2021.09.20
眠っても眠っても熟睡感が得られない、イビキがすごいと指摘されたことがある…。 こんな方は「睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome=SAS)」かもしれません。 大事な会議や作業中に眠くなるのは、周りにも悪印象を与えてしまいますし、本人も辛いですよね。
今回の記事では、睡眠時無呼吸症候群の病態や原因、対処法などを紹介します。 自分で出来る対処法を続けることで、夜間の熟睡感が得られるようになったり、イビキの軽減や、日中の眠気も感じにくくなりお仕事のパフォーマンス向上にもつながります。
睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群(SAS)、とは、読んで字のごとく、睡眠中に一時的に「無呼吸」、つまり呼吸が止まってしまう病態のことです。 「~症候群」とついているのは、この病態が出てきた当初、明確な原因が不明だったためと 言われています。(現在はいくつかの原因が分かってきています。) 実際に睡眠中に呼吸が止まるとどうなるのでしょうか。 呼吸が止まっている間は身体に酸素が取り込めなくなるので、脳をはじめさまざまな体内組織がうまく働かなくなります。
そのため、睡眠中でありながら熟睡感が得られず、起床時にも眠気や頭痛、身体の重だるさなどを感じます。原因不明の体調不良が続いている、という方が実はSASだった、ということもあります。 睡眠による休息や体内組織の疲労回復が不十分となるため、日中も眠気、集中力の低下や作業効率の低下などが起こります。言うまでもなく、勤務中や運転中に実際に眠ってしまうなどの可能性もあり、早急な対応が必要です。
無呼吸とはどのような状態であるか
SASの「無呼吸(Apnea)」には、無呼吸と低呼吸が含まれます。 無呼吸とは、 口や鼻の気流が10秒以上停止することを指し、低呼吸は、呼吸が弱く、浅くなる状態で、具体的には換気量の50%以上の低下が10秒以上持続することを言います。
SASの診断に用いられる「無呼吸低呼吸指数(Apnea Hypopnea Index=AHI)」は、無呼吸・低呼吸が1時間当たりに発生する回数を示します。 このAHIが5以上で、かつ日中の眠気等がある場合にSASと診断されます。
睡眠時無呼吸症候群の危険性
先ほど述べた、日中の眠気による居眠り運転の危険性のほか、SASの方は夜間の低酸素状態で心臓に負担がかかるので、高血圧、脳卒中、心筋梗塞などのリスクが約3~4倍高くなると言われています。さらに、AHIが30以上の重症例では心血管系疾患を発症する危険性が約5倍にもなります。 また、SASの方は交通事故の可能性も5~7倍となります。もちろんこれは、「加害者」になってしまう場合も含まれます。
睡眠時無呼吸症候群は完治は難しい
では、SASの治療にはどんなものがあるのでしょうか。 現在のところは、SASには特効薬や根本治療というのはなく、完治は難しいとされています。
睡眠時の無呼吸を対処療法的に軽減させる方法として、眠るときに鼻や口にマスクを装着する経鼻的持続陽圧呼吸療法(Continuous posi-tive airway pressure:CPAP)があります。マスクはエアチューブで人工呼吸器につながれていて、気道がつぶれないよう常に空気を送り込んでくれるので、無呼吸を大幅に減らすことが可能です。
また、下あごを前方に移動させる口腔内装置(マウスピース)を使用して治療することもあります。仰向けに寝ている時、下あごを少し前に(上方に)保つだけで、気道の閉塞を軽減することができます。 また、気道の閉塞がアデノイド肥大・扁桃肥大などが原因と明らかである場合は、それらを外科的に切除する手術療法もあります。
睡眠時無呼吸症候群を自力で改善する方法
もし、SASと診断されたり、SASの症状がみられたとしても、自分で症状を改善させる方法がいくつかあります。SASの症状改善に効果的な運動や生活改善を紹介しますので、治療をはじめる前、もしくは治療と並行して、出来そうなものから取り入れてみて下さい。
舌出し運動
まずは、口の周りの体操を紹介します。 口の周りの筋肉が弱ってくると、睡眠中に口を開けて呼吸するようになります。口の周りの筋肉と舌を支える筋肉はつながっているので、ここの筋肉がだらんとしてくると、睡眠中に舌を支えていられなってしまうのです。そうなると、重力の影響で舌が喉の方に落ち込んできてしまい、気道を塞ぐことになります。
それを防ぐために、口元や舌の筋肉を鍛えておくことはSASの症状軽減にとても大切です。 この、「舌出し体操」は、舌をベェーっと思いっきり前に出す運動です。簡単そうに思いますが、最大限に出した状態で15秒キープするので、最初はけっこう疲れます。しかし、15秒を2回、これを朝と晩の1日2セット行うだけですので、忙しい方にも取り入れやすい方法です。
いびき体操
「舌出し体操」よりもややボリュームがありますが、効果について医学的に立証もされているという体操がこの「いびき体操」です。アメリカの医学雑誌に掲載されたこともあるというこの体操は、8つの動きを行います。
①舌を出す。
②舌を回転させる(逆回りも)。
③舌を上に持ち上げる。
④舌を反り返す。
⑤舌を押し下げる(鏡で見ると、「のどちんこ」が見える位置まで下げる)。
⑥口をすぼめる。
⑦指を入れて口をすぼめる。
⑧口を左右交互に移動させる(口角を片側に引っ張り上げるイメージ)。
①~⑧までの体操3回を1セットとして、それを1日3セット行います。 この体操については、推奨元の医療機関のホームページで、理論的な裏付けとともに体操の分かりやすい動画も見ることが出来ます。 (末尾に記載)
生活習慣の改善
SASは、生活習慣と関係が深い疾患です。生活習慣を改善することでSASの症状を軽減したり、合併症のリスクを減らすことが出来ます。
肥満を改善する
肥満の方は、気道の周りについた脂肪が空気の通り道を圧迫してしまいます。肥満の方は無理のない範囲で減量する、標準体型の方は今後も太らないように気を付けるなどのウェイトコントロールを意識してみて下さい。
アルコールを控える・抑える
アルコールを摂取して眠りにつくと、通常よりも身体の力が抜けます。舌や首の筋肉も弛緩して気道を保ちにくくなるので、アルコールは出来るだけ控えましょう。
禁煙
喫煙者はSASの発症率が高いというデータがあります。また、喫煙そのものが血中酸素濃度を下げやすくしてしまうので、身体の低酸素状態を更に悪化させます。喫煙の習慣を見直してみましょう。
睡眠時の体位に気をつける
仰向けで眠ると、重力で舌が気道に落ち込みやすくなったり気道が狭くなりやすく、SASの方は注意が必要です。また、高すぎる枕なども、気道が折れ曲がり呼吸を妨げます。 横を向いて寝る、枕の高さに気を付ける、可動式のベッドであれば少し頭側を高くしてみるなど工夫してみましょう。
睡眠時無呼吸症候群の危険性を感じたら
今までの文章から、イビキや日中の眠気・集中力の低下などのSAS症状や、肥満・高血圧など思い当たる部分がある方は、SASの可能性があります。インターネットでのセルフチェックなどもありますが、「あれ?」と思ったら医師に相談するのをお勧めします。睡眠時の検査なので入院しなければならないと思っている方も多いと思いますが、自宅で出来る簡易検査もあります。
最近は「SAS外来」といって、SASを専門に検査や治療をしている医療機関も増えてきていますので、お近くの病院やクリニックに「SAS外来」があるかを調べてみると良いかもしれませんね。
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