https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/ne/18/00001/00328/
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5G後進国になる日本、割当条件を満たせなくなる恐れも
日本で5G(第5世代移動通信システム)の商用サービスが始まってから早くも3年が過ぎようとしている。韓国や中国など近隣諸国と比べて日本の5Gの出遅れが指摘される中、特にミリ波帯(国内では28GHz帯)を使った5G展開の難しさが浮かび上がっている。ミリ波帯で処理されるトラフィック量がほぼゼロであり、ほとんど使われていない実態が明らかになったからだ。ミリ波帯の5Gを後回しにし、Sub6帯(2.5G~6GHz帯)以下の周波数帯を使った5G展開に注力すべきだという意見も出ている。
ミリ波帯の端末普及がネックに
「5Gのトラフィック量は、国内すべてのモバイルトラフィックのうちの3〜4%にすぎない。特にミリ波帯で運ばれるトラフィック量は非常に少ない」
2023年2月9日に開催された総務省の有識者会議「5Gビジネスデザインワーキンググループ(WG)」にて、楽天モバイル執行役員技術戦略本部長の内田信行氏は、日本の5Gの実態をこう訴えた(図1)。
国内の5G基地局は、5G専用帯域のSub6帯やミリ波帯のほか、4G帯域を転用した700MHz帯や1.7GHz帯、3.5GHz帯などのローバンド・ミッドバンドにて展開されている。5Gならではの高速・大容量通信を実現するためにはSub6帯やミリ波帯を活用する必要がある。
総務省の調べによると5Gの全国人口カバー率において、4G帯域を転用したローバンドやミッドバンドの寄与が大きく、ミリ波帯における人口カバー率は0%だった(図2)。ミリ波帯で処理されているトラフィック量もほぼゼロとなっている。
なぜミリ波帯の5Gはこれほどまでに使われていないのか。理由は2つある。1つは、ミリ波帯のような高い周波数帯は、遮蔽物によって電波を遮られやすく、エリア展開が難しいという点だ。米国など諸外国でもミリ波帯の活用は、スタジアムや医療関連施設など、スポット的な活用が主なユースケースだ。
もう1つの理由として、日本におけるミリ波帯対応の5Gスマホが、ハイエンド機種など一部に限られる点も挙げられる。特に日本で大きなシェアを持つ米Apple(アップル)の「iPhone」は、国内販売されるモデルはミリ波帯非対応である。
ミリ波帯対応端末が利用者に浸透しなければ、いくらネットワークを展開したところでミリ波帯の活用も増えない。結局、現在の日本では、携帯電話事業者が積極的にミリ波帯を展開するモチベーションを得られないサイクルに陥っている。
KDDI執行役員技術統括本部技術戦略本部長の前田大輔氏は、前述の有識者会議で「まずはミリ波帯対応端末の普及策が必要ではないか。2020年代前半はSub6帯を展開し、ミリ波帯の本格普及は2020年代後半からになるだろう」と指摘する。
ミリ波帯の展開に苦労しているのは、国内の携帯電話事業者ばかりではない。韓国政府は2022年12月、ミリ波帯の展開をほとんど進めていないとして、韓国の大手通信事業者である韓国KTと韓国LG U+(LGユープラス)のミリ波帯免許の取り消しを決めた。
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