患者の足の筋肉の細胞で作った、直径4センチメートルの薄いシートを5枚、直接心臓に張り付ける。それだけで重症心不全の患者の心機能が改善した。9月18日、この細胞シート「ハートシート」が厚生労働省から、製造販売承認を取得した。開発したのは医療機器大手のテルモだ。
ハートシートによる治療の対象となる患者は国内に数万人。治療が行えるのは、心臓移植や人工心臓の手術ができて細胞培養施設のある、数十の病院だ。まずは数施設で年間30~40人の治療を見込む。
「5~10年後に10億~20億円規模の事業に育てたい。大きくはないが、再生医療にとって意味ある突破口だ」
会見でテルモの新宅祐太郎社長は「突破口」という言葉を強調した。再生医療の早期実用化を目指す新しい法律の下で、ハートシートが第1号の承認案件となったからだ。
法改正で早い段階での条件付き販売が可能に
再生医療とは、病気やケガで機能が損なわれた臓器や組織を、細胞を使って治すこと。脊髄損傷や脳梗塞によるマヒ、失明につながる加齢黄斑変性という目の難病など、これまで治療法がなかった病気に効果が期待されている。
日本は細胞のシート化やiPS細胞(人工多能性幹細胞)をはじめとする研究開発で世界をリードしてきた。が、肝心の実用化では、後れを取った。日本で現在販売されているのは、富士フイルム傘下のジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J|TEC)が開発した、人工表皮と人工軟骨の2品目のみ。2012年時点で、米国は9品目、欧州は20品目、韓国は14品目が発売済みだった。
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