1月ほど前に32歳の元ヘッジファンド・マネージャー、マーティン・シュクレリ(Martin Shkreli =上の写真)が大部分を出資して設立した製薬ベンチャー、チューリング・ファーマスーティカルズ(Turing Pharmaceuticals)は、はるか以前に開発されたエイズ治療薬をいきなり1錠750ドルに値上げして大炎上した。その経緯は読者の記憶にも新しいだろう。
誕生以来62年の製薬会社、Daraprimはトキソプラズマ症その他に効果のある薬剤を販売していた。シュクレリが5500万ドルを投じてDarapirimを買収するや、問題の薬剤は1錠あたり13.50ドルからいきなり750ドルという法外な価格に値上げされた。
シュクレリはこの暴挙に当初まったく謝罪の態度を見せず、「アンビエン(睡眠薬)を飲んでいるので夜はよく眠れる」とツイートした。この人物のいささか驚くべき行動についてはわれわれもここで報じている。
シュクレリはRetrophinというバイオテック・ベンチャーのCEOとして頭角を表したものの、重大な人格的欠陥によってその地位を追われている。昨日((米国時間10/22)、サンディエゴに本拠を置く上場製薬会社のインプリミス・ファーマスーティカルズ(Imprimis Pharmaceuticals)はダラプリムと同種の薬剤を開発し、1錠ほぼ1ドルで販売する計画を明らかにした。シュクレリにとって自らの行動にふさわしい結果だろう。
「チューリング社が自ら適切と考える価格で薬剤を医療機関に販売する権利は尊重するもの、われわれは同種の薬剤をはるかに効率よく生産することができる。患者、医師、保険会社はこれによって大きな利益を得られるだろう」とImprimisは声明を発表した。
Imprimisの新薬は葉酸系のジェネリック薬品を含んでおり、こちらはFDAの認可を受けているが、新薬全体としてはまだ認可は出されていない。San Diego Union-Tribunの報道eによれば、現在この薬品は医師の処方箋によって特定の患者に投与することが可能だという。
チューリングを設立したシュクレリは今年8月、9000万ドルのシリーズA資金を個人的にほぼ独力で調達したと伝えられる。シュクレリはこの資金調達には「匿名の機関投資家多数が参加している」と声明を出していた。
チューリング社には高優先度の担保付き債務が存在するが、この種のスタートアップとしては異例だ。シュクレリがDaraprimを焦って値上げした理由はこれによって説明できるかもしれない。
あらゆる方面からの非難の集中砲火を浴びてシュクレリはABCニュースのインタビューに対して、「Daraprimの価格を適切な水準に下げる」と約束した。
これは2週間前のことだが、値下げはいまだに実現していない。
今日(米国時間12/23)、チューリング社は「てんかん性脳障害に効果のある薬品」の臨床試験がFDAによって認可されたと発表している。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)
(2015年10月24日「TechCrunch Japan」から転載)
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