は、機器の説明と書類の作成を行い、後日、提携会社がご自宅にうかがい、機器を設置し、使い方の説明をします。
その後、毎月1回、定期的に通院していただきます。受診の際は、症状や使用状況の確認や血圧測定などに加え、CPAP療法の解析を行い、データに基づく診療を行います。CPAP療法を行っている病院は多いですが、データに基づく診療を行っているのは3割程度とされており、質の高い診療を目指しています。
当院の装置は、無線によるモニタリングをしているため、受診の際に、CPAP機器本体や記憶カードを持ち込む必要はありません。仕事が早く終わった会社の帰りなどにお立ち寄りいただくことも可能です。
ナステント
ナステントは、やわらかいチューブで、鼻から挿入して使用します。チューブが鼻から喉まで通ることによって、空気の通り道がふさがれるのを防ぎます。それによって、睡眠中に呼吸が止まったり、いびきをかいたりすることを予防する効果があります。
CPAP療法の対象とならない軽い睡眠時無呼吸症候群の方に最適な治療法です。持ち運びもしやすく、使い捨て出来ますので、旅行や出張の際に便利です。
当院でもナステントの販売をしていますので、購入をお考えの方は、ご受診ください。
マウスピース(口腔内装置)
マウスピース(口腔内装置)は、着けて寝ることで、あごを強制的に前へ移動させ、舌が落ち込んで気道を閉塞するのを防ぎます。
治療効果はCPAP療法の方が優れていますので、CPAP療法の対象とならない、軽症の睡眠時無呼吸症候群の方の治療法です。小さいため、持ち運びができるのも利点です。
マウスピースは、通販で販売されているものは効果が安定せず、個人に合わせて歯科で作成する必要があります。その際、検査で睡眠時無呼吸症候群と診断された方は、健康保険の適応となります。
当院では作成できませんので、歯科をご紹介します(健康保険を利用するには、原則として診療情報提供書が必要です)。
手術
扁桃やアデノイドの肥大が原因である場合、手術によって睡眠時無呼吸症候群が改善することがあります。
特に、子どもの睡眠時無呼吸症候群は、これらが原因であることが多く、手術による治療が行われることが多いです。
一方、大人の場合は、効果は限定的で、CPAP療法を上回る効果を期待できる方は少ないです。
代表的な手術には以下のものがあります。当院では手術は行っておりませんので、専門病院をご紹介いたします。
口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)
手術は、扁桃を切除し、その周囲を縫って、喉を広げる手術です。
入院のうえ、全身麻酔をして行う手術ですが、手術の効果は、50%改善率(無呼吸の回数が半分になる)が、約50%です。すなわち、せっかく手術を受けても、無呼吸の回数が、手術前の半分になる方は、1/4で、正常まで改善する方は、もっと少ないです。
一方、睡眠時無呼吸症候群そのものが、全身麻酔の手術の危険を高めるため、術後に呼吸障害をおこすなどの危険も少なくありません。
そのため、肥満がない、扁桃が特に大きい、若年者など、いくつかの条件を満たした方以外には、薦められない手術です。
レーザー口蓋垂軟口蓋形成術(LAUP)
レーザーによって、喉の周りの部分を焼き切り、喉を広げる手術です。
全身麻酔が必要なUPPPに比べると、日帰り手術が可能であり、出血が少ないといった長所があります。
しかし、いびきを減らすことはできますが、睡眠時の無呼吸を改善する効果は、ほとんどないといわれています。逆に、手術をした部分が固くなったり(瘢痕拘縮)、筋肉を傷つけたりし、睡眠時無呼吸が悪化することがあります。
そのため、日本を含め世界でも推奨されていない治療法です。
気軽に受けられる手術なので、一部の耳鼻咽喉科や美容外科で積極的に行っているようですが、その効果や合併症について十分な説明を受けて、納得されてから受けるべきです。
くすりの治療
睡眠時無呼吸症候群を、薬の治療で改善することはできません。
ただし、鼻水や鼻づまりがあると、睡眠時無呼吸症候群は悪化します。アレルギー性鼻炎のある方、特に子どもでは、鼻炎の治療をしっかりと行うことで、睡眠時無呼吸症候群が改善します。
実際、軽症から中等症の睡眠時無呼吸症候群の子どもに、7か月間、くすりの治療を行ったところ、約半分の子どもが、睡眠時無呼吸症候群がなくなりました。アレルギー性鼻炎のある子どもでは、くすりの治療をまず行うことがすすめられます。
出展 Antiflammatory therapy outocomes for mild OSA in children.Chest. 2014.
まとめ
このように、睡眠時無呼吸症候群の治療法は、いくつもあります。睡眠時無呼吸症候群の重さや、普段の生活の様子に合わせて、患者さんにあった治療法を選択することが必要です。
治療法を選ぶ際は、それぞれの治療法について熟知した医師の診察を受けましょう。
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