太陽光発電の普及に伴って、電力業界で気象衛星を活用する動きが広がっている。天候による出力の変動を高い精度で予測し、それに合わせて火力発電など他の設備の出力を調整、供給を安定させるためだ。関西電力がシステムを開発し来年3月から本格運用を始めるほか、気象情報会社も電力自由化で新規参入する事業者向けの予測サービスを展開している。
関電は子会社の気象工学研究所(大阪市)と予測システム「アポロン」を共同開発した。気象衛星の画像から雲の種類、高度を解析して1キロ四方ごとの日射量をはじき出し、太陽光発電設備の出力を3時間半先まで3分刻みで予測できる。
きめ細かな予測を必要とするのは、電力の供給を随時、需要に一致させる「同時同量」が大原則となっているからだ。需給のずれが大きいと、発送電設備のトラブルが発生し最悪の場合、停電に至る。関電管内では、今年8月4日に一時、太陽光発電が供給全体の7%を占め、天候の影響は大きくなっている。
来年春からの電力小売りの完全自由化を控え「新電力」と呼ばれる新規参入組の間でも、予測システムの需要は高まっている。新電力は、30分単位で需給を一致させることが義務づけられており、今後、供給先が広がるにつれ調整が複雑になるとみられるためだ。
気象情報のベンチャー企業、アリョール(東京)や日本気象協会(同)が、30分ごとの発電量予測を提供するサービス提供に乗り出しており、関電もアポロンの予測情報を新電力にも売り込んでいく予定だ。
今年7月に運用が始まった気象衛星「ひまわり8号」では、データ配信の間隔が2分半と従来の30分から大幅に短縮され、画像はカラーになった。発電予測のさらなる精度向上が期待され、各社ともシステムの対応を進めている。